秀逸な儲かる仕組みを持つお菓子定期配送のビジネス
アメリカのある会社。お菓子を販売しているスタートアップ企業なのだが、とても面白い利益構造になっている。Love With Foodという会社で、お菓子の定期販売をしている。ひと月当たり10ドルでオーガニックな材料で作られたお菓子が定期的に届くというサービス。2億円を超える資金調達に成功しており、投資家からも注目を浴びている。
目次
なぜ、お菓子の定期サービスが注目される?
たかだかお菓子を定期的に配送しているだけなのに、なぜ注目されるのか?そもそも、こんなものでもビジネスになる?なんて思う人もいるかもしれない。単なるお菓子配送サービスなら別段普通だが、Love With Foodの場合、他に注目すべきポイントがあるのだ。
ポイントは、データ。
お菓子の利益ではなくデータが利益
どんなデータかというと、顧客から得られるデータだ。お菓子を定期的に取り寄せるようなお客さんは相当なお菓子好きとみていいだろう。そのお菓子のヘビーユーザーの声はお菓子メーカーにとっては非常に価値のあるもの。それを売っているというわけだ。
お菓子を個人に売っていても利益は少ない。単価を上げようにも限界がある。よほどお客さんを増やさない限り、出る数もそう多くはならないが、大手食品会社がすでにあの手この手で流通させている中に入っているのは至難の業。
そこで、ネットでの定期販売を軸に、お菓子の売り上げで利益を出すのではなく、得られるデータで利益を出すという考えは秀逸だ。
日本で似たようなうまいことをやっているのが、IT業界のスタートアップ界隈で女帝と呼ばれる奥田浩美さん。社会性と利益をうまく考えている非常に秀逸なビジネスモデルになっている。詳細はこちら。
女帝・奥田浩美さんの本「人生は見切り発車でうまくいく」で分かったすごさ
立花岳志さんのツナゲルアカデミーにて、奥田浩美さんの講演を聴いた。 奥田さんはITを軸に最先端の大規模イベントの開催、運営や、限界集落にITを浸透させる取り組みを行なっている方。ちなみに、女帝と呼ばれているのは、日本においてスタートアップという言葉が騒がれる黎明期にスタートアップのイベントなどの活動をし始めており、TechCrunchやMash up AwardなどITのスタートアップ系の主要イベントに関わるなど、大きな影響力があるということと、その慕われるキャラクターから。 人生は見切り発車でうまくいくという本の内容をもとに講演をしていただいた。ポイントは、講演の最後に提示してくれたガンジーのメッセージである
お客さんと共につくる共創の仕組み
そして、注目すべき点はもう1つ。共創の仕組みだ。
新しいお菓子を誰よりも早く食べられるというのは、お菓子好きにとっても嬉しいだろう。定期購入しているからこそ、手に入るお菓子であり、特別感も味わえるものと思う。
また、ひと足先に新しいお菓子を食べられるというのはもちろんだが、自分たちがお菓子メーカーの役に立っているという気持ちもあるだろうと思う。
自分たちも開発に関わっているという感覚を持っている人もいるかもしれない。お客さんと共創している例なのかなとも思える。
また、今の時代はソーシャルメディア経由のバズも期待できる。自分しか知らない良いものは、広めたいと思う人もいる。独り占めしたいという人もいるとは思うが、いずれ世に出るなら隠していても意味はない。だったら注目されたいという気持ちが勝ちそうだ。
なので、商品開発にも、商品を広める際にもお客さんとの共創が働いている好例のように思う。
利益額を大きくする秘訣
儲けを大きくしようと思ったらBtoBを狙うのがいい。何せ法人相手は個人よりも取引の規模が違うことがよくあるので。
相手の商売の手助けをするような商品やサービスを手がけるのがポイント。
個人が手軽に始めるビジネスだとなかなか法人相手には商売できないかもしれない。だが、ビジネスを大きくしたいと思うなら、個人相手では限界がある。この辺りはどうしたいか? という自分の思い次第かと思う。
