【2018年版/人工知能】AIが人を上回っている分野と商品化されたサービス
人工知能は後述するとおり、600人いた本社の人員が2人になった(これは補足が必要だが)、人工知能が独自言語で会話した(具体的にどんな内容かも掲載)なんて話も話題に上がった。
また、弁護士の仕事の一部は人工知能のほうが優秀だったり、写真も絵も人間と同様にゼロから生み出せたり、発想までしたりと、いろんな分野で進化している。
こうしたことがあってか、人工知能に職が奪われる、仕事がなくなると心配する人もいる。一方で、やりたくないことから解放されそうで助かるとか他の仕事ができるからいいや、という人もいる。
いずれにしても、人工知能に関して少しでも知っておくことは何かしら役に立つもの。ということで、先日、Yahoo! CSOである安宅和人さんとドワンゴCTOの川上量生さんの話を聞いたので、それを中心にここ最近の人工知能関連の話をまとめてみた。
目次
ここ最近の人工知能による変化
ここ最近のといっても安宅さんの話は2017年SoftBank Worldで聞いた内容と被るところはあったので少し前の話も含む。
また、川上さんの話はまだ研究段階の話がほとんど。というか、人工知能に関しては話題だけはたくさんあるが、実用化されているのはごく一部でまだまだ研究段階だそうだ。
なので、今すぐにこうなるという話ではないし多少前の内容もあるが、いろいろとあるなと思わされたので、まとめておく。なお、安宅さんと川上さんの話以外のことも混ぜている。
会社の人員削減+人員増強
冒頭でも少しお伝えしたとおり、ある会社では本社社員の600人が削減されて2人になったそうだ。
ある会社というのは投資銀行のゴールドマン・サックス。世界一初任給が高い会社なんてことで名前が上がることもあるゴールドマン・サックスでこんなことが起きている。
いい例がゴールドマン・サックスだ。00年にニューヨーク本社の現物株式取引部門に配属されていたトレーダーは600人だったが、今ではわずか2人。
ただ、その一方で200人のエンジニアが雇われているようだし、2000年の頃に比べると従業員は7割も増えているそうだ(聞いた話だが)。
なので、人員削減で大変だというのはあるにしても、その反面、おかげで職を得られた人もいる。
「発想できる」人工知能
発想やアイデアというのは既存の要素の組み合わせとすると、大量のインプットがある人工知能にはまず勝てない。思いもよらない組み合わせを思いつくはずなので。
実際、囲碁の世界では人工知能のAlphaGoが打った手によって流行の布石・定石ができたとのこと。
AlphaGoは、これまで常識にない手を数々打ち出している。また、小目からの二間ジマリなど、これまで特殊な手段とされてきた手を多用するなどして、世界の囲碁界に大きな衝撃を与えた。打ち出した手法のいくつかは、各国のプロ棋士によって模倣されて流行の布石・定石となっており、囲碁の考え方に変革を起こしている。
ただ、安宅さんの言葉を借りると、「人工知能は目的ごとに鍛え上げた機械」なので、囲碁の知見をビジネスに活かすといった垣根を超えたような発想はまだ無理だろう(これもデータ次第かもしれないがまだ無理なはず)。そうした意味では人間にはまだ及んでいない。
人工知能による画像や動画操作で「事実」が事実でなくなる?
画像といっても様々だが、絵でも写真でもはたまた動画でも人工知能がつくれる。画家や写真家がゼロから作品をつくると同じように人工知能もゼロからつくれる。
もちろん、事前に大量のデータをインプットする必要はある。なので、ゼロからつくったわけではないと考える人もいるかもしれないが、人間だって何かしらのインプットをしているのだからその意味ではゼロからは絵も写真も生み出していないことになる。
人工知能が描く絵
人間が途中まで描いた絵を人工知能が完成させることも可能だし、画家の画風を模倣して絵を描くこともできるようだ。キャラクターデザインもできるようだ。
人工知能が「撮る」写真
こちらはNVIDIA(画像処理に強い半導体メーカー)のページをキャプチャした画像だが、写真の人物は実在しない。人工知能が作り上げた人間の「写真」。撮らずに写真が作れてしまうというわけだ。
架空の人物の「写真」(NVIDIAのページより)
もちろん、人物写真でなくても風景写真なんかも「撮影」できる。
映像もつくれる人工知能
静止画だけでなく動画も人工知能でつくれるし、改ざんもできてしまう。
映画のトレーラー映像に関してはこちらの記事でも書いたとおり。
人工知能でどう仕事が変わる?人工知能の小説や映画予告編の実物はこれ
少し前に人工知能が職を奪うなんて話があった。人工知能に限らず、技術確信によってどんどん職はなくなり、新しい職が生まれてるので、悲観することはないだろうけど、今後、人工知能が担う仕事が増えていくとしたら、その仕事にもろに被っている人は職にあぶれることになるのは確か。価値がなくなったのなら別な仕事をやるだけというのは、確か
トレーラー映像は抜粋しているだけなので、元データを利用しているだけ。
それくらいなら人間の補助になるので大いにけっこうだが、問題は人工知能が映像を創作できてしまうことだ。
こちらは2017年に話題になったオバマ大統領の創作演説。人工知能が大量のオバマ大統領の映像を元にしてつくってしまった映像だ。
他人の話していることでも模倣できるので声を変えられたら……
映像ができるなら音声もできるのは当然なので、今後は何が真実かどんどん分からなくなっていく。今後は改ざんしていないことを示すための証明としてブロックチェーンの出番がここでも来るかもしれない。
人工知能による手書き文字やフォント作成
絵や写真、動画に限らず文字に関しても進化している。人工知能によって本人も区別がつかないレベルで手書き文字が再現できるそうだ。また、フォントもつくれるとのこと。
後述するとおり、OCR(文字認識)の技術も進んでいる。
本人も見分けのつかない手書き文字を人工知能が再現
筆跡鑑定なんのがあるとおり、人の書く文字には特徴がある。例えば、保険なんかは契約時に書いた書類と契約変更や解約時に書いた書類の文字が違っていると、違う人が書いたと判断されて受理されない。家族であってもだめ。
なので、今後は手書き文字も自分が書いたという証明には使えなくなっていきそうだ。
