売上1.4倍!商品や特典の選択肢を最適化するマーケティング方法

売上1.4倍!商品や特典の選択肢を最適化するマーケティング方法

我々人間は不合理と思えるようなこと、ちょっと考えたら分かるはずなのに、ある選択肢の中からなぜか価値が低いと思えるものを選んでしまう、なんてことが起こる。

そうしたことを知っておくと、自分の行動を合理的にするためにも役立つし、起業したり、ビジネスを回していく中でも役立たせることができる。

ということで、ある興味深い実験と、それをどう応用するか?というところまで事例とともにお伝えしたい。

なぜ、不合理な選択をするのか?

バリーシュワルツという心理学者(社会行動学)が行なった「選択」に関する何とも面白い実験結果がある。

なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴(バリーシュワルツ著、瑞穂のりこ翻訳、武田ランダムハウスジャパン、2004年)という本書かれている内容だ。

1.5ドルか2ドル相当のボールペンならどちらが選ばれる?

行なわれた実験はこう。

被験者は、アンケートに答えたら謝礼として1.5ドルが支払われると約束された。アンケート終了後に、1.5ドルの代わりに2ドル相当のボールペンを選ぶこともできる。その結果、どのくらいの人がボールペンを選んだだろうか?

あなただったらどうするだろうか? ボールペンはたくさんあるから1.5ドルがいいという人もいるだろうし、2ドル相当ならボールペンのほうが特だということで、ボールペンを選ぶ人もいるだろう。

実験では、75%の人がボールペンを選んだという結果になった。

ペンの選択肢を増やすと不思議な現象が起こる

そして、もう1つの実験も行なわれた。実はその実験結果がちょっと奇妙な結果となる。

今度の実験でも同様に、被験者はアンケートに答えてくれたら、謝礼として1.5ドルか2ドル相当のボールペンを選べるようにしたのだが、今度は、安いサインペン2本(定価2ドル相当)を選ぶことができるようにした。

つまり、アンケートに答えた結果、もらえるのはこうなる。

  • 1.5ドルの現金
  • 2ドル相当のボールペン
  • 2ドル相当サインペン

これで結果はどうなったと思うだろうか?
 
結果は、どちらかのペンを選んだ人は半数にも満たなかった。1.5ドルの現金と2ドルのボールペンではボールペンを選ぶ人が75%にもなったのに、なぜ、2ドル相当のサインペンが増えただけで、現金を選ぶ人が多くなったのだろうか? 先ほどの傾向からはペンをもらう人の割合は変わらなそうに思えるはずなのに。

実験結果からの考察はこうだ。どちらのペンを選ぶか判断に迷いが生じて決めるのに支障が出たため、楽に判断できる現金が選ばれたのである。

妨害効果と誘因効果

それをもう少し研究した人がいる。経済は感情で動く(マリオ・モッテルリーニ著、泉典子翻訳、紀伊國屋書店、2008年)によると、エリダー・シェイファーと彼のプリンストン大学のグループが調査したそうだ。

それで分かったのは、2つの選択肢の一方とよく似た選択肢が追加された場合、異なる選択肢が選ばれやすくなる。先の例のように1.5ドルの現金と2ドル相当のボールペン、2ドル相当のサインペンなら1.5ドルの現金が選ばれやすくなる。

一方、明らかに劣っていることが分かる選択肢が増えた場合、例えば、1.5ドルの現金、2ドル相当のボールペン、0.3ドルくらいの使い捨てのようなボールペンという3つの選択肢になった場合には、2ドル相当のボールペンが選ばれやすくなる。

つまり、加わる選択肢によって類似の選択肢が妨害されたり、誘引されたりするわけだ。

他の事例はこちら。おとり効果なんて言われることもある。
100円→98円は意味がある?実験から分かる価格に潜む心理学| IDEASITY
カメラ販売の事例や価格の設定の心理効果


選択肢が多すぎると選ばれなくなる

他にも、選択肢があり過ぎて判断が難しくなって売れない、なんてこともある。詳細はこちら。
マーケティングに使える「ジャムの法則」に惑わされてはいけない選択肢の考察

商品やサービスの販売に直結させた例

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版(ダン・アリエリー著、熊谷淳子翻訳、早川書房、2010年)など、いろいろな場面で見かけるのが、経済誌のエコノミストがやったことだ。

ある日、著者のダン・アリエリーはインターネットでいろんなページを見ていたところ、経済誌エコノミストのサイトに行き着いた。そこでこんな広告があったそうだ。

  • エコノミストWeb版の購読 59ドル
  • エコノミスト印刷版の購読み 125ドル
  • エコノミスト印刷版、及びWeb版の購読 125ドル

こうなると、どの選択肢が最も選ばれやすくなるだろうか? 答えはすぐに予想できそうだが、3つめを選ぶ人が多くなる。

選択肢の違いで売上が1.4倍に!

