マーケティングに使える「ジャムの法則」に惑わされてはいけない選択肢の考察
選択の科学という本に登場するジャムの法則。人が何かを選ぶときに選択肢が多い方がいいのか、少ない方がいいのか、適切な選択肢の数はどれくらいなのか、といったことに対する1つの答えを検証した結果をジャムの法則という名前で呼んでいる。
ビジネスに関心のある人は、マーケティングやセールスに活用することを考えると思うが、この法則を知っているかどうかによって多少なりとも利益に直結するものと思う。
もちろん、ビジネスにおける商品やサービスの選択肢というのは本質的なことではないので、あくまでプラスαの知識である。だが、知っているのといないのとでは、結果に違いが出てくるのなら知っておいたほうがいいに越したことはない。
ただ、単純にこの実験結果をもとに選択肢の数を決めてしまうと、プラスどころかマイナスになる可能性もあるので、注意したい。
目次
スーパーのジャム売り場で行なわれた実験
あるスーパーのジャム売り場。イチゴジャム、ブルーベリージャム、アプリコットのジャム、マーマレードなどなど、いろんな種類のジャムが置いてあった。店によって品揃えは様々。ここで1つの疑問を抱く人もいるだろう。特に販売側の立場にいる人は。
それは、こんな疑問だ。
できるだけたくさんの種類を用意した方が売れるのか?
それとも、そこまでたくさんの種類は用意する必要がないのか?
つまり、種類の多さが売上にどう影響するか、だ。
そんな疑問を解消するべく、というわけではないのだが、選択肢の多さが「選択」にどう影響を及ぼすか、を研究しているコロンビア大学が実験を行なった。
ジャムの試食コーナーにて、
- 24種類のジャムを用意
- 6種類のジャムを用意
と2つに分けてどっちが売れるかの実験を行なった。
ジャムの法則、注目の実験結果
すると、24種類のジャムを用意した方が、たくさんの人が集まってきた。話の流れからいって意外性のある選択肢の少ない方がいいという結果になりそうだが、人が集まってきたのは種類を多くした場合だった。
ただ、たくさん人が来たからといって売れるとは限らない。あくまで人が集まってきたかどうか、なのでどれくらいの人が買ったかとは別の話。
では、どれだけ売れたのか?最終的な実験結果はどうなったかというと、
- 24種類を用意した場合は、試食に来た3%の人が購入
- 6種類を用意した場合は、試食に来た30%の人が購入した
つまり、6種類のジャムを用意した場合のほうが来た人が購入した割合は10倍になった。
種類が少ない方が購入率が高い→種類を少なくする、は正しいとは限らない
実験結果は、24種類のジャムを用意した場合、お客さんはたくさん来たものの、試食に来た3%の人が購入したのに対して、6種類を用意した場合は、試食に来た30%の人が購入したわけだ。この結果を受けて、あなたなら売り場をどうするだろうか?
「種類はあまり多くしない方が購入率がいいなら、そうしよう」
と思ったのなら要注意だ。
試食した人の購入の割合が10倍違うなら、売上も同様に10倍違うかといったらそうとは限らない。あえて、最初に人が集まったのは24種類のジャムのほうだったと書いたのはそのためだ。
例えば、1.には1000人の人が試食に来ていたが、2.には100人しか試食に来ていなかったとしたら?
1.は試食した3%の人が買うので、30人が買うことになる。例えば、平均して300円分のジャムを買うとしたら、9000円の売上になる。一方で、2.は試食した30%の人が買うわけだから、こちらも30人が買うことになる。なので、同じく売上げは9000円だ。
同じ売上なら管理する商品数は少ないほうが手間は減るし、お客さんの数も少ない方が労力も少ないだろうから、ジャムの種類は少ない方がいいだろう。コストが下がる。また、ジャムのような長持ちするのはいいけれども、日持ちしないものだと破棄することも考えないといけない。
しかし、もっと試食者数に差があったらどうだろうか? 微々たる違いになるかもしれないが、ジャムのように季節に関係なくずっと売れるものの場合、期間も考慮する必要がある。1日ではなく、1ヶ月、1年と長くなったら、差がどんどん広がるからだ。
マーケティング施策などは目的に合わせて活用する
要は、利益や売上アップという目的であれば、どちらの売上・利益が大きかったのか、ということを評価基準にしないといけない。購入率ももちろん大切だが、人が来なけりゃどんなに売れるものでも、売れることはない。
こうした選択の科学のような情報はいろいろとあってうまく活用できれば、ビジネス上、プラスに働くだろう。しかし、目的から考えないと、せっかくの知識が意図したような使い方にならないこともある。
”最適な”選択肢は7±2
ちなみに、先ほどのジャムの実験を行なったコロンビア大学ビジネススクールの教授、シーナ・アイエンガー氏によると、選択肢は5~9(7±2)が”最適”だそうだ。ここでいう最適というのは、人が自信を持って選ぼうという気になって、選択した結果について満足できるということ。
なので、お客さんに何か提示するときに、相手にストレスなく選んでもらいたいなら選択肢は5~9がいいようだ。もちろん、時と場合によるとは思うが。
まとめ
今は情報過多言われるほどたくさんの情報がある。断片的な情報も多く、事実と意見が混じっていることもあって整理されていない情報も多いだろう。
なので、情報があったらすぐに反応するのではなくて、ちゃんと考えないとな、と思う。調べれば何でも分かるような時代だが、その情報をもとに自分で考える力がないと情報におぼれてしまう。
なお、こちらの本はとても面白いので、読んでみることをお勧めしたい。