斬新なチョコMinimalを生み出した起業家、山下貴嗣さんの起業ストーリー
カカオ豆からチョコをつくるところまでを一貫して自社でこだわってつくるチョコレート。いわゆるBean to Barと呼ばれる形態で事業を展開しているMinimal。
創業は2014年。渋谷の富ヶ谷から始まり、今は銀座、白金高輪、池袋と支店も増えてどんどん規模を拡大している。
日本ではまだめずらしい商品を扱ったビジネスということもあってかさまざまなメディアでも取り上げられている印象。
先日、そんなMinimalを生み出した創業者の山下さんの話を聞くイベントに参加する機会があった。
自分のやりたいことをビジネスにしたいと思っている人にはピッタリの内容だと思うので、そのときの話をまとめたい。
山下さんの話を聞くと、とても共感できる素晴らしい理念を掲げており、それに向かって本気で取り組んでいるのも伝わってきたからだ。
しかも、Minimalを展開する株式会社βaceは起業した初年度から黒字。利益もきっちり出しているので、理念だけ立派なんてことはなく利益も出している会社だ。
その点からも「これから起業したい」「やりたいことで起業したい」という人にとって良いモデルの1人になるものと思う。
ただ、初めから今のような理念があったわけではない。また、山下さんは会社員を経ての起業だったわけだが、会社を辞める前からチョコで起業しようとしていたわけでもない。会社を辞めた時点でもチョコはまったく頭になかった。
では、どんな経緯で起業したのか?
また、マーケティングのやり方もうまいなと思えることを少しだけ聞くことができた。スモールビジネスの起業でもとても参考になる話もあったので、そのあたりもまとめる。
目次
そもそも扱っている商品は何が違うのか?
Minimal富ヶ谷店で買ったチョコレート(コロンビア産のカカオ豆でナッツのような風味)
Minimalのチョコというのはスーパーやコンビニ、あるいはデパ地下などで普通に売られているようなチョコとぜんぜん違う味わいだ。
実は、このイベントの前にMinimalの本社に行ってカカオ豆からチョコを作るという体験をしてきた。そこで食べたところ、まさに今までにないチョコレートという感じだった。
Minimalでのチョコ作り体験の様子。カカオ豆からチョコを手作りする
どんなチョコかは食べてみないとわからなとは思うが、Minimalは本当に独特なチョコだ。原材料はカカオと砂糖しか使っておらず、他にこんなチョコは見たことがない。
Minimalのチョコの原材料はカカオと砂糖のみ
カカオニブというカカオ豆を粗く挽いたような状態のものが入っているので、食感はザクザクしている。香りはチョコレートそのもの。豆をの産地やロースト具合などによって酸味や苦味などなど味わいが変わる。コーヒーのような感じだった。
以下のように賞も受賞していてその品質は世界的にも認められていることがわかる。
世界最優秀のチョコレートを決める世界大会のアメリカ・アジア太平洋予選「インターナショナル チョコレートアワード アメリカ&アジア太平洋大会2016」でMinimalのBean to Barチョコレートが出品部門において最高賞の「ゴールド(金賞)」を含む3つの賞を受賞しました。
GOLD(金賞)受賞
FRUITY BERRY‐LIKE(ベトナム産) “ブラックベリーのような爽やかな風味”
BRONZE(銅賞)受賞
FRUITY CITRIC(ボリビア産) “マーマレードのような風味”
BRONZE(銅賞)受賞
FRUITY BERRY‐LIKE(コロンビア・アルワコ産) “白ブドウのような風味”
ちなみに3つ目のFRUITY BERRYは試食させてもらったなかでもかなり印象的だった。本当に白ブドウのような感じで、初めての味わいだった。味もいい。
山下さんはなぜチョコで起業したのか?
イベントにて創業者の山下さんの話を対面で聞いたところ、熱さが伝わってくる感があった。自分の思いをしっかりと持っていて志高くやりたいことをやっている人という印象。
しかも、冒頭にも書いたとおり、2014年12月に創業し初年度から黒字化。店舗も増えており拡大しているので、利益面でも好調そうだ。
しかしながら、自分のやりたいことをビジネスに……。そう思っていても、肝心な何をやるかが決まっていないケースは多いもの。
山下さんは会社員時代からMinimalの事業を思い描いていたわけではない
実はMinimalの創業者、山下さんは何をやるか決めずに会社を辞めた。
ふと30歳で会社を辞めようと思い、その後にチョコをやろうと決めたそうだ。
会社を辞めた後は、もともと関心のあったブランディングについて学ぼうと思っており、在職中に調べていると良いビジネススクールが見つかった。デンマークにあるスクールだった。
そのままいけばそのビジネススクールに合格して留学できるような状態ではあったが、入学前に現地で受ける試験の時期と会社での忙しさが重なってしまった。
会社の業務をないがしろにするわけにはいかず、その年の入学は諦めることに。そうなると、次の入学チャンスは来年になってしまう。さすがにそれは無理だということで留学は断念した。
まだこのときチョコは頭になかったそうだ。
チョコとの偶然の出合いで起業することに
では、なぜチョコなのか? これもまた、きっかけはふとしたことだった。
会社を辞めようとしていた時期に友人が開いている飲食店に行くと、手作りチョコがあった。もちろん、ここでいう手作りチョコは市販のチョコを溶かしてつくるチョコではなく、カカオ豆からつくったチョコ。
そのチョコを食べたときに衝撃を受けてこれはおもしろいと思ったそうだ。しかも、その友人は今の店を閉じてチョコの仕事をしようと考えていた時期だった。
それで「じゃあ一緒にチョコをやるか!」ということで起業、というのが創業の大まかな経緯。
理念は後からついてくる
以下のロゴの説明にあるようにMinimalの理念は社会的で素晴らしいもの。