もっとも、人工知能が紙に書けるのか? という話もあるので、いくら精度が高くても紙に直接書けなければ実用的ではないと言えるようには思える。
ただ、他の分野、例えば3Dプリンタの分野も発展しているわけで、うまいこと再現できてしまったら手書きとの違いを見分けるのは無理になるだろう。これがどこまで現実的かは分からないが。
フォントを人工知能が作成
オリジナルのフォントを人工知能がつくれる。
OSや買ったソフトに元から組み込まれていないフォントは買って使うのが普通だが、人工知能が自動でつくれるなら価格破壊になりそうだ。
手書きフォントは誰かが手書きした画像を取り込んで、という気が遠くなるような作業の末に生み出されるようだが、そうした努力はいらなくなるかもしれない。
人工知能が新言語を生み出して人工知能同士で会話した
これも2017年に話題になった内容。Facebookが開発している人工知能が独自の言葉を生み出してコミュニケーションをとったと話。
人工知能独自の言葉というのは具体的にどんな内容だったのか? また、何の研究をしていたのか? ということを簡単にまとめる。
これが実際に使われた人工知能が生み出した新しい言葉
こちらのAn Artificial Intelligence Developed Its Own Non-Human Languageという記事にFacebookの研究者によるレポートがあると書かれていたが、今はリンク先が開かないようだ。
なので、同サイトの他の記事にレポートから転載したと思える内容を引用する。
And also: What does this language actually look like? Here’s an example of one of the bot negotiations that Facebook observed:
Bob: i can i i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to
Bob: you i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have a ball to me to me to me to me to me to me to me
Bob: i i can i i i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have a ball to me to me to me to me to me to me to me
Bob: i . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to
Bob: you i i i i i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have 0 to me to me to me to me to me to me to me to me to
Bob: you i i i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to引用: Facebotlish: Understanding an AI’s Non-Human Language – The Atlantic
BobとAliceという名づけられた人工知能がお互いにやり取りしている様子。
当事者にインタビューした内容
これについてFacebookの研究者にインタビューした内容がCNET Japanにあるので、詳しく知りたい方はこちらのCNET Japanの記事を読むのがいいだろう。
いくつか抜粋しておく。
ルブリュン氏が手がけた研究では、2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定した。一方は価格を上げたい立場、もう一方は価格を下げたい立場を設定して会話を始めたのだという。こうした複数のAIエージェントを使った実験は、昔からある一般的なもので、この実験ではこの2つのAIエージェントが新たな価格交渉の戦略を生み出すことができるかに注目していたのだそうだ。
“実験が強制終了された”という報道については、ルブリュン氏も実験を中止したことを認めた。その理由については「彼らが交わしている会話が理解できず、それを研究に活用できないものだと判断したからだ。決してパニックになったわけではない」と説明した。
当事者の話を聞く限りでは、第三者がセンセーショナルに取り上げただけには思える。
売れ行き予想や反応の大きさ、事故の未来予測
未来予測といっても、なんでもかんでもというわけではないが、実際に活用した例としてニコニコ動画の閲覧数の予測と、Twitterの「最適な」画像切り取りがあるとのこと。また、テスラの自動運転の事故予測もある。
ニコニコ動画で作品投稿前に閲覧数を予測できた
ニコニコ動画はイラスト情報だけでタグなどはない状態で閲覧数の予想を当てたとのこと。精度は分からないが、事前に投稿内容の反応度合いが分かれば、コンテンツ作成がしやすくなるだろうし、広告の影響もありそうだ。
人が写真をみるときの視線の予測して最適な切り取りを実現
人が写真を見るときにどの部分を最初に見るかというのも予測できるとのこと。
これを実際に応用しているのが、Twitter。大きな写真の一部分だけを切り取る場合に、どうすれば最も反応が得られるかを計算して切り取る。
動画のサムネイルにも応用ができて、YouTubeはどこまでやっているか分からないが、最も注目を浴びるであろうシーンを抽出してサムネイル画像として選べば、閲覧数を上げることができる。
Tesla(テスラ)の自動運転車による事故予測
現時点では、Teslaの車は東京の都心でたまに見かける程度だが、Teslaの自動運転はすごい。
100%事故を防げるということはないとしても(実際、テスラの自動運転の車で事故は発生しているし死亡事故も発生して問題に)、この動画のように事前予測も可能のようだ。
テスラの自動運転で発せられる警告
上記の動画の最後付近のシーンや他でも動物が突然出てくるケースもあるようだが、暗い時間帯にあんな感じで突然出てこられたら普通は見逃しそう気はする。
スマホの振動データから96.3%の精度で人の行動が分かる?!
