Cargo、Uberに乗っかる「ツルハシビジネス」の秀逸な事例
先日、Forbesの記事でCargoというスタートアップの記事を見つけた。CargoはUberやLyftなどのライドシェアのサービスと組んで、車内でお菓子やスマホの充電サービスを提供する会社だ。
関わる人がみんな嬉しいという秀逸なビジネスモデルに思えるので、良いところに目をつけたなと思える(今後もうまくいかは分からないが)。
アイデアが秀逸な気がするので、取り上げてみたいと思う。
ちなみに、資金調達は730万ドルとのことだから注目している投資家もそれだけいるということになる。
目次
ドライバーが個人で勝手に売ればいいのでは?
そもそもドライバーが個人でやればいいという考えもあるが、在庫管理や仕入れ、決済方法の用意など利益と手間を考えたらやる人はそうはいないものと思える。
もっと単価の高い利益に直結しそうなものだと今度は評価の壁がある。Uber以外もそうだと思うが、この手のシェアリングサービスは提供側も(ドライバー)もお客さんもお互いを評価する仕組みがあるので、ドライバーとしてはうかつに勝手に何かを売ることは難しそうだからだ。
また、タクシーでも良さそうだが、タクシー運転手は勤め人であってインセンティブが働くこともないだろうし、個人タクシーだと取りまとめしているところがなくて普及が難しいものと思える。何かしら規制もあるかもしれない。
なので、個人事業主が集まったUberやLyftだからできた、ということなのかなとは思う(勝手な推測だけれど)。
実際にどんな形のビジネスなのか乗車した人の映像を見てみると……
実際にどんな感じなのかはこちらのYouTubeの動画が参考になる(最初が少し長いので1分くらいから再生されるようにしてある)。
撮影ありきで乗っている人なので不自然さはあるものの、イメージはつくかと思う。
ドライバーのやること
ドライバーは多少の手間が発生するが、金銭的なコストはゼロ。手間といっても、想像する限りでは本当に多少という感じがする。
CargoのFAQページにあるように、もし商品が売れて在庫が減ってきたら、自動的に箱が自宅に送られてくるようだ。なので、在庫管理なんて不要だし、わざわざ仕入れる必要もなくそれを受け取って車に積めばいいだけで楽。
スマホ経由でCargoのサイトから商品の代金を払ってもらう仕組みだから乗客との直接的なお金のやりとりも不要。ドライバーが箱から取り出して渡すようなので、その手間は多少はある。
なので、お金はかからず金銭的なリスクはゼロなのに少しの収入になるうえに、面倒な管理などは不要、さらには他が導入したら評価のためにも導入せざるを得ないケースも出てくる可能性はあるので、障壁は相当低くなりそうだ。
店舗に商品を置かせてもらって委託販売するようなもの。
こうやって乗客は買う
上記の映像にもあったように箱に番号とURLが書かれている。乗客はそのURL(http://cargo.menu/)を開いて番号を入力する。QRコードにすれば楽そうだが、Cargoのメニューを開くという感じなのでこれはこれで面白い。
※menuドメインは2013年に登場した名称のとおり飲食店なんかのメニューを意味したドメイン。
URLを開くとこうなる。
で、番号を入力して次に進むと、こんな感じでメニューが表示される。
こんな感じでメニューが開く。この場合は、プリングルスは2つまで無料のようだ。ちょっと見づらいけれども、画面上部、ロゴの右にTipとあるようにチップを払うことも可能。スマホ前提なので、数値を直接入力するのではなく、マイナスとプラスのタップで金額を決められるようだ。
乗客が手続きを済ませたら、商品がドライバーから渡される。
CargoのFAQページにあるように、ドライバーだけが箱を開けて商品を取り出して乗客に買ったものを渡すべき、とあるので、購入完了後はドライバーは箱を開けて商品を手渡しする。
関係者がみんな嬉しい秀逸な仕組み
このビジネスに関わるっているのは次の5者。
- Cargoを提供するCargo Systems, Inc.