「Bean to Bar」をデザインしたロゴ
Minimalのロゴは、●がBean(カカオ豆)、■がBar(板チョコレート)を表しています。 その「BeanからBarへ」という流れを並列で見せることで、「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」というコンセプトを表現しています。また、3本の線は「カカオ産地の生産者」「作り手のMinimal」「共に楽しむお客様」を表しています。
並列というのは、例えば、農家側のためになるような形での契約はするけれども、農家側を一方的に保護するだけのようなことはしないといった話かと思える。
良いものには当然、それに見合った料金を払う。でも、品質が落ちたら買取価格は下げる。単に農家側を「守る」だけになってしまって農家側の努力によって成果が変わるようなことにならないケースもあるようだ。
低品質のものを高く買ったとしても、一時的にはいいかもしれないが、品質に問題があるなら持続可能ではないわけで、それは農家の保護にはならないし、ともにチョコをつくっていくというような話にもならない。
だが、初めからそうした思いがあったわけではないということが分かる。きっかけは面白いと思ったからなのだから。
そこから始まって進んでいくうちに見えてくるものがあり、問題も浮き彫りになっていって、それらを解決しつつも発展をするには? ということで事業展開している。
Minimalの商品開発やマーケティング
そして、理念などの話に加えてもう1つ注目したいのが、商品開発やマーケティングなどの話も興味深かった。
話があったのは商品開発に関する話と、マーケティングに関係する部分の話。
すばやく高品質の商品を開発する秘訣
山下さんは会社を辞めた年にアメリカ、ヨーロッパを2ヶ月間、旅していた。そのときに海外のBean to Barの様子を目の当たりにして日本でもうまくいくはずだと確信した。
日本に帰ってきたのはその年の8月。クリスマスにはチョコをリリースしたいと思い、猛スピードで準備をして実際に間に合わせたという経緯がある。
その後も、どんどん新しい商品を出しているわけだが、早く、そして良いものをつくるための秘訣として次のようなことを話していた。
まず、チョコレートをつくる職人は完璧を目指したがる人が多いというのがあり、それを待っているといつまでたっても進まない。
なので、次のような方法で商品開発をしているそうだ。
- つくりたいチョコの大枠だけを職人に伝える
- 職人には6割のできでとりあえずつくってもらう(1週間程度)
- 市場調査する
- Minimalらしさを出す
- 完成を目差す
- リリースする
プロトタイピングとフィードバックを繰り返しながら少しずつ完成に近づけていくという話。
よくある話といえばそれまでだが、それをきっちりとやっているから早いという話だ。
起業するうえても完璧を目指しすぎていつまでたっても進まないというのはよくある話。
もちろん、いい加減でいいというわけではないが、事前に頭のなかで考えるのには限界がある。やってみて実際のでき具合や市場の反応を見ながらでないと、良いものはつくれないのが普通だ。
チョコの食感の秘密
Minimalのチョコは食べるとザクザクするというのは、この記事の前半でも書いたとおり。
それは、味の追求というのもあるのだけれど、その特徴によって印象に残りやすいとうような側面も狙っているそうだ。
他との違いが明確にわかり、覚えてもらいやすいというのは口コミにもなりやすくなるわけで、なかなかうまいなと思えた。
ちょっと値が張るけれども、一度食べてみるとその特徴がわかる。Minimalのサイトから通販でも買えるし、店舗でも買える。時間の都合があれば、チョコづくりの体験もお勧め。
画像はMinimalのサイトより
まとめと所感
ということで、Minimalの創業の話や商品開発、マーケティングの話の一部をお伝えした。
初めから社会的な理念がなくたって後からわかってくるということがよく分かる例。初めから思いがあって起業する人もいるけれども、こうしたパターンもよく聞く話だ。
なので、初めから理念はなくてもいいと思うのが私の考えだ。もちろん、あるに越したことはないのだけれど、そこで止まってしまうくらいなら少しでも関心のあることを進めるほうがいいと思える。
私自身も先を考えずに会社を辞めると決めた。それがいいとは思わないしお勧めしたいとも思わないけれども、そのときの自分はそれが最善だと思ったのでそうした。
そうしたら次の展開がいろいろと広がっていって今に至る。 偶然としか思えないめぐり合わせや周りの人に助けられて今があるので運がいいだけと言われたらそれまでだ。だが、行動したからこそ得られた運とも言えるだろう。
結果、大変なこともあるけれど、会社員時代よりも自由で楽しくできているのはありがたいこと。ストレスは減った。
ということで、何度もお伝えしているとおり、使命や理念は何かを考えるのもいいけれども、なにかをやってみるというのは大切な要素の1つだなとは思える。
また、完璧を目指しすぎて遅くならないようにするとか、マーケティングの要素を見据えた商品なども参考になるかと思う。
そしてもう1つ。
注意したいのはうまくいっていることだけにフォーカスしているからうまくいっているなと思えるということだ。トータルでみたらうまくいっいてることに間違いはないと思うが、数多くの失敗があってこその今だということは意識したい。
合わせてこちらもどうぞ。同様に理念をもって自分のやりたいことを追求している人の話。
今回は先日聞いたファクトリエの創業者山田敏夫さんの話から。山田さんは2016年にカンブリア宮殿でも紹介されるなど注目されている起業家の一人。 自分の人生をこれだというものに全力投球しているような人なので、好きなことをビジネスにしたいという人に通ずるものがあるかと思う。ただ、本人は起業したいと思ってそうしたわけではないのだが、それについては後述する。