見事なターゲティングで成功を収めた反応率50.0%のすごい広告
2012年のベルギーにて、とても興味深いある試みが行なわれた。あるNGOが秀逸で巧みなやり方で、日本円にしてなんと1億2000万円の寄付を獲得することに成功した。
NGOにとっての寄付は、営利団体なら売上に相当するだろうから、ビジネスに関心のある人にとっても役立つやり方。
なんといっても、アイデア次第でここまでやれるんだということで、とても興味深いので紹介したい。
目次
ベルギーのNGOがやった大胆な試み
で、ベルギーのNGO何をやったかというと、「誰に」これでもかと絞って広告を打ったのである。
それなりの広告費を突っ込んでいるだろうから、伸るか反るかで冷や冷やものだっかもしれないが、結果としては、3年間にわたって毎年30万ユーロ(約4,000万円)、つまりは1億2000万円ものお金を得ることに成功したのだ。
秀逸なアイデアにつながった戦略
そのNGOは、子供の人権を守るためにつくられたSOS Children VillageというNGO。ある程度の規模がある組織なので、相対的に見たら多額の寄付とは言えないのかもしれないが、アイデアは秀逸。
彼らは施設の修繕費をまかなうために募金活動を始めようとしていた。しかし、普通に活動をしてもなかなかお金は集まらない。これは、どのNGOも同じだろう。
そこで、いろいろと考えて知恵を絞った結果、訴求する対象者をなんとわずか6人に絞ったのである。
その6人はベルギーの名だたる企業の経営者たち。多くの人から少額でなくても、ごく一部の人から多額の寄付があっても絶対額が集まればいいわけだ。
どうやって寄付を募ったのか?
対象者が決まったら、あとはどうやって彼らにコンタクトするか?が鍵。
- 電子メールを送っても他のメールに埋もれてしまうのがオチだし、他も同じようにやっているから注目はされないだろう
- 会社に電話をしてもたいていは断られるだろうし、そもそも相手にしてくれないだろう。
- 手紙を送っても読まれる前に捨てられてしまうだろう。
というのように、NGOの彼らも普通にアポイントメントをとろうと思っても難しいのは重々承知。そこで、知恵を絞って行き着いたのがこれ。革新的なアイデアだ。
彼らは経営者ならば新聞を読むはずだ、と考えた。そして、2つの新聞に6人に的を絞った広告を掲載したのだ。日本なら日経新聞にでも出すイメージだろうか。業界紙でもいいかもしれない。
ちなみに書いてある内容はこうだ。
あなたはまだ99%です。これまで様々な偉業を成し遂げ社会に貢献してきましたが、あと1%足りません。最後の1%、それは恵まれない子供たちに手を差し伸べることです。担当者までぜひお電話下さい!
広告掲載の結果
結果、6人のうち3人とコンタクトがとれたそうだ。そして、6人のうち1人が3年間、30万ユーロ(1ユーロ132円換算で約4,000万円)を寄付してくれることに決定。
こんなやり方をされたら対象となる人が広告を見ていなくても、なんだかんだで伝わってしまうだろう。
また、反応がゼロなら6人とも糾弾されるかもしれないし、反応があればあったで良い会社だという評判になる可能性はある。たかられる可能性もあるけれども……。場合によっては、迷惑行為と取られるかもしれない。
スモールビジネスの成功の鍵を握る大切なこと
さて、面白い事例だ、で終わってしまってはなんなので、この事例にちなんだことを1つ。スモールビジネスでうまくいくために重要なポイントの1つだ。これを考えない限り、ビジネスがうまくいくことは難しいだろう。それが「誰に」売るのか?ということだ。顧客ターゲットを決めるということ。
よくある失敗
うまくいっていないビジネスの多くが、この「誰に」売るのか?があいまいだったり決まっていなかったりする。下手をすると誰にでも売りたいなんてこともある。
できるだけ多くの人に買ってほしいというのは誰もが思うことだろうけれども、残念ながら万人受けしようとしてしまうと、かえって売れなくなる。訴求するポイントがボヤッとしてしまい、誰にも響かなくなるからだ。
たくさんのお客さんが欲しければ、広げてはいけない
なので、お客さんとして想定する人をしっかりと決める必要がある。あいまいに30代の男性に、高齢者に、というようなあまり意味のない塊ではなく、ポイントは悩みや困り事、あるいは望んでいることを中心として考えることだ。よく年齢で絞ることがあるが、それはあくまで結果的にそうなっているということ。
例えば、男性向けにカミソリやあるいは乳液、化粧水などを売っているのなら、カミソリ負けして血だらけになってしまうのだけれど、電気カミソリは使いたくない人をターゲットにするかもしれない(そんな人がいるかは置いておいて)。そうなった場合、結果として成人した男性になるだけであって、男性が先に来るわけではないということ。
ターゲットを絞る理由
顧客ターゲットがしっかりとしていると、訴求する内容が具体的になって、その人に響きやすくなる。
先ほども触れたとおり、あいまいな想定顧客像だと、チラシや商品やサービスを販売するサイトに書く内容もあいまいでボヤッとしてしまい、相手に響かない。相手に響かなければ、当然、売れないわけで、せっかく良い商品でも埋もれてしまう。
今回の事例は、このターゲットを徹底的に考え抜いて絞りに絞った例。さすがに特殊な例ではあるものの、もし、寄付してもらいたいと思う対象者を広げて同じことをやっても、あの金額は得られなかったのでは?と思う。
どのくらい絞るといいのか?
例えば、転職を一度してみたけれど、やっぱりしっくりこなくて、また転職をしたいと思っている31歳のIT業界のエンジニアのようなイメージ。ペルソナといって一人のお客さんを詳細に描くといいなんて話はよく聞く話だ。
決まりはないので“答え”などはないし、どのくらい絞ればいいのか?という基準もない。
ただ、競合が多ければ多いほどシャープにしないと、他の商品やサービスと紛れてしまって選ばれなくなる。一方、ニッチな分野で競合が緩いなら商品を出せばある程度売れるので、ターゲットがどうこうと考えて詳細に考えるより、ニーズが分かったらさっさと売り始めたほうがいい。
まとめ
ということで、スモールビジネスで収益を上げるなら、ターゲッティングはとても重要な要素。
また、今回のNGOの広告は、先が見えずに八方ふさがりとなったとしても、アイデア次第でいかようにもなるんだという例として捉えられるのでは?と思う。
※参考サイト