それを実験したところ、実際にけっこうな差がついたそうだ。

先ほどの3つの選択肢の効果を確認するために、大学院生に次の2つを提示した。

選択肢1
1つは次の2つの選択肢。

  • エコノミストWeb版の購読 59ドル
  • エコノミスト印刷版の購読み 125ドル

選択肢2
もう1つは、先ほどと同じくこうだ。

  • エコノミストWeb版の購読 59ドル
  • エコノミスト印刷版の購読 125ドル
  • エコノミスト印刷版、及びWeb版の購読 125ドル

さて、結果はどうなったか?

前者の2つの選択肢の場合、Web版を選んだのが68人、印刷版を選んだのが32人だった。売上に換算すると8,012ドルとなる。

後者の3つの選択肢の場合はどうだろうか? Web版のみを選んだのが16人、印刷版のみを選んだ人は0人、残りの84人はWebと印刷の両方を選んだ。売上に換算すると、11,444ドルとなる。

実に売上で1.4倍もの差が生じた。Web版のコストがそこまでかかるとは思えないので、利益を考えてもまず増益だろう。

とはいえ、あくまで実験の話なので、実際のビジネスの現場でキレイに同じにようになるとは限らない。実験の詳細は分からないが、実験なら100人に選ばせたら全員がどれかを選ぶとは思うが、実際にこの広告を出したところで、買わずに去る人はたくさんいる。

ただ、実験結果は統計的に有意な差があると判断された結果ではあるということは確かのようだし、直感的にも前者のほうが良さそうには思えるだろう(直感的なのは、不合理になることはあるけれど……)。

価格表記の違いで売上が増減

ちなみにこちらの脳科学マーケティング100の心理技術という本もお勧めで、何かと面白い例が多い。例えば、次の3つの料金表示うち、

  1. ¥記号をつけた数字で表示:¥1,200
  2. ¥記号をつけない数字表示:1200
  3. 文字で説明:千二百円

どれが最も売れたのか? などいろいろと書かれている。本の内容の詳細は下の画像をクリックorタップ。

ちなみに、上記の中では、¥記号をつけずに、1200とした場合が最も売れたようだ。

この実験に関連したビジネスでよくやってしまうミス

以上の実験から分かるのは、どれだけ判断力を要するか?ということが鍵になるということかなと思える。分かりにくいものは選ばれないとも考えられるだろう。

ビジネスを提供する側がやってしまいがちなのは、自分たちでは分かるだろう、このくらいなら面倒ではないだろうと思ってやったことが、お客さんにとっては分りにくい、面倒だと感じてしまうこと。

例えば、こんなことが先日あった。

スーパーに行って買物をしたら会計後にカードをもらった。期間限定のキャンペーンを始めるようで、特定の日に来店するとスタンプがもらえて、縦横斜めに3つそろうとビンゴゲームのように特典がもらえるというもの。アイデアとしては面白いなとは思える。お客さんを巻き込むこともできるとは思う。

が、私がとった行動はこうだ。いちいちそのために来店日を考えるなんて面倒なので、邪魔だからいいやと思って捨ててしまった……。期間中に来店すると、ランダムでポイントが2倍や3倍になるなんてやり方なら、来店日を気にしなくていいので、持っていたかもしれない。

もちろん、私の主観なので実際にやったら効果が絶大なのかもしれない。ここでお伝えしたいのは、自分にとっては分りにくい、面倒だなと思えた体験があったので、自分が思っているほど、お客さんに分りやすいとは思ってもらえないことがあるんだという話。

まとめ

ということで、あなたが商品やサービスを販売する上で大切なのは、余計な葛藤が生まれないような形で販売した方が得策ということ。あまりにも似たようなのが多いと選択に迷いが生じて売れないことはある。

31アイスクリームは?なんて思うかもしれないが、あれはたいていが買う前提で店に入っているので、おそらく買わないというところまでは至らないものと思う。スターバックスに入ってカウンターまで行ってメニューを選んでいて、やっぱやめます、なんて人はまずいないのと同じようなものかなと。

二者択一でどちらかに迷ってしまうようなことにならないように選択肢を1つ増やして誘導させることも可能。

ここで大切なのは、テクニックをどう使うかはその人次第だということだろうなと思える。売りたいものを利益のために誘導することもできるだろうけれども、その人にとって本当に必要なものを届けるために使うこともできる。

包丁をどう使うかと似ている側面があるかなと思える。料理に使って人のために価値を提供するか、強盗に使うかは在り方次第だろうから。

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