売れる売り方・売れない売り方、成功する考え・失敗する考え
商品やサービスというのは、売り方次第で大きく変わる。例えば、7つの習慣という本。2015年の6月現在、世界で2000万部、日本で180万部を超える大ベストセラーの本だが、なんと日本では一度絶版になっている。
7つの習慣の翻訳者として名を連ねているジェームス・スキナー氏が中心となって、日本で7つの習慣を広める活動をした結果、紆余曲折を経て大ベストセラーとなっている(ジェームスさんの講演会で話を聞いたところ、たまたま結婚式の披露宴で席が一緒になった人がリクルートの人で、その人と組んだのが大きいようだ)。
さて、あなたも何かを販売しようとしているとしよう。例えば、ひょんなことから鉛筆を売ることになったとする。何の変哲もない普通の鉛筆だ。今日からあなたはそれを販売しないといけないと仮定しよう。
あなたならどうやって売るだろうか?
目次
寅さんのワンシーンから販売を学ぶ
ある2人の男の例を、こちらの「映画のセリフで気づくビジネス成功のヒント~第5回」から引用をしよう。
「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」(山田洋次監督 1994年)のワンシーンだ。
そのシーンは、映画のはじまりのころにあります。
映画がはじまって20分くらいたったところです。
久々に柴又に帰ってきた寅次郎はその晩、甥の満男(吉岡秀隆)の話題で盛り上がる。満男は大学を卒業後仕方なく入社した靴会社の営業の仕事をしている。
半年が過ぎた満男は、靴のセールスに嫌気がさし家族に愚痴をもらしていた。それを聞いた寅さん、近くにあった鉛筆を2本満男に差出し
「オレに売ってみな」
と言う。
満男はしぶしぶ、寅さんに売ってみる。
満男: 「おじさん、この鉛筆買ってください。ほら、消しゴムつきですよ」
寅さん:「いりませんよ。ボクは字書かないし
そんなものは全然必要ありません! 以上!」満男: 「あ・・・そうですか・・・」
寅さん:「そうです!」
満男: 「・・・」
寅さん:「どうしました? それだけですか?」
満男: 「だって、こんな鉛筆売りようないじゃない・・・」
まったく売れない満男に寅さんは、
「貸してみな」と鉛筆を取り上げ
しみじみとした語り口調で話しはじめます。
「おばちゃん・・・オレはこの鉛筆を見るとな、
おふくろのこと思い出してしょうがねえんだ。不器用だったからねぇ、オレは。
鉛筆も満足に削れなかった・・・夜おふくろが削ってくれたんだ。
ちょうどこの辺に火鉢があってな。
その前にきち~んとおふくろが座ってさ
白い手で肥後のかみをもって
スイスイ、スイスイ削ってくれるんだ。その削りかすが火鉢の中にはいって
ぷ~んといい匂いがしてなあきれ~に削ってくれたその鉛筆をオレは
落書きばっかりして、勉強ひとつもしなかったでもこれぐらい短くなるとな
その分だけ頭が良くなったような気がしたもんだ」しみじみとした寅さんの話はつづき、
それを聴いていた家族の人たちは
みんな鉛筆が欲しくなるんです。実にうまい!
家族中の人が感服しいている中で寅さんは言います。
「おれの場合はね、今夜この品物を売らないと
腹すかして、野宿しなければならないってこともあるのさ。
のっぴきならないところから絞り出した知恵みてえなもんなんだよ」そして満男に言います。
「人間なんつ~っても、やっぱり勉強が第一だから
なっ、これからも修行して、一人前の会社員になってください」
寅さんの販売方法で買いたくなるか?
どうだろう?寅さんの販売方法で売られたら、買いたくなるだろうか?
