なぜ、お客のいなそうな街のそば屋が潰れないのか?

お客さんがいないのに続いている店。そんな店を見たことはないだろうか?私の実家のある田舎ではそんな店がいくつかある。

その1つがラーメン屋。そのラーメン屋は、私が高校生の頃からあるところ。だが、そのときからお客さんが入っているのをほとんど見たことがないのだ。

車社会の田舎なのに駐車場がどこにあるかも分からないし、何といっても人通りがあるところでもない。以前は、近くに市役所があったので、もしかしたら市の職員が利用していたのかも、と思っていた。しかし、今は地震で市役所の建物がダメになってしまい、移転している。

それでもやっぱり店はある。なぜ、今も続いていけるんだろうか?

また、東京にはちょっと変わったそば屋さんがある。そば屋なのに早朝しか営業しないんだそうだ。しかも店の看板もなければ、のれんもない。

それでも、お金持ちの道楽というわけではなく、20年続いているそうだ。なんとも不思議なそば屋だが、実はこんな仕掛けになっていた。

早朝のみ営業で看板のないそば屋が20年儲かる理由

早朝のみ営業で看板のないそば屋が20年儲かる理由

そのお店は東京にあるそば屋さん。少し前にTVか何かで取り上げられたそうだが、のれんが出ておらず看板もない店で営業時間も特殊。なんと早朝営業だという。早朝からそばを食べる人もいるだろうけれども、何とも不思議だ。それでいて早20年も続けているとのだから不思議度合いはさらに高まる。どうやって収益を上げているのだろうか?

もちろん、お金持ちの道楽というわけではなく、そこには、儲けのカラクリがあった。

収益が上がる理由はお客さんにあり

その秘密はこうだ。

そのお店ではお客さんを明確に絞っていたのだ。お客さんとしてやってくるのはタクシーの運転手のみ。タクシーの運転手が勤務終了後にその店にやってくるんだそうだ。

のれんも看板も出していないので、初めての人はそこに店があることすら分からない。

だからお客さんは、ほぼ常連客だけ。よっぽどのことがない限り、紹介以外でお客さんはやってこない。

もともとは普通のそば屋さんだったらしいが、近くのタクシー会社に勤める運転手がたくさん来るようになり、やがてタクシー運転手に特化したそば屋、というより居酒屋になったそうだ。

そういうわけで、そのお店は完全にタクシー会社に依存した形にはなっているが、ずっとやっていけているというわけだ。以前書いた八百屋の儲けのカラクリのように、続けられるということは何かしら収益が上がる理由があるということ。

なぜ、客のいない小さな八百屋の経営がうまくいくのか?〜見えない利益〜| IDEASITY

ちなみに常連客ばかりということもあってか、店の人はお客さん一人一人の勤務シフトまで知っているんだそうだ。そこまでしっかりとお客さんのためにやっていたらずっと人気が続くのも納得できる。
 

利益を上げるポイント

ビジネスで利益を上げるポイント

利益を出す上でのポイントの1つは利益の源泉となる原資となる売上が上がること。そのためには、お客さんに価値を提供しているかどうかが大切になる。価値を感じないものにお金は支払われないので、当然と言えば当然なのだが、つい自分本意で考えてしまい、お客さんのことを考えなくなってしまうことがあるもの。なので、いつも意識しないと気がつくと道を外れることがある。

私自身、それで失敗したことは何度もあるので……。単に自分が愚かなだけなのだが、最初はいいのだけれど、だんだん“慣れ”が出てきて油断し始めてしまう。そうすると、どんどんお客さんの気持ちと自分たちのやっていることにズレが生まれる。だんだんとズレが大きくなっていくとそれが数字に現れてきて、さあ大変となって初心に返って取り組む……というように。

価値

さて、お客さんに価値を提供するとということで、“価値”と一言でいってしまっているが、価値は大きく2つに分けられる。これを知っているかどうかで価値の幅が広がる。いろんな分け方はあるとは思うが、実質価値と感情価値の2つに分けて考えるといい。

実質価値

実質価値は高品質であるとか、高機能であるとか、量が多いといった実質的な面での価値。実質価値を高めようと思ったら、その分コストが高くつくので、それが価格の上昇にもつながる。一般的にブランドがあって高価格にできるとか、スケールメリットを活かしてコスト削減したり、販売数で絶対額を確保するなどしないと、利益は出にくいものと思う。

感情価値

感情価値は、他では手に入らないとか、著名人も使っているという優越感、あなただけのもの、といった感情面での価値。先日、書いたスニーカーの話はまさに感情価値の典型例。

意外と巨大なスニーカーの転売市場、価格に関係なく収益を上げる人たちがいる意外と巨大なスニーカーの転売市場、価格に関係なく収益を上げる人たちがいる| IDEASITY

もちろん、上記のスニーカーのような希少価値以外でも感情価値は上がる。例えば、どういう思いでその商品やサービスを提供しているか、そのストーリーをお客さんに伝えることによって相手の感情を刺激し、価値を感じてもらえることがある。思いを語るのにコストはかからないし、他の商品やサービスとの違いもより明確になる。

発展途上国発のブランドをつくるという思いで事業を展開しているマザーハウスも創業者の山口絵理子さんに共感する人は感情価値が高くなる。マザーハウスとしては、あくまで店でパッと見たときに「これいい!」と思ってもらってブランドとして価値を感じたから買ってもらえることを目指しているわけだが、一部の人は山口絵理子さんに共感して、とか応援したくて買っているだろう。

マザーハウス山口絵理子さんの講演会まとめ| IDEASITY

個人がスモールビジネスをやるなら感情価値を重視する

私たちのように大きな資本でビジネスをやるのではなくて、リスクを抑えて小さくビジネスのやるのであれば、感情価値に注目したい。その理由は、実質価値を上げようと思うとコストがかかることが多くなるからだ。湯水のごとく資金があるなら別だが、資本が少ないのが普通だろうし。

感情価値はお金をかけなくても、やり方次第で工夫できる余地が大きく利益が出やすい。もちろん、不当に利益を上げるのは良くないが、利益を取るのが悪だと思ってしまう考えがあることも多いように思える。

当たり前だが、利益をとることは悪いことでも何でもない。しかし、お客さんの立場ならお金を払うのが当然で良いものには喜んでお金を払うはずなのに、自分が事業者になると急にダメになるケースはよく見かけるように思う。単に自信がなかったり、お金のマイナスイメージからか罪悪感を感じてしまうケースがほとんどだと思うが、利益を出すなんてとんでもないというのなら、自分が客なら事業者に利益が出る額のお金は払わない、ということになってしまう。

まとめ

ということで、お客がいなそうでも続いている店にはそれなりの理由があるもの。お客さんがお金を払うのは価値に対してであり、価値には実質価値と感情価値の2つの側面があるということ。(ちなみに私の実家の近くにあるラーメン屋が続いているのは謎のままだ……。)

なお、今回は価値について着目したが、お客さんを絞る、ポジショニングといった差別化の観点からも参考になる事例かと思える。

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