- Uberなどのライドシェアの業者
- ドライバー
- 乗客
- 商品の提供者
それぞれにとってメリットがあってデメリットがあまりないというのが秀逸な仕組みだなと思える。
Cargoのメリット
冒頭にも触れたForbesの記事にあるように、Cargoは将来の自動運転を見据えた車内コマースの最初の一歩と考えているようだ。経験とデータの蓄積が後ほど役立つと踏んでいる。
いわゆる「車内コマース」の入り口になると考えている。将来的には自動運転が一般化し、この分野で蓄積したデータを持つCargoはどのようなブランドが強みを持つかを知っているため、優位に立てる。今後は、車内WiFiやエンタテインメント事業に進出する可能性もあるという。
UberやLyftなどのライドシェアの元締めのメリット
リスクもほぼなく、リソースも割くことなく新たなサービスを増やせる。お菓子程度では少しのプラスにしかならない気はするが、スマホのバッテリー充電なんかは人によってはかなりありがたいサービスだろう。
乗客にとってのメリット
乗客は単純に新たなサービスが増えて嬉しい。しかも、ものによっては無料で手に入るお菓子などもあるし、化粧品類のお試しやスマホの充電だとか、その他の小物が買えるというのは嬉しいサービスになりそうだ。あっても邪魔にならないし。
UberやLyftのドライバーにとってのメリット
ドライバーは多少の手間は増えるものの1円も負担することなくプラスアルファの収益が発生する機会を得られるし、評価も高まる可能性がある(逆に導入しないと「Cargoないの? 不便」なんてことになるかもしれない)。
公式サイトには、ひと月150ドルの収益になるよ、と書かれている(稼働時間によるのは当然だが)。
報酬は商品の売上額の25%に加えて乗客ごとに基本支払い料として1ドルがプラスされる。なので、無料の商品であっても1ドルはもらえるし、1人の乗客が無料の商品を2つの場合でも1ドルだ。1ドルの商品なら1ドル25セントもらえる計算になる。
※冒頭のForbesの記事を読むと1つ当たり25%、無料でも1ドルなんて書かれているがこれだと勘違いしそう……
さらに、前述のとおりチップを払うことも可能だ。
商品提供者
単純に販路の拡大になるし、試作品を配布することもできる。どこまでデータがもらえるのかは分からないが、個人のルデータも得られると考えると、マーケティングや研究開発には活かせそうだ。
Cargoの公式サイトによると今のところ、いつどこで何を買ったみたいな時間、場所に基づいた購入データを提供してくれるそうだ。あとはCargoのプラットフォーム上で追跡してROIも調べられるそうだ。毎回、利用する度に買っているとか、3回に1回買うとかそういうデータが取れるんだろうか?
Cargoのマーケティング
彼らは彼らでいろいろとやっているのだろうけど、紹介者制度があって報酬が入る仕組みも用意されている。
ちなみに冒頭の画像はこちらのYouTubeの動画から拝借したものだが、Uberのドライバーが自ら進んでCargoの宣伝をしている。
なかには善意でやっている人もいるかもしれないが、動画でわざわざ解説している人はほぼ紹介料が入る仕組みがあるからだろう。他にも似たような形で動画を投稿している人が何人かいる。
まとめ
ということで、新しい形態のビジネスというより従来のビジネスモデルを自動運転を見据えてうまいことライドシェアの仕組みに組み込んだ感じのビジネス。
すでに自動販売機はだいぶ前からあるけれども、自動販売機の設置ではなく売店の設置という感覚だろう。ありそうでなかった感があるところにうまく入り込んでいった実行力がすごい。
関わる人たちがみな嬉しくて、さらに導入に抵抗が少なそうという点は秀逸だなと思える。
なお、秀逸なビジネスモデルは、他にもこんなのがある。
アメリカのある会社。お菓子を販売しているスタートアップ企業なのだが、とても面白い利益構造になっている。Love With Foodという会社で、お菓子の定期販売をしている。ひと月当たり10ドルでオーガニックな材料で作られたお菓子が定期的に届くというサービス。2億円を超える資金調達に成功しており、投資家からも注目を浴びている。 なぜ、お菓子の定期サービスが注目される? たかだかお菓子を定期的に配送しているだけなのに、なぜ注目されるのか?そもそも、こんなものでもビジネスになる?なんて思う人もいるかもしれない。単なるお菓子配送サービスなら別段普通だが、Love With Foodの場合、他に注目すべきポイントがあるのだ。
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