稼ぐ力言葉の法則(神田昌典著)を読んでのまとめと感想、書評
神田昌典さんの「稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式41」を読んだ。
大きく3つのパートに分かれていて実践的な内容。ザックリというと1つめのパートはリサーチに相当して、2つめのパートは1に基づいた行動(主にライティング)、3つめはマインドセットという構成。
- リサーチ(稼ぐ言葉を掘り当てる5つの質問)
- リサーチに基づく行動(新PASONAの法則)
- マインドセット(売れる公式41)
このページでは上記の3つに分けてまとめてみる。
なお、感想としてはすでに小さなビジネスに取り組んでいるにとってはとても素晴らしい内容だと思えた。読みながら問いに答えて考えていくことで、即実行できるからだ。
一方、これからビジネスをやりたいというような人にとっては、やりようがないので多少のお勉強にはなると思うが、あまり意味はないような気はする。
ただ、おそらく意図してだとは思うが、少しの事実で全てを断定している書き方が見られるのは読んでいて気持ち悪いけれども……。
目次
稼ぐ言葉を掘り当てる5つの質問
まずは1つめのパートに関して。
この本の活用として前提にあるのは、中小零細企業、個人事業主がダイレクトレスポンスマーケティングによって売上を上げるということ。
とはいっても、何も手立てがないところから始めるのは無謀であり、どうしたいいか分からなくなるのが普通。ビジネスを戦場と見立てるのはあまり好きではないのだけれど、そう考えるなら有効な武器を持って戦えば勝算は高くなる。
そのために有効なのが本に出てくる次の5つの質問という捉え方をしてみた。これらに答えていくことで、誰に、何を、どうやって伝えるかが、明確になっていき、売上にもつながる。
- 商品についての質問(商品理解)
- 顧客についての質問(顧客理解)
- 自社(自分)についての質問(自社・自分理解)
- お客さんとの共感を探る質問
- なぜ、商品がいいのか? という証拠を明確にする質問
質問1.商品についての質問(商品理解)
あなたの商品はズバリどんな商品か?
その特徴を20秒以内で、直接的にわかるように説明すると?
商品に関して深掘りするための質問。商品については分かっているようで意外と分かっていないことが多いもの。簡潔にまとめるには何がポイントなのかを理解していないと、まず無理な話。
質問2.顧客についての質問(顧客理解)
この商品を20秒以内で説明しただけで、「なんとか売ってくれ」と頭を下げて、嘆願してくるお客は、どのようなお客か?
もし、ゼロからビジネスを立ち上げようと思っていて商品やサービスも決まっていない、候補すらないのなら、世の中のニーズから探っていくのがリスクを抑えて始めやすい。あらかじめ需要が分かれば、それを提供したら売れやすいのは当たり前だから。
質問3.自社(自分)についての質問(自社・自分理解)
いろいろ似たような会社がある中で、既存客はなぜ自分の会社を選んだのか?
同じような商品を買えるような会社がいろいろある中で、なぜ既存客は、自分の会社から、この商品を買うことにしたのか?
会社組織なら会社、店舗ならそのお店、個人なら自分自身について理解を深めていく質問。選ばれる理由を明確にしていく。
ゼロからビジネスを始める場合には、実績がないので他と比べてここが違うということを仮説で決めておく。
質問4.お客さんとの共感を探る質問
いったい、お客は、どんな場面で、怒鳴りたくなるほどの怒りを感じているか?
どんなことに、夜も眠れないほどの悩み・不安を感じているか?
どんなことに、自分を抑えきれないほどの欲求を持つか?
その「怒り・悩み・不安・欲求」をお客が感じる場面を「五感」を使って描写すると?
人は自分のことを分かっているな、と思う人の話を聞くものだし、自分事として捉えるから初めて商品検討の土台に載る。そこで、必要になるのが共感というプロセス。
ハートをつかめたら話を聞いてくれるが、何言ってんだコイツ? となったら終了。そのためにも質問2のお客さんの理解が必要不可欠になると思える。
質問5.なぜ、商品がいいのか? という証拠を明確にする質問
なぜこの商品は、その悩みを簡単に、短時間で解決できるのか?
それを聞いたとたん、お客はどんな疑いを持つか?
その猜疑心を吹き飛ばす“具体的・圧倒的な”証拠は?