私は引用しているのになんだが、それでも鉛筆はいらないので買わない笑 いらない物はいらないし、寅さんの思い出話をされても、鉛筆の価値は感情的な意味も含めて変わらないと思うので。
実際に対面でやられたら感情を動かされる度合いが違うので、もしかしたら買うかもしれないが欲しいと思って買うことはないかなと思える。
あるいは、その鉛筆が作られる工程だとか、生み出された理由をストーリーで語ってくれたら買いたくなる可能性はある。そこまでこだわりがあるのなら、ちょっと使ってみてもいいかも、と思う可能性があるからだ。
ただ、満男よりは、寅さんから何か買いたいなとは思えるのは確か。理由は人間味を感じるから。いずれにしても、売り方次第で印象は変わるし、売れ行きも変わる。
テスト販売ができない不思議な店
※写真は伊勢丹とは無関係
売り方次第でいかようにも売れてしまうというのは、映画だけでなく実際にも起こる。例えば、新宿の伊勢丹。新宿の伊勢丹では、商品が売れるかどうかのテスト販売ができないらしい。
新商品を売る場合には、それが売れるかどうかのテストをするのが普通。我々のような小規模ビジネスを金銭的なリスクを抑えてやる場合は特にそうだが、大企業ももちろんテストする。
ところが、伊勢丹の場合は、販売員の力が強すぎて変なものでもない限り、何でも売れてしまうんだそうだ。だから、何を投入しても売れてしまって、テストにならないんだとか。実店舗の販売について研究していた楽天の執行役員の人がそんな話を以前していた。
寅さんの販売スキルから分かること
ところで、寅さんの販売のポイントは何だろうか? 人それぞれ思うことはあると思うが、私が思うにポイントは次の2つ。
- 売れないのは商品やサービスが悪いからとは限らない
- ビジネスで成功する思考パターン
それぞれもう少し詳しく見ていく。
売れないのは商品やサービスが悪いからとは限らない
1つは売れないのを商品やサービスのせいにしないということ。もちろん、どうしようもないものは売れないけれども、自分のやり方が悪くて売れない、ということもある。同じ商品やサービスでも見せ方次第で変わるのだから。
売れるかどうか分からないと動けない? だったらこれを参考にするといい
売れるかどうかが分からないと動けないというのであれば、中華チェーンの日高屋を参考にするといいだろう。関東の首都圏に集中しているので、関東以外だとあまり馴染みはないかもしれないが、東京ではよく見かける。
日高屋は新規出店の際に交通量の調査をしないそうだ。代わりに、他の外食チェーンが出店しているかどうかを見るんだそうだ。他の外食チェーンが根付いていれば、お客さんの数に問題はないということだろう。
ネットの場合、立地は関係ないので、すでに売れている業界の中の一部を狙うと考えていいと思う。すると、ライバルがいると売れなくなると心配する人がいるが、ライバルがいるということは市場があるということだ。反対に、ライバルがいないということは、市場がなくて売れない可能性もはらんでいるということ。
ライバルがいようといまいと、どちらも売れるかもしれないし、売れないかもしれない。要は、どっちがいいということはない。
ビジネスで成功する思考パターン
もう1つは、より重要な話で思考のパターンについてだ。
満男の思考パターン(うまくいかない典型例)
売れない → つまらない → やりたくない
という思考になっている。
もしかしたら、
売れない → つまらない → やりたくない → 転職活動
という思考になるかもしれない。
寅さんの思考パターン(うまくいく典型例)
一方、寅さんの場合、
売れない → やばい → 売る方法を考えて実行する
という形になっているのだろう。
売れなきゃ野宿、のたれ死ぬという状況なら、考えて実行するしか道はない。なので、限られた資源の中でどうするかを考えて行動に移している。
いつも生きるか死ぬかは、大変なので
ただ、いつも生きるか死ぬかの状況になってビジネスをやれというのは、ちょっと酷だろう。私だってやりたくない。
なので、もし、満男のような視点を持ってしまうのであれば、ポイントをうまく押さえて寅さんに近い思考を持つといいと思う。要は、うまくいかなかったら、次はどうしたらいいかを考えて実行することがポイントなので、それを取り入れるということ。
そのためには、試行錯誤することで成長するという観点で考えてみたり、ゲーム感覚でいろいろと試してみたりと、とにかく改善案を考えて実行するというように変えるてみること。
そうはいっても……という場合には、こちらのTEDの動画でスタンフォード大学で20年にわたって研究されてきた話が役立つのでお勧め。科学的にこうしたらいいよ、ということを教えてくれくる貴重な動画だ。
「不合格」 学校のテストや資格試験のテスト結果の結果が、その3文字で嬉々とする人は、ほとんどいないだろう。 暗い気持ちになって自分に自信をなくす人もいるだろうし、合格している人を見て悔しい思いをする人もいると思う。中には、不正を働こうと思ってしまう人もいるかもしれない。 学校や資格試験ビジネスであれば、結果が出たか出なかったか?ということに置き換えられるだろう。 交渉が成立したか、しなかったか? 契約が取れたか、取れなかったか? 商品が売れたか、売れなかったか? など。
ビジネスをやるなら、答えなんて初めから分かることはないので、試行錯誤は避けられない。