認知されていない高額商品を売るマーケティング(集客と)と販売
伝統工芸品を扱っている方からご質問をいただいた。具体的に公開していいとは書かれていなかったので、ある程度ぽかして書かせていただこうと思うが、これからビジネスをやろうとしている人にも役立ちそうなので、自分なりの回答をまとめてみた。
いただいた質問をまとめると、
- 認知度が低い伝統工芸品を扱っている
- 手間がかかり高額な商品であるにもかかわらず、売れないので安売りをするような状況に業界がなっている
- もっと認知させて多くの人に良さを知ってもらいたい
と解釈できるような内容だった。
これまでいろんな人と関わってきた中で、あまり認知されていない分野のビジネスとしては、普通の墓石とは違った変わった墓石を売る方、髪の毛からつくる特殊なダイヤモンドを売る方、特殊な金属でできた指輪を売る方などがパッと思い付く。指輪の人はうまいことやっていてほぼ1人で回しながら、月に数百万円は売る。
さて、どうしたものか?
目次
起業してビジネスをうまく利益を出すには売れるものを選ぶ
基本的には売れる商品を扱うのが手っ取り早いし、安定する。こちらの記事で書いたとおり、大きな市場の一部をとるというやり方。
起業するならどんな市場を狙ったら良い?考えるべき2つの見方| IDEASITY
ただ、たまたま需要の多いものが好きなこと、やりたいことならいいけれども、必ずしもそうとは限らない。そこで、考えるのはこんなことだ。
とはいえ、やりたいことをビジネスにしたい
本当に需要がないことなら、それは価値を創出できないわけでビジネスとしては成り立たない。もう趣味でやるしかない。人生活のためにビジネスが存在しているわけではなく、価値を提供するためにビジネスは存在しているので。
といっても、たいていのものが売れるので、やり方次第でなんとかなるケースはとても多いんじゃないかとは思える。売り方次第で変わる例は枚挙に暇がないといっていい。では、どうするか?
いただいた質問内容から考えられるのは、次の3点かなと思えた。
商品を買うのは人なので、人を中心にまずはどんな人を狙うか。次に、その人たちの需要を満たすにはどうしたらいいか?(ビジネスととして成り立たせるため)そして最後に、どうやって集めるか?という3点。
それに加えて高額商品という特性があるので、それを考慮した上でのやり方。
認知させるよりもまずは認知している人を狙う
認知させたいという思いが見受けられたが、こちらの記事で書いたとおり、数は少なくてもすでに関心を持っている人を相手にするのが先決かなと思える(それを認知と書いたのかもしれないが……)。
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誰も認知していないようなら別だが、キーワードプランナーで調べた限り、月間1万件近くの検索があった。確かに関心のある人が多くないとは思うけれども、伝統工芸品ということもあるし、関心が強い人はいるはず。
なので、まずはすでに関心がある人、買っている人を見つけるのが先。その後に、多くの人に知ってもらう活動をしたほうが良さそうだ(認知の意味の解釈が違っているかもしれないが)。
関心のある人はどこにいる?
じゃあ、そうした人はどこにいるのか?骨董屋にいるのかもしれないし、焼き物が好きで有名どころに旅行がてら見に行っているかもしれない。
ネット上で自分のところに来てもらうには、自分のサイト(ブログ)を持つのが一番。記事の内容は日常の話や日記などは、キーワードを中心に考える。思い付くキーワードをキーワードプランナーで調べたら、どんなキーワードで検索しているかが分かるので、それを手がかりにしてみる。
どうやって集めるかは後述のとおり。
周辺の需要を見つけてキャッシュポイントを見つける
作品が売れるのが一番かもしれないが、お客さんは作品以外のところに関心があることもあるので、そこで収益を上げるのとは手かなとは思える。人の縁で紹介が紹介を呼んで関心ある人につながることもあるし、近い人が集まるわけで作品が売れる可能性もある。
ということで、よくあるのが教えるというパターン。あとは、ものによっていろいろと変わってくるが、ここでは贈答品なんかがあるかもしれない。
教室を開く
キーワードを調べてみると、自分でつくりたいニーズがありそうな感があった。材料を探している人がいたので。なので、直球でやりたいことかどうかは分からないが、関連ビジネスとして展開はできる。
メインとなる人が定年後の趣味でやる人が多いのか、年齢に関係なく関心を持った人なのか、日本好きの海外の人なのかは分からないが、そうした人たちの需要を満たせば、ビジネスにはなる。
贈答品
取引先に送る、上司や両親、祖父母に贈るなど、贈答品として焼き物ならこれがいいというのを教えてあげるといい。単に贈答するよりも、この作品は○○の意味があってとか、生まれた背景が○○でAさんにピッタリで、とか、何かしら意味を与えられるとプレゼントはしやすくなるもの。ストーリーを付加するといってもいい。
どうやって認知してもらって集客する?
では、関心のある人たちに知ってもらうにはどうしたらいいか?施策としてはオフラインとオンラインの2つで考えてみるといいかと思う。
オフラインでの集客を考える
拠点はいただいた質問内容から推測するに京都のようなので、近くにいる人たちに向けてチラシを入れるのもありかもしれない(ちなみに飲食店とか治療院とか美容系の店舗だとかの場合、ネットよりチラシのほうが効果が高いなんてことはザラにある。もちろんやり方次第ではあるが)。
オンラインでの集客を考える
ここでも大切なのはキーワード。そして、誰をお客さんの対象とするか。それをもとに自分のメディア(ブログ)で発信していく。
できれば、自由度が高く運営者都合で使えなくなることがないので、自分でドメインをとってWordPressを使うのがいいとは思えるが、アメブロでもなんでもいい。実際、ネイル、指輪、ボディジュエリーなどアメブロだけで集客している知り合いもいる。
どんな内容をブログに書く?
