人工知能にすぐ取って代わられる仕事はこれ
IT EXPO2015に行ってきた。気になっていたのは人工知能の話。シンギュラリティや先日、SoftBank World2015にてペッパーの実演で初めて聞いたディープラーニングという言葉がキーワードとして自分の中にあったためだ。
話は、とても興味深く聞くことができた。現状の人工知能を見る限り、これから真っ先に取って代わられる職業がだいぶ絞られるように思えた。これは職がなくなって大変という側面もあるとは思うが、必要な職業をやる人が減っている中、人工知能が補ってくれる可能性があるということなので、人口減の日本にとってはプラスになるだろうと思える。
目次
人工知能は人間を超えるか
講演してくれたのは、東京大学大学院 工学系研究科 松尾豊准教授。人工知能は人間を超えるか ~ディープラーニングの先にあるもの〜というタイトルで40分ほどの時間で話をしてくれた。
話の中心は副題にあるとおり、ディープラーニング。個人的にはSoftBank World2015で初めて聞いた言葉。
孫さんがペッパーに話しかけたときに分からない言葉があると、ペッパーはその場でネットを使って調べて学習し、答えられるようになった。そのときは簡単な例ではあったが、要は、あらかじめ想定される全てのパターンを人間がプログラミングしておくのではなく、自分で学習できるような仕組をということで、それが分かったときは、なかなかの衝撃だった。
ディープラーニングと強化学習
ディープラーニングが注目されるまでは、人工知能のプログラムは、人間が事前に「Aならaをする」「Bならbをする」といった条件をプログラミングしていたが、それだとなかなか進歩がなかった。全てのパターンをプログラミングするなんて不可能なので、確かにそうそう発展はなさそうに思える
それを覆す形で、できるだけ多くのパターンをプログラミングするのではなく、目的を決めて、その目的を果たすために、今起こっている現象からいかにして学習していくか?という形でプログラミングしたところ、従来のやり方とは比べものにならないくらい良くなっていった。
ディープラーニングによって人工知能の通説とも言えることが覆った!?
モラベックのパラドックスというパラドックスが人工知能の分野にはあるそうだ。
モラベックは「コンピュータに知能テストを受けさせたりチェッカーをプレイさせたりするよりも、1歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しいか、あるいは不可能である」と記している。
というもの。
しかし、ディープラーニングによって、そうでもなくなってきたのだ。例えば、後述のとおり画像認識は人間を超えたといっていいレベルであり、ディープラーニングで学習してブロックの組立てができるようにもなっている。また、ゲームで高得点も取れるようになっている。いずれも子供がやるようなことだ。
人工知能の画像認識はすでに人間を超えた
この画像は単にアルパチーノで画像検索したときの様子をキャプチャしただけ
今回の話の中でインパクトのあったことは、人工知能が画像認識において人間を超えたという話。
人間が画像認識する際のエラー率は5.1%でMicrosoftは4.9%、Googleは4.8%のエラー率を実現したそうだ。この観点だけで人間を超えたと言っていいかは分からないが、2015年2月の時点でエラー率に関しては人間を超えたと言えるとのこと。
今もまだあるが、何かのサービスにログインする際に、人間であることを確認するために画像を入力してもらう仕組がある。残念ながらその仕組は、これからどんどん通用しなくなっていくのだろう。
この仕組は、もはや無意味になる
Googleでも、すでにキーワードから画像を検索するだけでなく、写真などの画像をキーにした検索ができるようになっている。
画像認識の向上によって変わる世界
ディープラーニングによって人工知能の画像認識は格段によくなったわけだが、その結果、医療やビジネス面などいろんな分野で変化が訪れようとしている。
画像認識で医療ミスを防ぐ
医療現場でも多くの画像をもとに病気や怪我の判断をしているが、医者の練度によって診断が異なる。経験の少ない医者は誤診しやすくなる可能性があるし、逆に経験が邪魔をしてしまうこともあり得るが、人工知能の画像認識率が高まれば、見落としが減る可能性は高まる。
顔認識でクレジットカードの支払いが可能に!?
高度な画像認識ができるようになったことで、それを応用しようとする動きがある。
マスターカードは顔認識で支払いを済ませられるようなカードを研究・開発しているそうだ。それが実現すれば、店に入って気に入ったものがあれば、現金はもちろんカードすらも持たずに決済ができてしまう。店を出たら課金するようにしたら、レジすらいらなくなる。
生体認証の不安
ただ、個人的には生体認証は間違いがあると否定できない可能性があって非常に怖いと思ってしまう。間違って生体情報のチェックでNGとなったらどう釈明したらいいのか?
