日本初のチラシはこんな内容とデザインで、なんと1日で1500万円の売上に貢献

越後屋が発行した日本初のチラシ

良いものさえあれば、お客さんは来てくれる。これは未だにある勘違いの1つだ。もちろん、お客さんがお客さんを呼んで……ということはあるので、あながち間違いとはいえない。ただ、その場合は“良い”ではなく、“想像を遙かに超えて良い”といったレベルの話だろう。

ほとんどの場合、お客さんに買ったもらったり、来てもらったりするためには最低限、お客さんに知ってもらう必要がある。そのための手段として昔からあるのがチラシ。

日本初のチラシはこれ

越後屋が発行した日本初のチラシ
画像:これなあに?

日本初のチラシは、1683年(天保3年)に越後屋(三越の前身)が呉服の宣伝に引き札というものを使ったのが最初とされているようだ。

今日、チラシなんて不要物の代表格のごとく忌み嫌われることも多いもの。ほとんどがすぐに捨てられてしまうもので、反応率は非常に低い。

しかし、日本初のチラシは、大きな効果があって大盛況となったようだ。今のチラシを見慣れている現代人にとっては一見するとチラシに見えないが、当時の人たちは目を通していたのだろう。

どれくらい売れたのか?チラシの効果は?

単にチラシをまいたり、今ならネットで広告を出せばいいのかというと、当然、そんなことはない。大切なのはどこに出すかと、何をどうアピールするかだ。そして、どれだけ効果があったのか数値測定すること。

さすがに広告の効果測定まではやっていなかっただろうから、あのチラシでどのくらいの人が来たのかは正確には分からないだろうが、繁盛はしたようだ。時代を超えた江戸起業家の商売大辞典によると、なんと1日で1500万円、年間で45億円も売ったそうだ。

なぜ、反応の良いチラシだったのか?

なお、繁盛の理由は単にチラシを発行したことが珍しかったからではない。いくら初めてのチラシだからといって、ただの文字の羅列なのだから面白くもなんともないだろう。

ポイントは、チラシに書いてあるオファー(何を提供すると謳っているか)が今までにないもので、とても画期的だったのだ。だから、注目されたし、お客さんがお客さんを呼ぶなどして集客がうまくいったのではと思う。

写真だけを見てもチラシに何が書いてあるか分からないと思うので、何が書かれていたのかを要点を書いておくと、

「現金 安売り 掛け値なし」

と書かれている。

ただ、これは当時の社会的な背景が分からないとよく分からないと思うので、背景を書いておこう。

当時の時代背景と常識とされていたこと

越後屋のチラシで呉服が身近なものに

当時の背景を補足しておくと、呉服店に限らず、家賃や米、酒など様々な商品やサービスの支払いがお盆と暮れにまとめて払うのが当たり前だったのだ。つまり、店としては9月に服を売ったら入金されるのが年末ということになる。1月に売ったなら現金が入ってくるのが、なんとお盆まで待たなくてはならない。

つまり、店側は現金が手に入るまでかなり時間がかかっていたということ。そうなると、その間に連絡がつかなくなってしまうこともあるし、お金がないから払えないなんて言われることだってあり得る。入金までの時間が長ければ長いほど、そうした現金回収のリスクが増える。

そのため、その間の回収リスクや金利、集金の手間などを考慮して、かなり高い価格にして呉服を売っていたのだ。

また、先ほどの時代を超えた江戸起業家の商売大辞典によると、当時の庶民はといえば、木綿や麻でできた太物と呼ばれる着物をしか買えなかった。高級な絹や染め物は、買えたとしても、古着として流通しているものだけだった。

そして、越後屋の扱う服は全てが売れるとは限らないので、当然、売れ残る物もある。

当時の常識を覆すこんなオファーで成功

そこで、越後屋は何をしたのか?

売れ残った呉服の在庫を処分するべく古着として売ることにしたのだ。しかも、当時の常識を覆して現金商売として掛け値をなくし、大幅な値下げをして低価格を実現させた。

その結果、今まで呉服店とは無縁だった庶民も呉服を買えるようになり、新規顧客が増え、先ほどのとおり、1日で1500万円を売る大繁盛につながったというわけだ。

他と違うことをする

今も昔も他と違うことをするというのは、とても大切だなと思わされる。もちろん、他と違うといっても、お客さんのニーズを無視しては本末転倒なので、単に違うだけで何のメリットもない残念な方向に進まないようにする必要がある。

ただ、往々にしてこうした常識を覆すようなことをすると反発にあう。既得権益に浸かっている人たち、変化を嫌う人たち、文句を言うのが趣味なんじゃないかと思えるような人たちなど、いろいろいるからだ。なので、当時の越後屋も何かしら批判されたのでは?と勝手に想像してしまう。

クレームがイヤだとか批判されたくないので、なかなか自分でビジネスを始められないという人は多いように思えるが、そんな場合には、この言葉が最適かと思う。

自分の心が正しいと思うことをしなさい。いずれにしても、あなたは批判されるのだから。

エレノア・ルーズベルト

どうせ何やったって何か言われるのなら、自分が正しいと思うこと、好きなことをやったらいい。あるいは何もしないという選択肢もあるが、おそらく後々になってあのときやっておけば……と後悔することになるだろう。

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