仕掛学実践編、面白いアイデアで効果のあった例

仕掛学実践編、面白いアイデアで効果のあった例

以前、たまたま見つけて読んだ仕掛学の本。その続編に当たる本が出ていた。今回も本屋に行ったらたまたま見つけてつい買ってしまった。

前回の本を読んでのまとめなどはこちら。

“仕掛”でチラシの受取が2.5倍になった事例など11個の“仕掛”アイデア

続編の仕掛学の本である「実践仕掛学」には事例がよりたくさんあった(リンクはAmazonアソシエイトになっています)。

実践仕掛学
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例えば、

  • ティッシュ配りの枚数を3.7倍にした上に人件費削減
  • 年間の万引き被害額を18.4%削減
  • 飲食店のあるメニューの売上が6倍

など、いろんな分野で成果を発揮した事例が掲載されていた。

失敗事例もきっちり公開してくれているのもいい。

「実践」と書かれいてるように、前回よりも実践よりというか著者の松村さんがやってみた事例の紹介が多数載っている。

個人的には「仕掛っていつまで有効?」というのが頭の中にずっとあって、その答えが本には書かれていたので、その点も満足だった。

仕掛学の本が好きな人や、ナッジ、行動経済学などに興味があるならとても面白い本だと思うのでお勧め。

人を不快にさせずに目的を達成させる仕掛けとは?

仕掛けは以前の記事でも書いたとおり、次の3つの要件(FAD要件)を満たすものと本では定義している。

公平性(Fairness):誰も不利益を被らない。
誘引性(Attractiveness):行動が誘われる。
目的の二重性(Duality of Purpose):仕掛ける側と仕掛られる側の目的が異なる。

やり方を考えないと人を不快にしてしまうので、要注意でもある一方、きっちり仕掛をつくれると本当に秀逸なものができあがる。

大学で「仕掛学」として扱っているだけあって、分類なども考えられていてちゃんと体系化されている。詳しく知りたい方は本をどうぞ。

仕掛けの事例

今回の「実践仕掛学」の本には前回よりもたくさんの事例が掲載されている。個人的に面白いなと思ったものを3つピックアップすると冒頭にも書いたこちら。

  1. ティッシュ配りの枚数を3.7倍にした上に人件費削減
  2. 年間の万引き被害額を18.4%削減
  3. 飲食店のあるメニューの売上が6倍

3つめはちょっと特殊事例のようにも思えるが、一応ピックアップ。

仕掛けでティッシュ配りの枚数を3.7倍にした上に人件費削減

仕掛け25(鏡を使ってティッシュ配り)
実践仕掛学の本より(P153)

コロナ禍のまっただ中に人と接触せずにティッシュ配りをするには? ということで考案されたのが鏡を使った配布方法。

シンプルなやり方で、鏡の前にティッシュを置き、「身だしなみを整えるのにご自由にお取りください」と書いたパネルを置いただけ。

本によると、2020年6月に東京は原宿の竹下通り(原宿といったらここといっていい場所の1つ)にて実験した。

ティッシュで身だしなみ? というのもよく分からない文言な気はするが、それでなんと1時間で52名にポケットティッシュが行き渡った。

普通に手で配ると1時間で14名だったとのことなので、3.7倍ということになる。

仕掛け24(マジックハンドでティッシュ配り)
実践仕掛学の本より(P150)

これと同様な仕掛けでもう1つ面白いの事例が載っていた。

それがマジックハンドを使ったティッシュ配り。マスクと手袋をしたうえでマジックハンドでポケットティッシュを配布した。

すると、1時間で69名が受け取ったとのこと。鏡を使った場合よりも多かった。

ずっと効果が持続するのかと言われるとおそらくそうではない気はするが、ちょっとやり方を変えただけでここまで結果が変わるのは面白い。

仕掛けで年間の万引き被害額を18.4%削減

仕掛け28(スーパーの万引き防止)
実践仕掛学の本より(P160)