スパイウェアを組み込んでいたLenovoや不正ソフトで排ガス規制を乗り切ったVWなどの不正を聞くと、一部ではあるにしても、とても信用できるとは思えない。そこまでの機能はいらないので、生体認証はやめてほしいなんて思ってしまう。便利だとは思うが、マイナスが大きすぎるとしか思えない。
だが、指紋認証はPCにもiPhoneにもあるので、段々と広がっていくんだろうなと思える。
人工知能によるゲーム攻略
単純な試行錯誤による学習の例として、ブロック崩しやインベーダー、単純なレースゲームでの学習していく様子を動画で見せてくれた。
どうしたらいいのか?という報酬の設定をするだけで、後は画像データから勝手に報酬をたくさん得られるように動いてどんどん学習していく。あらかじめここを狙うとか、こんなときはこうするみたいな形で事細かに人間が事前にプログラミングするということはしない。
人工知能によるブロック崩しの学習映像
最初は下手で話にならないが、だんだんと学習していき、端っこに穴を空けて裏側に回るようなことまで自分で学習してやるようになる。どんどん技能が上がっていく。人間を超えていくのは確実だろう。
人工知能によるスペースインベーダーの学習映像
こちらはFlashなので、スマホだと見られない人がいるかもしれないが、うまい具合に敵をやっつけている。PCでもFlashは敬遠されているので、見るにはワンステップ必要かと思う。
※どうでもいいけれど、講演では名古屋打ちをやるなんて話していたが、そこまではやれてないように思える。名古屋打ちは名前しか知らなかったので、調べてみたら一番下に敵が来ると弾にあたらなくなる仕様を利用するそうなのだが、そうはやっていないので。
まだ人工知能でできないこと
画像認識については人工知能が人間を超えたと言えるようだが、映像となると話は別。まだまだ人間には勝てない。あとは言葉から概念を認識することもまだまだできていない。
また、ディープラーニングでどんどん学習していくのは、あくまで単純に試行錯誤することで学習し、うまくなっていくケース。
なので、できないこともまだたくさんある。例えば、ゲームで言うなら記憶を伴うゲーム。例えば、アイテムを取って別なところで使うなどは、まだできないそうだ。
しかしながら、時間の問題とも言えるのではないかと思うので、今後、人間にできて人工知能にできないことがどんどんなくなっていくように思える。もし、全ての職が取って代われるとしたら、労働から解放されて幸せになるのか、暇になるのか。あるいは支配されるのか。制御不能になったらどうなるかなんて、予想できないだろう。
大人の人工知能と子供の人工知能
松尾氏によると、人工知能を大きく2つに分けて考えてることができるそうだ。1つは大人の人工知能、もう1つは子供の人工知能。
大人の人工知能
人間が裏で作り込んでいるケース。従来のプログラミングの延長のような形だろうか。これはこれで必要だろうけれども、用途がだいぶ限定されるように思える。
子供の人工知能
単純な試行錯誤によって学習していくようなケース。想定されるパターンをあらかじめプログラミングする従来のやり方では限界があるが、コンピュータが自ら学習していくディープラーニングならその限界を突破している。
人工知能によって真っ先に取って代わられる仕事、職
今までいろいろとディープラーニングに関して書いてきたが、自分にとってもそうだし、多くの人にとって気になるのが、人工知能が我々の「働く」ということにどう影響してくるのか?だろうと思える。
人工知能にもってこいの職
松尾氏の意見としては、建設、農業、食品加工の3種が子供の人工知能(ディープラーニング)に向いていることとしている。いずれも体を使った肉体労働で、やりたがる人があまりいない職業の1つ。
人口が減っていくにつれて担い手がより一層減っていく分野で、なくては困ることもある。そうした分野で人工知能が活躍すれば、人口減の社会でも、生産性を維持できるのかもしれない。
担い手不足の救世主
また、個人的には、ドライバーや飲食店、コンビニの店員など担い手が減っている分野でうまく活用できたらと思う。接客が人工知能だと味気ないが、コンビニに「おもてなし」を求める人はいないだろうと思う。
介護職にも人工知能が活躍できればいいが、温かみがなくなってしまい、どうかと思える。認知症だったらどうせ分からないんだから人工知能でもいい、なんてのも同じ。スッと割り切ることはできなそうだ。
気にしない人もいるとは思うので、オプションで価格を抑えた形にするなら人工知能、なんてことになるのだろうか。暴力を振るう輩よりはだいぶいいとはいえ、味気ない気はするが。
常識は変わっていく
ただ、昔は職人が作っていた物が今は工場で人工的に作られるようになっているケースはたくさんあるはず。我々はそれを問題なく手にしている。手作りは手作りで残り、人工的な物も混ざる。寿司だって回転寿司はロボット。高給寿司は職人。はじめはロボットの寿司なんてということがあったかもしれないが、今は受け入れられている。
常識は変わっていくので、自動販売機もあるし、機械音で「いらっしゃいませ」という仕組もあるわけで、人工知能の介護があってもいいように思える。
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From:@ksaito54 東京ビッグサイトのスタバより
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