捨てないパン屋さんから分かるビジネスに必要な3つの要素

捨てないパン屋さんから分かるビジネスに必要な3つの要素

捨てないパン屋。先日、ネット上で見かけたパン屋さん。無駄が嫌いな自分としてはとても素晴らしい取り組みだと思えた。そしてなにより、その発想と行動力が素晴らしい。

自分でビジネスをやりたい、好きなこと、情熱持てることをビジネスにしていきたいという人にはピッタリの話に思える。

研修で海外に行ったら衝撃……

そのパン屋さんは、今でこそ捨てないパン屋として経営しているが、以前はそんなことはなかったそうだ。売上は今よりもあったそうだが、一所懸命に働いてたくさん作ってたくさん売っても現金は手元に残らなかった。

一所懸命に働いてくれているスタッフにはきっちり報酬も出したいので、たくさん売るためにたくさんパンをつくっていたが、売れるときはよくても売れ残りがたくさん出ることも。たいていのパン屋さんがそうなんじゃないかと思う(パン屋に限らず他の店でも)。

そんなときに、研修でオーストリアに行ったところ、転機があった。

なんと、朝、職場に行ってパンをつくって昼には仕事が終わってしまったそうだ。その間、わずか4時間。しかし、日本のどのパンよりもおいしいパン。一所懸命に長時間働いて働いてようやく作ったパンよりもわずか4時間でつくったパンのほうが断然おいしいという事実。

なぜ、そんなことが起きていたのか? その答えは素材にあった。

手をかけてB級の材料を使うよりも、手を抜いて最高級の材料を使うほうが断然おいしいということ。さらに、時間も手間もかからないので作るのも楽なうえに、人件費を考えたら値段も安い。

“手を抜いたら”売れ残りがなくなり破棄がなくなった

帰国して自分の店で同じことをためしてみた。扱うパンの種類をかなり減らして、最良の材料を使った。おかげで材料費は倍以上になったが、手間暇かけて人手をかけて作るよりもはるかに安く作れた。

すると、こんな結果に。

  • 作る側は種類を減らして手間を減らして楽につくれる
  • お客さんはより良い材料で作られたおいしいパンを安く食べられる
  • 破棄されるパンはなくなり、無駄がなくなる

材料ひとつ変えたことをきっかけにここまで変わるとはすごいこと。

大切なポイント

このパン屋さんの事例をもとに思ったのは、次の3点が大切なポイントとしてあるだろうということ。

  1. ボトルネックが全てを決める
  2. “1億人に嫌われても1000人に好かれればいい”
  3. 情熱あるストーリー

ボトルネックが全てを決める

手抜きせずに一所懸命、手間暇かけて時間をかけるからこそ良いものができる。こう思う人は特に日本人には多いように思えるのだがどうだろうか。職人気質な人は特にそんな気がする。自分自身がそうなので……。

しかし、残念ながら手間暇かけたからといって必ずしも良いものができるとは限らない。一番の障害となっている原因に直接アプローチしなければ、意味をなさいからだ。鎖のようなもので、いくら強力な輪っかを用意しても、たった1つ輪っかが弱ければ、そこから鎖は簡単に切れてしまう。最も弱い輪っかを強化しない限り、他をどんなに強くしても強度に影響は出ない。

加えて、分かっていてもなかなか抜け出せないものなので、よく抜け出せたなとも思える。それだけ苦しかったんだろうなと推察できる。苦しいときこそ、一人で考え込まずに外を見る必要があるのかもしれない。

1億人に嫌われても1000人に好かれればいい

現在、そのパン屋さんでは定期購入者が100人くらいいるらしいが、以下のとても素晴らしいことを書いている。

ということは、
一億人に嫌われても、
1000人のお客様の為に全力でいいもの焼けば、
暮らしていける時代が、
もう来ています。
買う方も売る方もそれでいいと思います。

マスコミの時代も終わり、
みんなが一緒の時代ではなくなったのですから。

捨てないパン屋を目指すには、
ありがたい時代です。

引用:旅するパン屋&deRien blog

誰にでも売りたい、誰にでも支持されたい——。

特にスモールビジネスにおいては規模が小さい分、対象顧客(「ターゲット」という言い方をよくされるが、なんか狩りの標的みたいで気持ち悪い気がするのであえて使わない)を絞るのは鉄則。ペルソナといって一人のお客さんを細かく想定することもよくある。

