好きなことで起業して権利収入のビジネスを立ち上げた人

好きなことで起業して権利収入のビジネスを立ち上げた人

先日、会った人が面白いビジネスで起業していた。自分の好きなことをやっている方で自己紹介のときに「権利ビジネス」という話をした。権利収入と聞くと「ん……!?」と思うことがあるのだけれど、すぐにその良くない印象は解消された。

音楽が好きな人で音楽をビジネスにしているという話だったからだ。といっても、自分では作詞も作曲もしておらず従業員はいない1人会社。

いろいろと聞いているとなかなか面白い話が聞けた。こんなところにも音楽の産業があるとは……というのもわかった。ということで、それをまとめる。

作詞も作曲もせず音楽をつくり権利収入を獲得

といってもその人は音楽を作ったり演奏したりはしない。趣味でやることはあるかもしれないが、仕事としてはやっていない。でも、権利収入が入る。作曲家や作詞家を発掘して彼らのプロモーションやマネジメントをしているからだ。

前に記事に書いたこちらに少し近いかもしれない。

社員全員プログラミングできないゲーム会社がヒットを生み出した理由

こちらの日経の記事によると、日本に住む台湾の男性が、ゲーム制作会社をつくり、スマホのゲームを作って10万ダウンロードを達成したそうだ。社員は全員、プログラミングができないのに。といっても社員は一人なのだけれど、、、それでも、どうやって作るか不思議に思う人もいるだろう。

MLMとかそういう怪しさ全開のではなく、本の印税や特許などと同じようなよくある権利ビジネスだ。よくあるといっても誰もがすぐにできるようなビジネスではないけれども。

音楽ビジネスの収益構造

ちなみに、本の印税は基本的に本が売れるかどうかでしか収入はないが、売上に対する割合としては音楽よりも収益は大きい。出版社によるものの10%になるところはないものと思う。出版した人から聞くと良くて7%とか8%くらい。

音楽の場合はそれよりも低いらしい。もちろん、割合の話なので絶対額とは売れる数にも依存するわけで、ケースバイケースなのは当然だが。

音楽が売れたり使われたりすると、JASRAC(他の団体もあるがほぼ独占)が一番上にいて、そこから抜かれてマネジメント会社に入り、その後にアーティストに収益が入る仕組み。

JASRAC
 ↓
マネジメント会社
 ↓
アーティスト

という流れになっている。私が話をした方はマネジメント会社の人だ。アーティストの上流にいる。場合によってはアーティストに収益が入る前にもう1段階会社が入ることもあるそうだ。

当然、その分アーティストの取り分が減ってしまうが、そのかわり営業や代金の回収などはやらなくてすむわけでアーティストは曲や詩作りに専念できる。とはいえ、不透明な部分も多そうだし問題もあるとは思うが、収入が減るのが嫌なら自分でやれということになるだろう。

ちょっと脱線するが、だったら自分でやるわということで後述するとおり、ブロックチェーンを使って自分で楽曲の管理をする人も出てきている

音楽の収益源は多岐に渡る

ただ音楽の場合、本とは違ってCDやストリーミング配信はもちろん、カラオケやゲーム、CM、TV番組、映画などなどいろんな経路がある。

ゲームなどの効果音も作曲の対象になるらしい。そんなのもあるのか……と思えたが、確かに誰かがつくらないと存在しないので当然といえば当然だが。

なので、たくさんの曲や詩を提供できればできるほど収益の機会が増えることになる。

権利は死後数十年というレベルで有効なので、作れば作るほど権利収入の機会が積み上がっていくことになる。確かにこれは権利ビジネスだわと思える内容だった。

ただ、この記事でも書いたとおり、詞はAIがつくるなんてことが現実に出てきている。以下の記事では触れていないが、もちろんAIは作曲もできるだ。なので、人によっては音楽関係もAIに脅かされると考える人もいるだろう。

アートでも人工知能の脅威? AIの危険な3つの側面とどう共存するか?

NECのC&Cユーザーフォーラム&iEXPO2018で現時点の人工知能(AI)がどんな具合に進化しているのか、人工知能による脅威として何が考えられるのか、そのうえで我々がどうしていくといいのか? という話が聞けたので、それをまとめる。

権利収入といっても何もしないで入ってくることはない

権利収入といっても、何もしないで放っておいても勝手に収益につながるということはまずないものと思う。営業やら何やらは必要にはなる。

怪しい権利収入のビジネスはこの辺の説明がおかしいことが多い気がする。何もしないでも入ってくるとか、一度、仕組みをつくったらほったらかしだとか、わけのわからないことを言い出す。

不動産なんかもそうだけれども、一度収入の流れを構築すればOKなんてことはない。家賃は住んでいる人がいるからもたらされるわけで、住人やテナントが出ていったら客付けが必要になる。

よほどのことがない限り適当にやってお客さんが入るわけがないので、ビジネスとして捉えて活動する必要もある。音楽もそれを使ってもらってなんぼ。たいていは維持するために労力はかかるもの。

とはいえ、やったことがその後に活きるということは間違いないと思うので、その点は収益という観点から見たビジネスモデルとしては優秀だろう。

CDは時代遅れ?

