ビジネスで役立つ心理効果(アンカリング効果、松竹梅)
何をやるにしても人というものは先入観に左右されるもの。心理効果としてもアンカリング効果や、価格設定のテクニックとしてよくある松竹梅など、何かと活用できることもある。テクニックと聞くと、悪さをイメージする人も中にはいるようだが、何でも使いようなので、悪くも使えるし、良くも使える。ただ、知っていなければ、良い方向に活用することもできないし、操作されてしまうこともある(希少性など、知っていても抗えないこともあるけれど)。
ということで、自分が体験したちょっとしたエピソードを交えてビジネスに役立つテクニック的なところをお伝えしたい。
目次
西表島のツアーにて分かった心理効果
以前、西表島に行ったときの話。イリオモテヤマネコがいるあの西表島。文化的には沖縄というより八重山といったほうが良さそうだが、行政上の区分としては沖縄県。
その日は朝から西表島の白浜港という港に行った。西表の自然を満喫するツアーに参加するためだ。そこからカヤックを漕いで海から川をのぼり、ナーラの滝というところに行くツアー。10人以上の人数で参加。
ツアーのガイドさんに簡単な説明を受けて、まずはカヤックに乗って移動を始めた。慣れないカヤックの操縦に四苦八苦しながら漕いで漕いでひたすら漕いでいると、山のふもとに近づいてきた。そして、今度はカヤックを置いて山の中をトレッキング。
しばらく歩いていると、ガイドさんが止まって
「あ、人が滑り落ちたような跡がここにありますね。しかもけっこう新しいですよ。誰か落ちてるかも。」
という恐ろしいことを口にした。
「えー!?それでも先、進むのか?」
なんて思いながらその問題箇所を通り過ぎるようとするのだが、どうしても下が気になる。なので、つい下を見たところ、見えたのは生い茂ったシダ植物や、やたら大きなワラビみたいなやつが生えていて、あとはゴツゴツした石ばかり。そして、底は川が流れていた。
落ちたら死ぬかどうかは分からないが、間違いなく怪我はするだろう。石がゴロゴロしているので、打ち所が悪ければ死んでもおかしくはない。
それ以降、恐怖を感じながらもトレッキングを続けていくと、目的地のナーラの滝に到着した。ガイドさんは何やらやることがあるらしく、しばらくはこの付近で遊んでいてくれ、みたいな感じ立ったので、滝壺で泳いだり、滝に打たれと楽しんでいた。やがて、空腹になってきたので、昼食はどうするんだろう?と思って滝壺から出てチラッとガイドさんがいる方向を見た。すると、なにやら調理しているのが分かった。
「おぉ!」
とちょっとした感動を覚えながらできあがるのを待っていると、八重山そばができあがった。西表の自然の中で、できたての八重山そばはなかなかのうまさだった。
昼食後、しばらくはまた滝のところで遊んでいると、帰りの時間が来たので、同じ道を引き返した。人が落ちたかもしれないところも、無事通過して、カヤックを置いていたところまで戻り、またカヤックに乗って港に戻ってきた。
ツアー後に分かった驚きの事実
ここで驚きの事実が分かった。ガイドさんが何気なく口にしたのを聞いたところ、なんと今日の移動距離は16kmとのこと。そんなに移動していたとは知らずにビックリしてしまった。
おそらく、最初に「今日の移動距離は16kmです。」なんて言われたら一瞬にしてやる気がなくなっていたと思える。が、目の前の一漕ぎ、目の前の一歩に集中していたら気がつくと移動が終わっていた。
西表ツアーから分かったこと
この経験を通して思ったのは、ビジネスをやるにあたって大事なことが2つあるということ。
1つは、たかだか16kmだが、目の前の小さな一歩を続けることでやがてはゴールにたどり着くということ。もちろん、道が間違っていなければだけれど。
もう1つは、人は最初に言われた数字の印象が頭に残りやすくなるということ。これは心理効果としても知られていてアンカリング効果と呼ばれる現象。
アンカリング効果など印象をうまく利用すると、悪さにも使えるが、本来あるべき価格が高いと思われてしまうようなときにうまく使ったり、自分自身をうまくコントロールするときにも使えるだろう(今回の西表ツアーのように)。
例えば、アンカリング効果ではないが、よくやるのは、松竹梅と値引き。
松竹梅
商品ラインナップを松竹梅と3段階でそろえるのであれば、竹が売れやすくなる傾向がある。なので、売りたい商品(正確には、想定しているお客さんに価値が最も伝わる商品)を真ん中にして、そこまで魅力を感じないであろう廉価版と、かなり高額な豪華版を用意する。
もし2段階しかないなら一番上のコースを無理矢理にでもつくるといい(ちゃんと提供できることが前提なのは当然)。Aセット、Bセット、Sセットみたいな形で。一番上のコースは真ん中を際立たせるためなので、売れなくてもいい。ただ、置いておくと勝手に売れることもあるので、面白いもの。
値引き効果
値引き効果というのは勝手につけたので、本当にそう呼ばれるか分からないが、よくやられるのは最初に高い値段を提示しておいて後から割引きをして、最初の高いと印象づけてこんなに安くするんだということを分かってもらう方法だ。
本来10万円なんだけれども、今回は8万円で、みたいなやつ。本来は200万円のところ、なんと50万円みたいに極端にやる人もいるが、いくらなんでもやり過ぎだろうと思う。やってる人は、それでおかしいと思わないのかが不思議だ。
数字に関する面白い実験(アンカリング効果)
アンカリング効果という心理効果がよく分かる面白い実験がある。
あるとき、ワインの価格に関する実験が行なわれた。
ボトルに数字が書かれたラベルを貼ってどんなワインかがわからないようにして、何本か用意しておく。数字は何の意味もない数字で、値段でも年代でも、重さでも製造年でもなんでもない。単に「56」とか「5」とか適当に書かれているだけ。
それらのワインのボトルを前にして、ランダムに選ばれた人はたちが、AグループとBグループに別れてワインの値段を予想してもらうという実験。
ここでのポイントは、Aグループに配布されたワインボトルに書かれた数字は、Bグループに配布されたそれよりも数字が大きいこと。つまりは、Aグループのワインは数字が「76」とか「92」などであれば、Bグループのワインの数字は「3」とか「5」などになっているということ。
ワインの価格の予想の結果は?
で、予想をしてもらった結果、どうなったか?
なんとAグループにいた人のほうがBグループの人よりも高い値段を予想したのだ。ワインには何の意味もない数字が書かれていただけなのに、価格の予想に変化が生じたというわけだから、面白いもの。
まとめ
ということで、日常やビジネスとは全然関係ないようなことからもいろいろと分かるもの。また、数字を使った印象の影響は、うまく活用することで自分自身にもビジネスにも役立つ。
どうでもいいものをただ自分が売りたいという理由だけで、相手を操作するのは良くないと思うが、本来ある価値を相手にちゃんと届けるために、あるいは、自分が折れることでlose-winになってばかりにならないようにするためなど、使い方次第で良くも使えるので、うまく付き合いたいもの。