なぜ、スタートアップのQuipperは収益がガツンと上がったのか?その意外な方法とは?

なぜ、スタートアップのQuipperは収益がガツンと上がったのか?その意外な方法とは?

Quipper(クイッパー)という教育関連のスタートアップがリクルートに買収された。NewsPicksの特集、 受験サプリ、海外進出の切り札は買収。英国発スタートアップの実力で知るまで、知らなかった。Quipper自体も初めて聞いたのだが、なるほどと思える発想で規模を拡大した。

借金や資金調達しないようなスモールビジネスでも、その発想が応用できると思うので、考えてみた。

学校教育関連のビジネスをやろうとしたら何をする?

なぜ、スタートアップのQuipperは収益がガツンと上がったのか?その意外な方法とは?

あなたが、もし学校教育関連のサービスを手がけようと思ったらどんなことをするだろうか?いろいろ考えられると思う。

下手に塾や家庭教師?

例えば、私の知り合いは、学習塾をやっている。家庭教師という道もある。他にも、私は小学生の頃にソロバン塾に行かされたことがあるので、学校の科目にはないが、ソロバンなんかもありだろう。

当時、たまにソロバン塾に行くと、生徒がたくさんいたので流行っていたものと思う。「たまに」というのは、学校から帰ってきてソロバン用具を持って家を出た後、そのまま遊びに行くということを繰り返していたので(笑)(月謝だけ収めてたら、来てないのにもらえないという連絡が家にいったらしく、塾に行ってないことがバレた。怒られたかどうかは覚えていないが、やる気がないのでソロバンは10級で放棄した。)

リクルートは受験サプリでヒット

大手の例だと、リクルートが手がける受験サプリという月額980円でオンラインで受験対策ができるサービスがヒットしている。受験サプリは累計の会員数が138万人を超えているそうだ。

こんな形で、お金を払うのは親ではあるものの、学校教育は子供中心に考えるケースが多いように思える。

Quipperは発想を変えて躍進した

quipper
画像:quipper

Quipperという学校教育関連のサービスも最初はそうだった(正確には、学校教育に限っていたわけではないそうだ。こちらのTech Crunchの記事に少し書いてある)。Quipperがやっているのはスマホやタブレットといったモバイル向けのITを使った学習支援。

日本ではまだ浸透していないが、海外9ヶ国に展開しており、メキシコ、インドネシア、フィリピンなど成長の期待されている国を中心にどんどん広がっている。すでに150万人の子供が使っているらしい。

お客さんを変更

しかし、Quipperが真にお客さんとしているのは、実は子供ではない。

先生を顧客ターゲットにしているのである。先生の宿題や課題作りという手間のかかる仕事を代行してあげるサービスとして打ち出したそうだ。

先生は、問題を作ってそれを印刷してプリントとして配ってなんてことをよくやる。子供にやらせたら採点する必要があるし、記録する必要もあるだろう。非常に手間だ。それを全部やってくれる上に、ITのおかげで子供が楽しく勉強できるサービスがあるなら、先生も使いたくなるだろう。それで、学校で導入するところがどんどん増えていったようだ。

こうしたお客さんを掴めると規模が拡大しやすいし、安定する面もある

先生がQuipperを使って授業をしたら必然的に生徒もその仕組みを使うことになる。つまり、根っこを押さえているようなもの。しかも、生徒は時間とともに進級し、卒業するので長期的なお客さんにはならないが、先生はずっと使う。

お客さんがずっと使ってくれるということは、とても大きなプラスになるのは言うまでもない。具体的には、収益面で2つのプラスがある。1つは、単に既存顧客のリピートから収益が生まれることであり、もう1つはデータが蓄積するこということ。

既存顧客のリピートによる収益増

リピートは非常に大きい。ビジネスや営業をやったことのない人は、「そりゃそうだ」くらいでピンと来ないのだが、新規顧客を獲得するのと既存顧客相手に利益を出すのは、相当の開きがある。会社によっては、営業成績に3倍の差をつけるところもあるそうだ。

理由は、広告費がゼロ円であり、すでに関係ができているので、新規の何倍も商品やサービスが売れやすいから。私は会社員時代、お客さんと一切、会わないエンジニアだったし、営業なんてやったこともなかったので、この辺の感覚は分からなかった。自分でビジネスをやるようになってからは、非常によく分かるが。

サービスのデータが溜まる

もう1つは、データが溜まること。そのデータを元に常に商品やサービスを改善していければ、他に展開して新規顧客を開拓するときに、大きなアドバンテージになる。市場に出してみてフィードバックを得て、それを反映させるということを繰り返した分だけより良い商品やサービスができる。

当たり前と思った人は注意

ところで、こうしてやったことだけ聞くと、そりゃそうだと思う人もいるかもしれない。が、コロンブスの卵のようなもので、当事者はなかなか気付かない視点だろう。現にやっているところはなかったわけなので。仮に構想があったとしても実行しなければ、現実には存在しないので、ないのと一緒。

Quipperから分かる利益や規模を拡大する2つのヒント

ここでのポイントは2つあると思える。1つは利益や規模を拡大するヒントだ。もう1つは、1つめと関連するが、お客さんは別にいるかもしれないということ。

利益や規模を拡大するヒント

消費者に向けてサービスを売るのではなく、業者に向けて売ると規模が格段に大きくなったり、収益が安定化しやすい側面がある。

例えば、こちらのなぜ、客のいない小さな八百屋の経営がうまくいくのか?〜見えない利益〜にも書いたが、八百屋やスポーツ用品店は規模は小さいが、小売りでは儲けていないケースがある。

八百屋が小売りだけしていても、利益はそうは出ないだろう。それでも利益が出ているのは、業務用の野菜を提供しているから。実家に帰ると、寂れたスポーツ用品店がずっと潰れずに残っている。儲かっているのは学校にスポーツ用品や体操着などを提供しているから。一般消費者からは目につきにくい裏方のサービスにもビジネスがあると言える。

視点を変えてみる

なので、一般消費者ばかりに目を向けている人は、業務用に着目すると面白いかもしれない。例えば、飲食店に行くと冷蔵庫が目に入ることがある。すると、こんなペンギンマークが、ほとんどどこに行っても目につく。
ホシザキ電機
画像:ホシザキ電機

業務用の冷蔵庫を扱っている会社なんだなと、思って注意してロゴを見ていたらホシザキ電機というところの商品らしいことが分かった。飲食業の人は知っているかもしれないが、普通は知らないように思える。(ホシザキ電機は東証一部の上場企業で1947年創業だそうだ。2014年の売上高は2000億円以上。※2017年12月9日追記、ホシザキ電機株式会社は2016年7月にホシザキ株式会社に名前が変わった。)

お客さんは他にいるかもしれない

2つめは、1つめと関連するが、お客さんは他にいるかもしれないということ。個人や一般消費者だけを見てしまうことがあるのではなく、事業者を見るというのは視点の変え方の一つ。もちろん、ホシザキ電機のように冷蔵庫をつくって売れということではなくて、想定するお客さんの幅を広げてみてはどうだろうか?ということ。

子供の教育に関わりたいという人は、受験サプリのようにストレートに子供に訴求するのもいいが、Quipperのように先生にアプローチするのもいいだろう。最終的に自分がやりたいことに結びつけられるのなら、手段はなんだっていいはずだ。

想定しているお客さんとは違うお客さんも、あなたの商品やサービスを買ってくれることはないだろうか?もし、手詰まり状態なら顧客層をちょっと考えてみると、ヒントがあるかも。

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