その方はCDが売れるように、ということを何度も話されていたので、CDの影響力が大きいものと思う。今の時代を考えるとCDは売れなくなってきてはいるものの、日本はまだまだやたらCDが売れるので、しばらくはいけそうだ。

ちなみにIFPI Global Music Report 2018によると、日本の音楽市場はアメリカに次ぐ2位。ただ、アメリカとは売上構成がまったく違っている。同レポートの13ページを見ると、CDの売上比率は日本が世界一位(2017年)。なんと72%を占めるそうだ。次いでドイツの42%。日本がダントツとなっている。ちなみにアメリカはストリーミングの売上構成比率が最も高くCDは30%くらい。

ブロックチェーンで音楽関係の会社の収入が途絶える?

Imogen Heap(イモージェン・ヒープ)といイギリスのミュージシャンはブロックチェーン技術によって権利を管理するMYCELIAという会社をつくって自分で音楽を管理している(すべてではなく一部だとは思うが)。

ブロックチェーンで楽曲を管理するMYCELIAをいつ始めたかは調べきれていないが、イモージェンは2015年にWikipediaの記事によるとブロックチェーン使うと宣言している。

ちなみにイーサリアムがベースとなったブロックチェーンを使っている。スマートコントラクトによって契約が履行される。

補足しておくと仮想通貨バブルみたいなときは価格ばかりに関心が向いていたように思うが、イーサリアムは仮想通貨というかプラットフォームだ。なのでイーサリアムをベースにしたシステムをつくることができる。また、スマートコントラクトはよく自販機に例えられる。支払いがあったら自動で対価を提供できる仕組み。

ブロックチェーン管理のイモージェン・ヒープの曲「Tiny Human」はこれだけ売れた

Imogen HeapはTiny Humanという曲をブロックチェーンで管理できるようにした。その結果、先のWikipediaの記事によると、2017年10月に3万ポンド(その当時、ポンド円の為替レートは150円くらいだったので日本円にして450万円くらい)が売れたそうだ。

となると、これが進むとJASRACだなんだは駆逐されるか? と思えなくもない。だが、さすがに全部が置き換わることはなさそうだし、そうなるとしても時間はだいぶかかるはず。

また、音楽に限らずビジネスは人対人なので、なんてもかんでも自動で済むはずがない。なので、アーティストのマネジメントという仕事は確実に残るはずだ。ブロックチェーンで減ることはあっても軒並み消える仕事ということもないだろう。

意外な分野に特化した面白い音楽制作会社

で、話を聞いていて面白いなと思えたのは音楽の世界にもなにか1つのところに特化したケースがあるということ。もちろん、特定のジャンルの音楽しか扱わないというのは普通に考えられる。

が、こんなのもあるのか! と思えたのがパチンコ・スロット専用の音楽制作会社だ。パチンコにもスロットにも音楽が使われる。もちろん、効果音もある。

パチンコの市場は大きいし、新台はパチンコ屋に導入されるとなったら1台、2台なんてことはなく規模によっては数十台は当たり前。人気機種のシリーズなどは全国に一気に広がるわけで同じ音が使われ続ければそれだけずっと収益が上がる。

専用の会社ができてもおかしくないなと思えた。自分の知らない意外なところでビジネスがあるんだなと思える。

ただ、当たり前だけれども、パチンコやスロットの台はどんどん入れ替わる。ロングセラーもあることはあるし、シリーズかもされることはあるがほんの一握り。権利収入とはいえ、一度やったら終わりなんてことは夢物語にすぎない。

まとめ

ということで、音楽が好きでそれをビジネスにして起業した人の話。

権利ビジネスということを話してはいたが、それはあくまで説明のため。権利収入が得られるからやっているのではなく音楽が好きで始めている人だ。

その人と話をしていて印象的だったのは、

「お金の面で制約があって好きな音楽がつくれないというのは避けたい」

という一言だった。だから、どんどん収益を上げていって好きなことを好きなだけやれるようにしたいという意思があるように思えた。好きなことで収益が上がって、ますます好きなことができるというのは良い循環になっているなと思える。

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