自販機に意外なものをつけたら売上アップした面白い事例
自動販売機は日本では至るところに設置されている。道ばたにもあるし、店の中、店の前、駐車場、公園、レジャー施設、病院などなど、どこにいっても見かける。ちなみに、一般社団法人日本自動販売機工業会によると、2014年における日本に自販機設置台数は約500万台だそうだ。
そんな自販機にまつわる話をご紹介したい。というのもある意外な方法によって駅に設置されている自動販売機の売り上げが大きく伸びた事例なのだが、顧客視点というのがよく分かるからだ。
ビジネスを原点は何と言いってもお客さんにつきると思うし、とりわけリスクを抑えてビジネスをしたいなら、お客さんの求めているものをきっちり把握する必要がある。
目次
自販機の売上げに貢献した、興味深い行動
あなたならどうするだろうか?自販機の位置を変えたり、より目立たせたり、飲物の種類を増やしたりと、いろいろと施策は考えられると思うが、それら施策をいきなり考え始める人が多いのではないだろうか?
この事例が紹介されているデザインファームのIDEOという会社の代表であるトム・ケリー氏の本、イノベーションの達人!によると、IDEOのやっていることに感銘を受けたポーランドの学者たちは、まず人を徹底的に観察することから始めた。
駅の自販機を想像したら分かると思うが、自販機の前を素通りする人、ちょっと気にしながらも買わずに電車を待つ人、急いで買う人、なかなか決められずに迷いながら買う人、などなどいろんな人がいることが分かる。
彼らはそこである1つの共通点を見出すことに成功した。
大勢の乗降客を観察しているうちに、彼らは繰り返し見られれる一定のパターンに気づいた。電車が到着する前の数分間、人びとはプラットホームに立ったまま肩越しに広報の飲料スタンドを振り返り、腕時計をちらっと見やり、それからプラットホームの先に視線を送って電車が入ってこないかどうかを確認する。
イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材 P33より トム・ケリー、ジョナサン・リットマン著、鈴木主税訳、早川書房
そして、彼らがやったのは、こんなこと。
自販機の売上げに貢献した意外なもの
彼らは、そんなに時間が気になるのなら、時計を自販機につけてしまえばいいのでは?ということで、実際に自販機に時計を取り付けてみたところ、売上アップに成功した。具体的な金額は不明だが、お客さんをよく見ているからこそ生まれた発想だろう。
何か買おうと思ったときに時間が分かっていれば、間に合うかどうかが分かるので、確かに買いやすくなるなとは思える。お客さんのことをちゃんと理解していないと、こうした発想は出てこない。
こうすればビジネスがうまくいく
ビジネスにはこうすればいいという試験問題のような唯一の答えや模範解答があるとすれば、それはお客さんの気持ち。
電車をホームで待つ間、どんな心理状態なのか?なぜ、時計を見て時間を気にするのか?これらは、一言で表すとお客さんの気持ちになるということ。
私もコンサルさせてもらうとき、他社の商品を売るときなどは、できるだけお客さんの気持ちになれるように体験できることは体験するし、当事者からの話はできるだけ聞くようにしている。でも、IDEOや今回の事例に登場した人たちほどではないと思えるので、日々精進しないとなと思える。
ネットで何かを売るのは、対面よりも難しい
ネットなら売れるという幻想を抱く人は未だにいる。もちろん、ネットで売れやすい商品やサービスもあるが、たいていは対面で売れないものはネットでも売れない。
特に自動販売機やインターネットで何かを売るという状況下だと、お客さんと面と向かっていないので、お客さんの表情や声のトーンなどでセールスを変化させることはできず、売るのが難しくなる(その分、一度にセールスできる人数は増える)。
だから、より一層、お客さんの気持ちにならないとうまく売れない。何かを買ってくるのはいつだって人なので、常に「人」相手にビジネスをやっているということを忘れたら、手段は何であれ売れないということ。