これは愛知県のスーパーで実験したもの。著者は愛知県警から感謝状をもらったそうだ。

商品の値札のとなりに「万引き防止 実験II」という書かれたカードを貼り、すぐ下の床に、それっぽい記号と「防カメピント調整」と書いておいた。

すると、1年間その施策をした結果、万引き数が18.4%減ったとのこと。

これもちょっとした工夫で結果が変わったわけで、とても興味深い。

犯罪防止にもつながってものすごくいい仕掛け。

仕掛けで飲食店のあるメニューの売上が6倍

ビジネスに応用が利きそうな仕掛けを1つ。
といっても事例自体は特殊な例ではあるので、どう応用するかは考える必要がある。

芸人のたむらけんじさんが経営する焼き肉店で

たむらけんじさんと言えば、サングラスをかけていて、当然その店に行く人の多くはそれを知っているはず。

ということで、本によると不人気だったらしい「特製ちゃ~玉ご飯」というメニューのところに、「このメニュー頼んでくれたらたむけんがかけたサングラス貸し出すで!」と書いたところ、そのメニューの注文が6倍になったとのこと。

ただ、客単価が上がったのかは不明。他のメニューを頼まなくなって、むしろ客単価が減った……なんてこともあり得なくはない(そこまでは書かれていないので不明)。

お客さんにもメリットがある形でうまく頼んでほしいメニューを頼んでもらえたという意味では良さそうだ。

仕掛はいつまで有効? 持続可能な仕掛

この本を読みながら思っていたのは仕掛の有効性の維持。

初めて見たときには面白いからやる、というのはあったとしても段々と飽きてくることもありそうだよな、と思うからだ。

じゃあどのくらい持つのか? というと当然ながらケースバイケースなのでなんとも言えない。

ただ、持続させるポイントは解説されていて本では、仕掛けに飽きる前に習慣化されるようにするのがポイントとある。

習慣化は動機付けと関係があるので、どういった動機付けで仕掛けを生み出すかが重要。

で、動機付けには

  1. 内発的動機付け(感情などの内面から来る動機)
  2. 外発的動機付け(報酬など外部から与えられる動機)

の2つがあり、コツは内発的動機付けとお金ではない外発的動機付け(名誉が与えられるなど)を使うようにする。

どんな仕掛けかによっても持続するかどうかは大きく影響がありそうだ。

例えば、マジックハンドのティッシュ配りは初めは新規性があって面白いけれども、だんだん効果が薄れていきそうなのがなんとなく分かる(実際にはやってみないと分からないと思うが)。

一方で道ばたに小さな鳥居があったらそこにゴミを捨てるだとか犬の散歩で用を足させるとかはまずやらない。

そもそも、鳥居があろうとなかろうと普通は道ばたにゴミを捨てないというのはあるとしても、たいていの日本人ならある程度の抑止効果はありそう。

鳥居ではなく、十字架や地蔵でも同じような効果はありそうな気がする。

ただ、実際には、鳥居の周りがゴミだらけなんてことになっているケースもあるようなので、個人の感想にすぎないのだけれど(ただ、これについては工夫することで回避できた事例がある)。

まとめ

ということで「実践仕掛学」という本を読んでのまとめと感想。

実践仕掛学
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今回の本もさまざまな事例があってとても興味深いものだった。

この記事で触れた仕掛け以外にも、

  • 真実の口を使って手指消毒を促す
  • 幼稚園に信号をつけたら走り回らなくなった(ただ、別な問題が生じてしまった失敗事例)
  • チラシを巻いて置いたら持ち帰ってくれた人が激増

など、45個の例が載っている。

うまく普段の生活や地域社会、あるいはビジネスなどにも応用できたらいいなと思える。

そのために押さえるべきこと、注意点、そして成功事例と失敗事例が本には網羅されているので、気になる人はぜひ手に取ってほしいもの。

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