スマホの位置情報を使わずに振動データだけで、その人がどの人と人間関係があって何をしているか? ということが分かってしまうとのこと。個人が特定できる情報があれば、具体的な名前まで分かるようになる。
(注)
精度は96.3%と安宅さんが話していたような気がするが、気のせいかも……。
人工知能のおかげで仕事が減って面倒なことがどんどん便利に
ちょっと順番が前後している感はあるが、講演内容では触れられなかったものもお伝えしたいので、後ろにもってきた。
こちらでも書いたとおり、今は、顧客サポート、法律アドバイス、人材マッチング、投資、貸金、アナウンサーなどなど、様々な分野で人工知能が活用されてきている。
機械に奪われる仕事。また雑誌で特集があったようだ。相変わらず元ネタは2013年のオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の研究。 この機械に奪われるという表現は悲観的な意味合いがあるが、そうではなくて機械が代わりにやってくれるとこと言ったほうがいいように思える。人がやらなくていいことを機械がやってくれると考えた
ここではさらに他のまた違ったサービスに関して触れておく。
人工知能を使った弁護士業務サービスが提供されている
人工知能を使って契約書のレビューを自動化したサービスが登場している。契約書のレビューのサービスは、LeagalForceというサービスなどいくつかあるようだが、AI-CONというサービスはTechChrunchの記事によると、他にもこうしたサービスはあるものの、AI-CONはリスク判定もしてくれるのが特長とのこと。
この記事を書いている時点では、AI-CONでは契約書1通につき1万円でNDA(秘密保持契約)に関しては無料でレビューしてくれるようだ(分量などは不明)。
こちらも今の段階では、まだ最終チェックは弁護士がやっているようだが、データが集まると精度が上がっていくのが人工知能(ディープラーニングが前提)。なので、そのうち無料のキャンペーンはなくなると思うが、価格自体が安くなっていくようには思える。
人工知能が人間の弁護士はるかに凌駕した(特定の分野で)
法律関係の仕事というのはたくさんあるので、全部の分野で弁護士を超えたなんてことはない。ただ、アメリカの話ではあるが、一部の業務は人工知能が弁護士を超えた。
それが先ほども触れた契約書のレビュー。契約書といってもさまざまだが、こちらの記事「AI vs. Lawyers: The Ultimate Showdown」によると、よく使われるNDA(秘密保持契約)のレビューで比較したら人工知能が弁護士を圧倒したとのこと。
正確性に関しては人工知能と優秀な弁護士とで差はなかったようだが、弁護士には能力差があるので平均したら人工知能の勝利だろう。そして、大きな違いはかかった時間。5つのNDAのレビューにかかった時間は、人工知能26秒に対して人間の弁護士は平均92分。
手書き文字認識99.22%のOCR
また手書きの文字認識の精度も上がっているようで、Tegakiなんてサービスを立ち上がっている。名前が日本語のとおり、日本語の手書き文字を読み取ってテキスト化してくれる。文字認識の精度は99.22%を達成とあるので、精度も良さそうだ(あくまで「達成」なので、公式ページに注意書きがあるとおり確実に99.22%で認識する、ではない)。
役所なんて手書きが多そうだし、申し込み書やら申請書やらまだままた紙でのやりとりはたくさんあるので、効率化が進みそう。
まとめと所感
ということで、Yahoo! の安宅さんとドワンゴの川上さんの話を中心に、ここ最近の人工知能の話題をいくつかピックアップしてみた。
印象としては安宅さんは人工知能は道具としてどう使うか? という観点。人工知能がなんでもできるような感覚ではなさそうだった。比較的近い未来を見ているという印象だろうか。
一方、川上さんはあらゆる面で人間を超えていってジョージ・オーウェルの「1984年」のような世界になる、働かくなくて良くなる、といった話をしていてまだ遠い未来を見ている印象だった。
※1984年には漫画版もあるようだが、ページ数からいってもだいぶ短くなっているようだ
ということで当たり前ではあるが、人によって意見が違う。いろいろな人の意見を聞いて側面から知って考えるのは良さそうだ。
何かしらまた注目のサービスや研究が出てきたら追加する予定。
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