○○焼きといっても種類はあるだろうし、伝統工芸品ということなので、歴史もある。なぜ生まれたか?どんなストーリーがあったのか?代表的な作り手は?なんてことも知りたい人はいるだろうし、実際につくるにはどうしたらいい?とか、必要な材料は?作り方は?などなどいろいろと出てくる。
贈答品で何か焼き物を贈りたいと思っていても、あまり焼き物について分かっていない人は、具体的な名前では検索しないはず。例えば、「焼き物 贈答品」などで検索するとなると、自分のサイトにどれだけ焼き物の記事があるかがポイントになる。
焼き物の中でも○○焼きが一番良い、なぜなら□□だからというのが書かれていたら、それに納得する人は感心を持ってもらえる。
こうしたことをもとに記事を書いてどんどん載せていくと、少しずつアクセスが増えてくる。
ちなみに、日記や日常の話などは、自分を出すという意味では役に立つけれども、基本は不要。○○焼きで検索してくれる人は、ブログの管理人が知りたいわけではないので。あくまでキーワードに沿った記事があって、その後にどんな人が書いているか、作品を作っているかが来る。
影響力のある人、インフルエンサーと組む
何も自分の力だけで完結する必要はない。うまく人の力を借りるのも手だ。全然違う分野ではあるが、便所サンダルを認知させた人は、ミュージシャンとうまく絡んだ。
起業したい?だったら「便所サンダル」ネタで起業した男の話は知っておいた方がいい| IDEASITY
もし、著名人で○○焼きが好きな人がいるなら、同じようなことをやってうまくいく可能性はゼロではない。
うまくいっているところから学ぶ
あとは、似たようなものでうまくいっているところがあったら、そこから学ぶのが吉。例えば、伝統工芸品ではないけれども、芸術の世界でうまくいっているところはないか?と考えてみる。
すぐに思い付きそうなのは絵を売っているところ。業界が違うので、事情は変わってくるとは思うが、うまくいっているところがあれば、真似できる部分はありそうに思える。
高額商品を売る場合
最後に高額商品を売る場合の話を。私は50万円くらいの商品を年間で600人以上に売っていた時期もあったし、今も30万円くらいの商品をオンラインでもオフラインでも売るので(※)、スモールビジネスのレベルなら多少は心得ているつもり。
※1人でやったわけではないのであしからず。あくまで自分が中心にいて、他の協力者(スタッフや外部の協力者)が数人いての話。
ワンクッション噛ます
高額な商品はたいていの場合、いきなりは売れないので間に無料相談(説明会を含む)を挟む。お客さんと関係ができているなら、ネット上だけで50万円でも売れるけれども、新規のお客さん相手だとちょっとキツイと思える(保険なんかはトータルで見たら相当な額になるが、ネットでパッと買ってしまう人もいるので、ものによるのはあるにしても)。
高額な伝統工芸品なら一旦、見てもらう必要があるし、アクセサリーなどはオーダーメイドにして相談を受けながらやるといい。既製品を売るなら、お金持ちの人が直感でなんとなくいいから買うなんて場合を除いて、なんでその製品がいいのか、その理由が明確になっていると売れやすくなる。
ペットショップ作戦で買わずにはいられなくなるように刺激する
ペットショップの秀逸な例に、お試しで家に持ち帰ってもらう作戦がある。ちょっとくらいなら……と思って家に持ち帰ったが最後、愛着がわいて買わざるを得なくなる、というやり方だ。
もちろん、持ち逃げされたら終わりだけれども、そこは損害保険に入りつつ(あればの話だけれど)、しっかりと身元を確認してやってみる価値はあるかなとは思える。高級な焼き物を家(あるいは事務所、社長室、店など)に飾ってみたらピッタリ……!なんてことになったら、まず売れるだろう。
レンタルにしてみる
いきなり何十万、何百万は即決できない人も、月に数万円なら数千円なら置いてもいいかも、なんて人がいるかもしれない。イベントなどで一時的な利用目的も考えられる。減るものではないし、よほど酷い扱いをしない限り、商品価値が下がることはないはずだ。
そして、一定の割合で一度借りたらやっぱり欲しくなってきた、なんて人が出てくるはずだ。
まとめ
ということで、まずは興味のある人を狙いましょうという話と、今後の集客のためにネット上に自分の賞品に関する情報を発信して見込み客に見つけてもらう努力をする。一気に認知してもらいたいなら、著名人などのインフルエンサーの協力を得るのが一番いい。
高額な商品を売るならいきなり売るんではなくて、相手のニーズに合わせて売るために無料相談(有料でもいいけれど)を挟むといい。直で売れることもあるので、必ずそうしろということではない点には注意。その辺は柔軟に。例えば、私が婚約指輪を買ったときには、たまたま入った店でいきなり買った。
あとは、高額商品という特性上、手に入れるまでのハードルを下げるために、一度、家に持ち帰ってもらうとか、レンタルにするとかも考えられなくはないかなと思える。
100%確実にうまくいくことなんてないので、リスクを考えてやりやすいのからどんどんやってみたら何かしらの結果が出るはず。うまくいかなければ、何がよくなかったか考えて次へ。うまくいったら何がうまくいったから考えて繰り返す。