自分の商品をヒットさせるシンプルな方法をティッシュを日用品に変えた歴史から学ぶ

http://www.crecia.co.jp/webmagazine/vol01.pdf

先日、Amazon Dash Buttonを試したということで記事に書いたときに目についたものの1つがティッシュペーパー。銘柄なんて気にしたこともなく普通に店に売られているものなら何でもいいので、ボタンを買おうかと思ったからだ。近所のドラッグストアに比べて割高でなんだか損している気分だったのでやめたれども(笑)。

さて、そのティッシュペーパーが広がった経緯に関して興味深いエピソードがある。ビジネスに関心があるなら知っておいて損はない良い話なので触れてみたい。1920年代の古い話だけれど、今でもこの方法は使われるし、効果は絶大だ。

今やクリネックスはティッシュの代名詞だが、最初は鳴かず飛ばずだった

ティッシュが販売されたのは1924年。日本はその頃、大正13年。アメリカではティッシュと言えば、クリネックスだそうだ。クリネックスはキンバリークラークという会社の商品なので、ホッチキス(一般名詞はステープラー)みたいなものと考えていいかと思う。アメリカの実際は知らないので、なんともいえないけれども……。

さて、今でこそティッシュペーパーは日常の当たり前の商品になっているが、そんなティッシュもご多分にもれずというか、いきなりドカンと売れるようになったわけではなかった。

なぜ、売れていなかったティッシュが急に売れるようになったのか?

発売から5,6年はさほど売れていなかったティッシュ。あることをきっかけにと飛ぶように売れた。

ティッシュははじめ、女性の化粧落とし用として売られていたそうだ。今は化粧を落とすにはそれ専用の化粧落としなんていうのがあるけれども、当時はそんなものはなかった。

1920年代のアメリカでは女性が化粧を落とす際には布やタオルを使っていたそうだ。布やタオルだと一度使ったら洗ってまた使わなくてはならない。手間があったし、衛生面でも良くなかった。なので、化粧をする女性ウケはしていたようだ。

その当時の広告はこちらのFrom Cold Cream to Colds — Ads for Kleenex and Pond’s Tissuesという記事を見るといい。

ただ、あくまで女性の化粧落とし。今のように誰もが使うような商品とまではいかなかった。それでも十分に大きな市場ではあるが、あるきっかけによって女性に限らず誰でも使うような日用品に化けて飛躍的に売上が伸びた。

こうしてティッシュは爆発的な売れ行きに

急速に売れ始めたのは1930年。History of Kleenex Tissueという記事によると、キンバリー・クラークは1926年にお客さんからの手紙に使い捨てハンカチとして使っているという手紙が何通も来ていて興味を持ったそうだ。

そこで、調査しようということになって新聞広告を出した。広告でクリネックスをコールドクリーム(基礎化粧品の一種)落としに使っている? それとも鼻をかむ使い捨てハンカチとして使っている? という問いかけをして反応を見たところ、返ってきた答えの60%が使い捨てハンカチとしての用途だった。

そこで、ティッシュをハンカチの代わりに使っている人が多いのならハンカチという観点から売ってみようということで、広告を変更して売り出した。すると、売れ行きは飛躍的に伸びたそうだ。今では世界中で日用品として浸透している。

当時と今では時代が違うので新聞の読者層をちゃんと考えないと同じことはできないにしても、結局やることは今も昔も同じということが分かる。やり方が変わるだけで、大切なポイントは変わらない。

“Customer is always right”

クリネックスが飛躍的に売れるようになったのは、お客さんに合わせたことが大きいということが分かる。History of Kleenex Tissueにも書かれているように、“Customer is always right.”というわけだ。お客さんは何がほしいか分かっていないという考えもあるので、alwaysかどうかは疑問はあるにしても、顧客の声をもとに商売をしたら、売れやすくなることは事実だろう。

商品を提供する側としてはこうしたら売れるんじゃないか、こんなニーズがあるんじゃないかといろいろと考えて売る。あるいは、こういうのもを提供したいという思いで提供することもある。

でも、お客さんが自分たちの想定したとおりに商品を買って使うとは限らない。無理矢理売ろうとしても空回りするだけ。エスカレーターを逆走するようなものなので大変だし効果は薄い。お客さんの方向を見たほうが楽だし、お客さんにとっても分かりやすくて嬉しい。

ただ、初めからそれが分かったら苦労はしないとも言える。なので、売ってみて反応を見る、顧客の声を聞くというのをできるだけ速くやるということを常日頃からやっている(うまくいっているところは)。

関心のない人の声に惑わされない

声を聞くのが大切といっても、それはあくまでお客さんの声であって外野の声ではない点は注意したいところ。

起業したい思っていて周りに相談したらやめろと言われたとか、商品が売れないと言われたなんて話は聞くのだけれども、その人達は起業したことがあるのか? そもそもその商品に関心がある人なのか? ということを考えずに聞いて勝手にダメだと思い込むケースがある。嫁ブロックなんて言葉もあるわけだし。

もちろん肯定される意見も同じ。関心のない人からいくら良いとか売れそうとか言われても、あまり参考にはならない。買う人の気持ちは分からないわけだから。だからといって聞く耳を持つなということではないのでシャットアウトすべきというわげはないが、顧客の声と関心のない人の声は区別しないと惑わされるだけだ。

すでにお客さんがいるなら買った人の声を第一に、まだお客さんがいないなら関心のある人の声を中心に。少なくとも私が知る限りでは、結果を出す人はそうした当たり前のことをただやっているに過ぎない。

他の顧客の声をもとにヒット商品を生み出した例はこちら。

お客さんの行動からリスクなく売れる商品・サービスを作る方法
「まさかそんな使い方を……」とお客さんの想定外と言える思わぬ使い方から、ヒット商品が生み出された例。

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