なぜ、客のいない小さな八百屋の経営がうまくいくのか?〜見えない利益〜
なぜ、この店はお客さんがあまり入っていないのに続いているんだ? と思ったことはないだろうか?
例えば、田舎街の八百屋さんだったり、服屋さんだったり。スーパーやコンビニ、ショッピングモールができてお客さんをだいぶもっていかれているように思えるのに、なぜかつぶれずにずっと続いているような店だ。
なぜ、そうしたさびれた店がずっと残っているのか? 見えないところでどうやって稼いでいるのか? をまとめたみた。
目次
なぜかつぶれない八百屋
実家に帰ると気付いたら高齢者の施設ができていたり、葬儀場ができていたり、店がなくなっていたりと、様子が変わっていることがちょくちょくある。一方、昔から変わらず、ずっと続く店もある。中には改装してキレイな店舗で商売を続けているスポーツ店さえある。
かつて「さおだけ屋はなぜ、潰れないのか」という本がベストセラーになったのは記憶にある人もいるだろう。さおだけ屋に限らず、先のお店のように何でつぶれないの? と思う店はけっこうある。
例えば、タイトルでも触れた八百屋。
あまりお客さんが入っていないような店なのになぜかつぶれない。近くにショッピングモールができたり、スーパーがあったり、コンビニでも野菜を売るようになったりしても続いている。そんなに八百屋というビジネスは儲かるのだろうか?
小さな八百屋がつぶれない仕組み
当然、そうしたつぶれない八百屋は、店にやってくるお客さんにだけに売っていては儲からない。彼らの儲けの仕組みは他にある。
- 野菜を必要としている人はどんな人か?
- 普段、私たちはどういった形で野菜を食べているか?
- 野菜を消費しているところは?
といったことがヒントになるのだが、あなたはどう思うだろうか?
答えの1つをお伝えすると、八百屋が儲かっているのは業者に販売しているから。
野菜はどうやって流通しているか知っているだろうか? 私も詳しくはないのでサラッとしか説明はできないが、基本的にはこうしたながれになっている。
農家がつくった野菜は農協などが買い取る。それが卸業者にわたり、市場でせりにかけられる。そして、八百屋などがそれらを買うことになる。だが、せりには一般人は参加できず、八百屋などの小売業者でないと仕入れはできない(資格がいる)。
八百屋は仕入れた野菜を個人にも売るけれども、飲食店や給食センター、さらには動物園や水族館があればそこにも売っているのである。業者相手だと取引量が大きくなるので、儲けの絶対量も増える。
店だけを見ていては分からないところで、実は儲けがでているということだ。
田舎のスポーツ店や靴屋、服屋がつぶれない理由
八百屋以外にも似たような店がある。スポーツ用品店に靴屋、服屋、そして、文房具も扱う本屋だ。私が実家に帰る度に、なぜつぶれないのか?と思っていた。
業者を相手にすると考えてみると、すぐに思いつくのは学校。近くの学校の体操着や運動靴、制服を売っていたり、学校で使う文房具やボールなどのスポーツ用品などを売っていたりする。だからいつも一定の需要があって利益が出ているというわけだ。
客のいないCDショップは、なぜ続く?
他にもづぶれないお店としてCDショップなんかがある。私が高校生や大学生の頃にちょくちょく行っていたCDショップがそうだ。
その店は品揃えはさほど多くなく、ヒットチャートなどとは完全に無縁で日本人アーティストの曲はまったく置いていない。扱っているのは全て海外のアーティストで、しかもロック関係だけ。
当時は、まだiTunesなどはなかったし、Spotifyなどのストリーミングも当然なかった。音楽市場の状況は今よりはだいぶ違っていて街のCDショップもやっていけたとは思うが、もっと大きなCD店は他にあったし、通販はやっていなかったのにだいぶマニアックなラインナップだった。
そのお店にはいつ行っても、お客さんがいない。私はそこそこの常連だったので、行くとコーヒーを出してくれていろんな曲を聴かせてくれたのだが、1時間くらい居座っても他のお客さんが来ることはほとんどなかった。
だからといってこの例の場合、業者にCDを売っているわけでもなかった。
では、なぜ儲けが出ていたのか? というと、常連がまとめ買いをするから。私も行く度に何かしら買っていたし、店主の知識が豊富で次々と話をしてくれて、しかも試聴までさせてくれる。
「このバンドが好きならこんなバンドもいい」とか「これは昔、○○で……」とエピソードなども交えていろいろと教えてくれると、つい買ってしまうのである。
その店は、3.11の震災の影響で建物を取り壊すことになって、もう辞めてしまったが、固定客をうまく捕まえていた。あの店の場合、道楽半分だったかもしれないが……。
つぶれない、さびれたおもちゃ屋さん
学校や企業などの大口な取引がなくても、固定客がガッツリとお金を使ってくれなくても、それでもずっと続いている店もある。そうした店は、なぜつぶれないのだろうか?