そうしないとぼやんとして刺さらないので、自分事としてとらえられず売れないのが一般的。例えば、もし仮に人間のあらゆる症状に効果がある特殊な水があったとする(だいぶ怪しいが……)。その水を売るのに、何でも効きます! と言ってもそうは売れない。そもそも怪しいというのはあるが、具体的でないので引っかからないわけだ。もっと具体的に訴求しないと買ってもらうのは難しい。

あなたに関心のない人もいれば、あなたに関心のある人もいる。また、あなたには与えられない価値もあるかもしれないが、あなたにしか与えられない価値もある。

情熱あるストーリー

思いや情熱なんてなくたってビジネスはできる。これは間違いのない事実。楽しいからやっている人もいるだろうし、稼ぐのが好き、結果を出すのが好き、仕組みをつくるのが好きなど動機は様々。

情熱がない分、すぐにやめてしまったり、続けられなかっかりするケースもありそうだが、ビジネスは目的に合わせてやったっていいわけで、続かなくちゃダメなんてことはない。期間限定でやることだってあるわけだし。

ただ、思いや情熱がなくてもビジネスはできる——確かにそれは真実だけれども、本当に成果の出るビジネスや永続するビジネスは情熱は必要不可かなと思える。

なんといっても、思いや情熱がなかったら今回のパン屋さんのようなストーリーは生み出せない。人の心を動かして共感を得る、応援したくなる人、ファンになってくれる人が増えるような心揺さぶられるストーリーを紡ぐことは不可能だろう。

それにやっていて楽しいし、充実している。どうせ時間(=命)を使うのなら、情熱を注げることをやるのがいいだろう。何だか書いている自分までよく分からないワクワク感が出てきた(笑)

自分の情熱、好きなことが分からない……

とはいえ、自分の情熱が何だか分からない……という人がいるのも事実。自分自身、情熱持ってやれることは分かってはいるつもりだが、数年前まで何をしたいのかよく分からなかった。

というより、気付いていなかったといったほうが正確に思える。マザーハウスの山口絵理子さんが言うように、いろいろと何年もやっていったらだんだんと見えてきた。

なので、もし、「1日であなたの好きなこと、情熱が分かります!」みたいなのがあったとしたら、個人の経験からは本当に? と思ってしまう。そういうのに参加したこともあって、しっかりと取り組んだつもりでもすぐには見つからなかった自分としては経験上、それで分かる! と期待するのはお勧めはしない。

きっかけにはなると思うので無駄とは思わないが、これで見つかる! といった期待はしないほうがいいと思う。

自分がダメなだけかもしれないが、今までずっと分からなかったことが一瞬にしてパッと分かって迷いなく進めると考えるのはどうだろうか? 一過性で終わってしまって、また迷うこうとになるように思える。焦らず一歩一歩、着実に進んでいったほうが確実かなとは思える。

まとめ

ということで、捨てないパン屋さんというのが個人的にとても良い話だなと思えたので、それをもとに書いてみた。

広島のパン屋さんなので、東京に住んでいる自分にとってはちょっと行きにくい。ということで、通販で買ってみようかなと思った。

今回の内容は、捨てないパン屋2「手を抜く」|旅するパン屋&dRien blogという記事が元となっているので、是非、読んでいただければと思う。きっとパンが買いたくなるだろう。部外者がこうして勝手に応援してしまうのだから、すごいこと。

買ったら追記する予定。

追記(注文したら……)

※追記(2016年2月9日)さっそくネットから注文してみたら、注文がたくさん来ていて3〜4ヶ月待ちだそうだ。すごい人気だ。ということで、気長に待つことにした。

追記(届いた!)

※追記(2016年3月26日)3〜4ヶ月待ちとのことだったが、そこまで待たずして届いた。生産体制が良くなったのか、発送の頻度が上がって早く届けられるという連絡があったのだ。どんなものか箱を開けてみると……。

捨てないパン屋さんのパンが届いた

こんな感じだった。1週間くらい持つようで徐々に風味が変わるそうだ。そんなことは知らずに初日からガンガン食べてしまい、すでに半分はなくなってしまった……。残りは香りを楽しみながら食べようと思う。

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