5分の営業電話から分かった3つのビジネス成功の秘訣
先日、パソコンでメールを読んでいたら、電話が鳴った。0120から始まる番号だった。つまりはフリーダイヤルからの着信である。この電話の相手というか会社といったほうがいいかもしれないが、ビジネスをやるなら、間違いなく押さえておいた方がいい勘所を見事に押さえていた。
営業電話からでも学びはあるなと思えたので、共有したい。
目次
フリーダイヤル営業商法
ところで、初めてフリーダイヤルからの着信があったときのことを振り返ってみると、
「ん?フリーダイヤルから電話……?何だ?」
と思って何の疑いもなく電話に出たことが思い出される。
しかし、それ以来、フリーダイヤルの電話は出るとほぼ営業電話であることが多く、
“フリーダイヤルの着信=営業電話”
という残念な図式ができあがりつつあった。こうした表面上のテクニックは、最初は通用しても、すぐに衰退していくということがよく分かる……。迷惑メールの差出人や件名みたいなもの。
しかし、たまにフリーダイヤルでも取ったほうがいい電話もかかってくるし、ちょうどそのときやっていたことが途切れた感じだったので、電話に出た。
すると、普段使っているクレジットカード会社からの電話だった。どうも話を聞いていると、営業のようでじゅあいいやと思ったのだが、「これなら・・・」 と思って、営業された商品をつい申し込んでしまった……。まったくその気がなかったものなのに。
というのも、電話の相手がこんなことを言ってきてからだ。
電話一本で契約を取る男のオファー
相手が最初にオファーしてきたのは、支払いが自動的にリボ払いになるというオファー。ちなみに、私は未だかつてリボ払いは使ったことがないし、今後も使う気はまったくない(余計な手数料がかかるのを嫌うので)。なのに、私は自動的にリボ払いとなる申し出を飲んだのである。
なぜか?
実は、自動的にリボ払いになるように設定すると、買った商品に対する保険が手厚くなるのだそうだ。しかも、実質的にリボ払いではないような使い方でも。というのも、利用限度額の上限までリボ払いの金額を設定できるからだ。。
ということは、ひと月あたりのカード利用限度額が100万円であれば、リボ払いの金額を100万円に設定することができるということ。それなら
リボ払いとは言うものの、一回払いと何ら変わらないのである。リボ払いの手数料がかからず、保険だけが無料でつくということだ。
なぜ、たった一本の突然の電話で申し込みが取れたのか?
ただ、そうなるとカード会社のメリットは何だろうか?営利企業がメリットもないのに営業してくるはずがない。そこで、裏が知りたくなったので、
「リボ払いの金額を利用限度額にしたらそちらに手数料は入らなくなると思いますが、そうなると何のメリットがあるんですか?」
と聞いてみた。
すると、
「末永く使っていただければいいと考えておりますので」
という答えがすぐに返ってきた。
それなら確かにカード会社にとってそういうメリットはあるな、と思ったので、別に変な意図はないなと思えた。実際のところは知らないが、ここで大切なのはお客さん(この場合は私)が納得するかどうか。そして、当然ながら提供側が不道徳なことはしないこと。
要は私にとってみれば、無料で買い物保険が手厚くなるというメリットしかない、ということになるわけなので、電話で言われたオファーに申し込んだ。
5分の電話で分かるビジネスの3つのポイント
たかだか、5分くらいの電話だったが、ビジネス上、大きく次の3つの重要なポイントが挙げられる。
- 断れないオファー
- 理由が納得できる
- 数字を把握している
断れないオファー
最大のポイントは、断れないオファー(今回のは断れないとまではいかないが、メリットしかないので断る理由がない)を出しているということ。お客さんにとってメリット以外何もないとしたら、申し込まない理由がなくなる。
今回のようにちょっと話を聞かないと(私にとって)魅力が伝わらないオファーではなく、欲を言えば、最初の一言でオファーが理解できるようなシンプルな内容だといい。そして、申し込まなきゃそんじゃない!と思ってもらったら最高だ。
電話の場合、「興味ない」と切られたらそこで終わりなので、その後、いくらすごいオファーが待っていたとしても伝わらない。Webサイトの場合は、最初に表示される画面に、紙の場合はパッと目に入るところに気を引くものがなければ、そこで終了である。Webなら閉じられるし、紙なら捨てられる。
理由が納得できる
いくら強烈なオファーがあったとしても怪しければ、二の足を踏んでしまうもの。
例えば、何の理由もなく商品が80%オフ!となっていたらどうだろうか?食べ物だとしたら「もう悪くなってるんじゃ?」とか「あまりにマズくてあり余ってるんじゃ?」といった疑いが生まれる可能性がある。
疑いが生まれたら、いくら強烈なオファーでも受け入れられない。なので、正当な理由が必要。相手に納得してもらうということだ。
食べ物なら、味は変わらないけど、形が悪くて見た目がダメで市場価値がないから、といった理由なら安いのにも納得がいく。「ワケあり」とか「アウトレット」として売られているのが良い例。人は納得いく理由がないと行動に移さないことがよくある。
数字を把握している
今回の場合、お客さんが自動リボ払いに設定したら私のようなことを考え、実行する人がいたとしても、つまり、たとえ実際にはリボ払いになることはなくても、保険がつくようになっている。これは、カード会社としては余分な保険料を支払うリスクがあり、リボ払いの手数料も得られない可能性がありながらもオファーしているということ。
何も考えずにそんなオファーが出せるわけがないので、カード会社としてはこの2つの収支を、過去のデータから把握できていて、リボ払いの申し込み数を増やせば、保険を手厚くしたとしても利益が増えることを知っているのである。申し込みのときはリボ払いなんてしないよ、と言っていたのにいつの間にかリボになんてこともあり得るわけだし、普通にリボ払いにする人もいる。
ビジネスは先が分からない世界ではあるが、ある種、確率の世界でもあるので、データをしっかりと把握していれば、ある程度の未来予想ができることもある。
フリーミアムのモデルも一緒。TwitterやEvernoteのように今のところ、マネタイズに成功しているとは思えず、見通しも微妙なケースもあるが、通販会社が無料サンプルを配れるのは、データによる裏付けがあるから。資金が潤沢にない、あるいは金銭的なリスクを避けたいのなら、数字による把握は必要不可欠だ。
まとめと後日談
営業電話もチラシも、見方を変えると面白いもの。
<後日談>
ちなみに別のクレジット会社から同様な電話があった。そちらも同じようなオファーだったので申し込んだ。が、その後、しばらくたってクレジットの明細を見てみると、妙な支払いがあった。なんだこれは?と思って見てみたら、なんと知らないうちに規約が変わっていて、リボ払いの最高金額がかなり下がっていたのだ。
規約変更の連絡はあったのかもしれないが、そんなのは知らなかったので驚いた。初めから狙っていたかどうかは知らないが、そう勘ぐってしまうこともあり、印象は悪い。
そもそもリボ払いなのに毎回一括で払うような設定にするのが良くないという考えもあるが、そんなことはクレジット会社側が支払いの上限の決めた時点で、容易に予想できること。