なぜ、能作のKAGOは売れたのか?斬新なアイデアが生まれ、売れた理由

能作 kago

日本で生まれた銀色をした25cm四方の平らな金属の板。この板が、日本では注文が捌ききれないこともあるほど需要があり、海外でも注目されているという。こちらの写真を見たら分かるが、ちょっと編み目が変わっているただの金属板だ。

なぜ、金網のような金属板がよく売れる?

工場や建築現場、あるいは芸術家くらいしか使わなそうなものだし、ちょっと形の変わったただの金網にしか見えない。でも、値段を知ると、もっと驚く。なんと1枚で1万円近くする。写真の金属板の大きさは20cm四方なので、面積としてはA4のコピー用紙よりも小さい。もちろん、実は純銀でできていて・・・なんてこともない。

が、その「金網」は三越などの日本のデパートでも売られており、売れ行きは好調。海外にまで注目されているというのだから驚きだ。

能作 kago
写真:生活道具屋surou のweb shop

多くの人に支持され、売れている理由は、その斬新な使い方にある。なんと、この写真のようにグニャッと曲がっていろんな用途に使えるのだ。
能作kagoの使い方
写真:shokunin.com

これが富山に本社を置く能作という会社がてがけるKAGOというヒット商品だ。使われている金属はスズ。スズはとてもやわらかく、手でグニャッと曲げることができるので、消費者が使い方を自分なりに工夫して様々な用途に使える。能作の社長が話をしているこちらの映像で曲げている様子が分かるので、是非見ていただければと思う。


能作の社長が、KAGOを曲げている様子

こうした成功事例はほとんどの場合、とんとん拍子には行かない。能作の場合も同じでうまくいかなかった時期もあったようだ。

こうして生まれた能作のヒット作、KAGO

何があったかは、ビジネス誌のプレジデント2015.3.16号に詳しい。ここでは、かいつまんでどうやってKAGOが生まれたのかを紹介したい。

能作には、かつて能作の製品を売っている店舗スタッフの言うことを素直に聞いたところ、ヒット作を生み出したという経験があるそうだ。その経験があったため、お客さんと接してものを売っている店舗スタッフに「どんなものが売れるか?」を聞いたそうだ。すると、その答えは「食器」だった。

そこで、能作では食品衛生法を調べてみるとにした。結果、食器に使っていい金属にスズがあることが分かり、スズには、酸化しにくく抗菌性もあるという特性があることも分かったため、スズの食器をつくることを決断。

が、純度の高いスズは曲がりやすく、食器にするのには不適切というのが常識だったそうだ。それを何とか補おうと工夫をしたものの、なかなか良い解決方法が見つからない。

そんなときに、一人のデザイナーから「曲がるんだったら曲げて使えばいいのでは?」という斬新なアイデアが生まれ、冒頭の「金網」KAGOが生まれた。

能作から私たちが学べることは何だろうか?

ビジネススクールにて指導させていただいている経験から、結果が出る人となかなか出ない人の違いが少しだけ分かる。そこで、能作の例を踏まえて、結果が出る人と、そうでない人の対比を見ながら考えてみよう。

学べること1:素直

結果が出る人は、自分の常識にとらわれずに素直に先人の言うことを聞く。結果を出している人の言うとことを素直に聞くし、現場でお客さんのことをよく知っている人の話も耳を傾ける。それがたとえ、自分の常識では考えられないことだとしても。

結果が出にくい人は、自分の常識をもとに、人の話を聞く。今までの自分の常識や前提をもとに、都合の良いアドパイスは聞くけど、自分にとって都合の悪いアドバイスは聞かない。

もちろん、素直に話を聞くことでその人の常識に縛られてしまうこともあるかもしれない。が、常識破りのことをすれば売れるわけではない。商品が売れるかどうかは、お客さんがどう感じるかがポイントなので。

能作の場合、店舗スタッフの意見やデザイナーの意見などを素直に聞いた。

学べること2:壁にぶつかったときの行動

結果が出る人は壁にぶつかっても、簡単には諦めずに考え実行する。やりたいことがあるなら、それを実現する方法を探し続ける。

結果の出ない人は壁にぶつかると、すぐに違う方法を探して簡単にできる方法を探し求める。やりたいことを実現したいのではなく、簡単にできることをやりたがる。

能作の場合、純度100%のスズでやりたいという思いを実現するために、試行錯誤を続けた。それまでの常識では考えられない素材なので、確信もなかったはずだし、ただの思いつきをやらされていると思った人もいるかもしれない。

学べること3:成長しながら結果を出すということ

能作かKAGOを生み出した開発ストーリーを始めとしたこの手の成功ストーリーは、押し並べてとんとん拍子にはうまくいかない。

結果が出る人は、何をやるにしても、最初はなかなかうまくいかないものということを知っている。ただ、試行錯誤しながら自分が成長していって、う最終的にはまくいくようになるという視点を持っている。

結果が出にくい人は、うまくいっている人は、他の人が知らない何かしら魔法のようなものを知っているからと考える。そして、少しずつ成長していくということをせずにいきなり近道を求める。

まとめ

能作のKAGOのヒットから分かるのは、斬新なアイデアは、常識を覆すことで生まれるということ。そして、常識を覆すには、多様な視点が必要だということ。

また、とんとん拍子でうまくいくことはそう多くはない。成功の裏にはそれなりの試行錯誤があり、魔法は存在しないということだ。

そして、最後に能作社長(紛らわしいかもしれないが、能作という会社の社長は能作克治さんという方)の言葉を。CONTRASTというウェブマガジンによる2012年のインタビューにて話していた内容だ。

能作社長は社長にご就任されて何年になりますか?

能作2003年ですから9年ですか。普段ね、僕はだいたい会社に来るのが朝の6時で、帰るのが夜の11時なんですね。

なぜ毎朝6時の出社を続けているんですか?

能作出張以外では誰よりも早く会社に来たいんですよ。6時から9時までの3時間はじっくり仕事ができるから。これが一番うれしい時間帯なんです。9時を過ぎると来客やら電話でバタバタと一日が始まって、逆に夜の8時から10時11時ぐらいまでは落ち着いて仕事ができるからです。

なるほど。密度の濃い3時間が朝夜にあるんですね。

能作よく言うんですけど、僕は仕事が本当に楽しいんです。楽しかったら朝6時に来ませんか?

引用:CONTRAST

自ら進んで楽しいと思えることをやっているからこその結果かなと思える。

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