例えば、私の実家のある街にあったあるおもちゃ屋さんがそうだった。今は店主が亡くなってしまい店もなくなってしまったのだが、明らかに売れてなさそうなのにお金をかけて店を改装してずっと続けていた。
ホコリをかぶった昔のおもちゃが並び、最新のおもちゃの扱いはほぼゼロ。お客さんもいなくて、まず売れていないだろうと思えるお店。途中、格闘ゲームのブームのときにゲーム機を置いたのをきったけに中高生がよく来るようになったものの、100円のゲームじゃ儲からない。
そのお店の場合は、どんな利益の仕組みがあったのだろうか?
実は、単に店主が土地をたくさん持っていて不動産収入で何とかしているだけ、というところのようだった。聞いた話なので、実際のところはどうか分からないが、店の収益は気にせず、道楽でやっているような状態だったのは確かだろう。中にはこんなケースもある。
実店舗では売れていないけど、実はネットで売れているというケースもあるが……
他に考えられるケースとしては、ネットで売っていて実店舗は儲けていないというケースだ。
実際、私の知り合いの文房具屋さんはネットショップをメインにして実店舗は閉じてしまった。ネットで相当な数を売っており、業者にも文房具をドカッと売るのでその利益もある。実店舗のある街は過疎化が進んでほとんど売れないなら開けておく必要もないというわけだ。
が、そうしたネットで売れるから実店舗はほぼ売れなくてもいいという例はそこまで多くないと思える。
というのも、店舗で売れない商品はネットでも売れないのが普通だからだ。
なぜか、ネットを使えば売れると思うケースが未だにあるのだが、そんなことはない。もちろん、売れない原因がネットを使って解消できれば、ネットでどんどん売れるだろう。でも、たいていの場合、売れない原因は販売手段の問題ではなくて、商品そのものや企画にあるのだ。
商品に魅力がなかったら、あるいは伝えられなかったら、ネットだろうと実店舗だろうと誰も買わない。インターネットは魔法の杖ではないので、商品が急に魅力的になるなんてことはないのだから。
あなたのビジネスに利益をもたらすお客さんはどこに?
ということで、なぜかつぶれないお店の裏にはちゃんと利益が上がる構造あるということだ。一部、道楽を除いて、ではあるが。また、利益調整の場合とか、その他、法律などが絡んできて結果としてプラスになるからというのもあるが。
今回の例でもあったように、ビジネスの利益を考えるにあたってはお客さんは事業者か一般消費者か、の大きく2つに分けられるという視点を持っていると考えやすい。
事業者に売る場合は、その事業者が事業用に必要としているもので、取引量が多く利益額が大きくなるのが普通。個人向けに売るのとは規模がだいぶ変わる。だから大きな利益を出そうと思ったら事業者向けを狙うのが合理的。
あなたがやっているビジネス、これからやろうとしているビジネスのお客さんも意外と表からは見えないところにいるかもしれない。
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彼岸の時期に墓参りに行こうと思い実家に帰った。 家で昼ご飯を食べ終わり、くつろいでいたところ、たまたま親戚のおじさんがやってきた(よくある架空の人物ではなく本当に親戚。叔父)。
お客さんがいないのに続いている店。そんな店を見たことはないだろうか?私の実家のある田舎ではそんな店がいくつかある。 その1つがラーメン屋。そのラーメン屋は、私が高校生の頃からあるところ。だが、そのときからお客さんが入っているのをほとんど見たことがないのだ。