拡大したいならどんどん大きくしたらいいし、規模の拡大に関心がないなら小さくやったらいい。ただ、自分に正直にありたいもの。
大きくしたくない理由がやったことのないリスクを感じて物怖じしているからなのか、一人一人を丁寧にという思いなのか。その逆もまた同じ。規模を大きくしたいのは単なる見栄なのか、より多くの人のためにという思いなのか。ちゃんと自分自身に問うてみる必要はあると思う。
創業ストーリー
ところで、創業者はどんな思いでこのビジネスを始めたのだろうか? 利益はもちろん大事なのだけど、創業の思いもまた重要なので、Love With Foodのサイトをもとに意訳した内容を載せておく。意訳が間違っていることもあるので、より詳細はサイトを見ていただきたい。
成功したエンジニア……のはずが
創業者はAihui Ongという女性。創業前、エンジニアとしてうまくいっていて十分な収入を得ていた。ただし、表向きは。実際のところは、夫との関係が冷え込んでいて自信を失い、自分に価値を感じなくなっていた。
その状況を変えるのは大変で、結局は夫とは離婚することになった。離婚によって自由にはなったものの、心はとても重いまま。
離婚して慰めの旅に
そこで、慰めとなるものを求めてバックパックを背負い、異国の地へと旅立った。スイスでスカイダイビングを楽しんだり、ルーマニアで城を見たり、エジプトに行ったりと楽しむ一方、貧困に苦しむ人たちや水と食糧が不十分な人たちも目にした。いろんな体験をしながら、12ヶ月かけて20ヶ国を巡ってアメリカに帰ってきた。
親友が衝撃の告白を
ある日、親友の一人に会うと、その親友は気が滅入っている様子だった。話をしていると「乳がんになった」という言葉が彼女の口から出た。
「まだ33歳なのに……どうして?」
Aihuiは、自分の人生に不平不満ばかり言っていた自分が恥ずかしいと思ったようだ。
彼女のために何か言ってあげるか、何かしてあげないと……。そう思っても、なんと言っていいか分からずいたところ、思わず口に出たのが
「私、料理くらいしかあなたにしてあげられないから、何か作ってあげる。」
という言葉。
今では、彼女はすっかり元気になっている。彼女に食べ物を通して愛情を示せて以来、自分の人生に不平を言うことがなくなった。そして、彼女のおかげで、何年も何マイルも探していた自分の幸せを見つけることができた。
もう一人の友達の状況を見て奮起
一方、もう一人の友人は自然素材で作った炒め物用のソースを製造販売するビジネスを始めた。情熱をあったものの、うまく流通させることはできず、頓挫してしまった。他の多くの生産者がそうであるように。
彼女の状況を見て憤りを感じ、情熱ある生産者が同じ運命をたどらないように手助けしてあげたいと思うようになった。
多くの生産者は古い体制のままで今のインターネットの時代に置いてけぼりとなっている。情熱があってもそれをうまく流通させる手段を知らない。
そこで、Ahuiは食べ物とテクノロジーという自分の中にある2つの大きな情熱をもとに、食べ物の生産者にはこれまでとは別な流通経路を、消費者には素晴らしい生産者を簡単に見つけられるようなサイトをつくった。
さらに、旅をしているときに見かけた食べる物に困っている子供達への支援にもつながるように、売上の一部は寄付するような仕組みにした。
まとめ
うまく考えられているビジネスには、収益が上がる構造がちゃんとある。しかも、Love With Foodの場合、お菓子を消費する消費者も、お菓子を提供する側もプラスになるという仕組みになっていてAll Winの形になっている。
利益は大きくしたいなら、規模が大きくなる法人を相手にしたほうがいい。利益拡大だけが道ではないので、自分が本当にどうしたいかが重要。そのためには、何のためにビジネスをするのかがカギ。