競合が自社を宣伝せざるを得ない“えげつない広告”
ビジネスはアイデア次第でいかようにもなる可能性を秘めている。
今回のアイデアも秀逸といいたいところだけれど、ちょっと非人道的なので、絶賛はできないかなとは思う。ただ、ライバルがいるから自分のビジネスはダメだとか、新しく立ち上げても売れないとか、そうしたできない理由が思い浮かんでしまう人には良いアイデアといえるかもしれない。
ちょっと人としてどうかと思う内容ではあるが、よく考え、そして実行したものだなと思える。
目次
強制的にライバルに自社を宣伝させる方法
競合他社というはどんな業界にもほぼ例外なくいるもの。複数の会社が1つの市場でパイを取り合っているわけだ。
そして、少しでも他社に勝とうといろんな工夫をしているのが普通。
そんな中、気がついたらライバルのことを大々的に自分が宣伝してしまっている……なんてことになったらどうだろうか?反対にライバルが自社を宣伝してくれているとなったら?
しかも、宣伝しようと思ってではなく、サービスを提供しようと思ったら宣伝せざるを得ないような状況下に置かれての話だ。
動画のとおり、ドイツの物流会社、DHLがやったのは自分たちの宣伝コピーを書いた箱をUPSやTNTといった他のライバル企業に運ばせること。しかも、最初は広告が見えないように細工をしておいて、後になって分かるような仕掛けをして。
よく考えたなとは思うけれども、これをやってしまうのはちょっとどうなんだ……?というのはある。アメリカのバーガーキングはマクドナルドを標的にいろいろとやるし、ペプシコーラもコカコーラを敵に回すので、そんなものかもしれないけれども。
ライバルを蹴落とすのではなく迎え入れる会社
一方でAUDIはポルシェに対してこんな粋な計らいをしている。AUDIもポルシェもドイツだけれども、今度は粋な計らいをしている。
これだけ見ても分からないかもしれないが、背景はこうだ。
ポルシェはル・マン24時間という1923年から開催されている歴史あるレースの最多優勝を誇っているのだが、1999年以来ずっと出場をしていなかった。2014年になり、ル・マンの復帰が決まったときに歴代2位の優勝回数となっているライバルのAUDIがこうしたパフォーマンスを行なったという話。
敵を排除するのではなく、歓迎するという姿勢は見ていてすがすがしい。
ライバルと信頼し合う会社
こちらは日本の話。かつて任天堂がバンダイの権利を侵害してしまったことがあったそうだ。そのときのエピソードがとても印象的。
任天堂がバンダイの権利を過って侵害したことがあったという。
おわびにきた山内さんが「こちらが一方的に悪かった」と言い、金額が入っていない小切手を差し出したという。
バンダイ側は「0」と書いて返した。「商売とは人と人との信頼関係で成り立っている」という哲学として、バンダイに今も伝わっているという。2013年9月20日の朝日新聞より
競合だからといって、互いに足を引っ張りあっても仕方がないわけだし、足の引っ張り合いをしたところで、お客さんの価値が増えるとはとうてい思えない。
そうではなくて、ライバルを切磋琢磨する仲間してとよりお客さんに提供できる価値を高めようとする姿勢は成長にもつながるだろうし、お客さんのためにもなるだろうと思える。
セブンイレブンを長年育ててきた鈴木敏文さんにこんな言葉がある。
売り手はとかく、『競争相手に負けない商品をつくる』といった発想をしてしまいがちです。しかし、それを買う顧客にとっては、何の意味もありません。鈴木敏文
競合ばかり見て、本当に見るべきところを間違えてしまうと、転落しかねない。
まとめ
ということで、大手の話ではあるものの、ライバルがいるからといってマイナスだけではないよ、という話。DHLのはどうかと思う面はあるけれども、考え方次第でライバルと何かできることだってある。競合しつつ協業することは可能なので。
ライバルを蹴落とすことを考えるより、他とは違った価値を提供する、より良い価値を提供する、といった視点を常に持ちたいもの。