神田さんから本を通じて学ばせてもらい、実際に多少なりともビジネスに取り組んだ中で分かったことがある。それは、確かに人は感情でものを買うのだけれど、それはロジックが不要なわけではないということ。むしろ、ロジックがあるからこそ感情がかきたてられて購入しやすくなる。
もちろん、物や人によるけれども、納得のいく理由があることが大切。要は確かなロジックと証拠によって、確かにそうだという納得感がポイントになる。
「新・PASONAの法則」で売れる“流れ”をつくる方法
そして2つめのパートに関して。
質問によって“武器”をそろえたら、それをどのような順番で使っていくかか大切になる。映画や小説といったストーリーと一緒で順番が大切になるからだ。ミステリーの小説で途中で犯人がバレてしまったら面白くも何ともない(初めから分かってしまう古畑任三郎のようなやり方はあるけれど)。
この伝える“順番”は紙やWebで何かを売るときはもちろん、対面で営業するとき、セミナーや説明会で何かを売るときも一緒。オフラインで目の前に人がいる場合は、その人やそのときの状況に合わせて変化させていけるかどうかくらいだろう。
従来のPASONAの法則
“流れ”に関しては、QUESTなんて流れがあったりAIDAなんてものあったりで型がいくつかある。その中に神田さんが提唱するPASONAというものかあり、これまでのPASONAは、
- Problem(問題)
- Agitate(あおあぷりり立て)
- Solution(解決策)
- Narrowing down(絞り込み)
- Action(行動)
だった。よく使うので、完全に覚えてしまっている(笑)
ちなみにこの手のを他に知りたい場合はこちら。
ペットショップの秀逸なマーケティング(AIDMA、AISAS、DECAXより大切な4つのポイント)
環境省調べによると平成23年における犬の殺処分数は4万4000匹だそうだ。平成19年は、10万匹だったようなので、半分以下になっているとはいえ、まだまだたくさんの犬が殺処分されている。飼い主がいる犬が殺処分されるとは考えられにくいので、飼い主のいない犬が保健所などで処理されているわけだ。
SNS時代にはこんな流れになるという考えもある。
UGC・ULSSAS「僕らはSNSでモノを買う」の要約、まとめ
「僕らはSNSでモノを買う」を本で読み著者が登壇するイベントで話を聞いてきた。SNSをどう集客・販売につなげるかという話。SNSを活用するうえでとても良い内容だと思えたので、ソーシャルフリーということで当日のイベントの様子を織り交ぜながらまとめてみた。
新・PASONAの法則
ただ、1999年に神田さんによって提唱されたPASONAの法則は、いまだに効果絶大だが、誤解された形で使われていることも多いそうだ。
また、時代の流れの変化もあるため、誤解の一層と時代に合わせた改善を目的として新・PASONAの法則を改めて公開したと本にはある。
で、できた新・PASONAの法則というのがこれ。
-
Problem(問題)
お客さんの問題、悩みなど -
Affinity(親近感)
お客さんと同じ痛みや望みを、ストーリーや五感を通じて伝える。共感。 -
Solution(解決策)
どうしたら問題が解決されるか? -
Offer(提案)
問題解決のための具体的な提案(サンプル、お試しなど) -
Narrowing down(絞り込み)
提案を受け入れ、問題解決できる、もしくは欲求実現できる人が満たされなければならない条件 -
Action(行動)
今すぐ行動するための後押し
AとSOが変更点。Aはあおり立てるようなやり方よりも、今は親近感のほうが大切だという時代の流れから来ているそうだ。
Aに関してはそういうものかと思うとしても、SOがSolutionとOfferに分かれている理由が“「提案」という要素も非常に重要”としか書かれておらず、理由になっていない。個人的にはよく分からないところではある。
人は「で、結局どうしたらいいの?」「で、何が得られるの?」ということが明確になっていないと行動を起こしにくいものなので、提案内容を具体的に提示しろ、ということが言いたいのだろうか。
そうした疑問はあったが、新・PASONAの法則というのが提唱されていて先の5つの質問に答えられていれば、この流れで文章が書け、それが商品販売のWebページや紙として使えるというわけだ。文章としてまとめられればそれを話すこともできるので、セールストークとしても使える。
なので、この本はリサーチから実践まで進められるという、とても実践的な本だということ。一方、冒頭でも書いたとおりこれからビジネスを始めるようなまだ商品がない人にとってみたら役に立たないとも言える。
よく今のうちから勉強のために……なんてケースはあるが、時間の無駄とは言わないものの、あまり役立たないとは思うので、ゼロから何をしたいか決める段階の人は何をしたいかを先に考えるほうが先決。
【貧す人】VS【稼ぐ人】売れる公式41
最後に3つ目のパートに関して。
本には、
社内外を大切にする思考と行動の循環の中で、価値あるビジネスはつくられているのであり、その流れは、普遍的な原理原則によって加速されている。
この原理原則と、そこから導かれる言葉の使い方を紹介するのが、【貧す人】VS【稼ぐ人】売れる公式41だ。
とある。個人的には言葉の使い方による発想の転換やマインドセットの違いがもたすら影響のように思えた。要は思考の影響の話だ。
神田さんがこれまでの経験から厳選した違いをもたらす言葉の使い方が紹介されていて、次の3つのステージに分かれている。
- 核となるビジネスをモデルをつるステージ
- 応援者を集めるメッセージをつくるステージ
- 強力なリーダーシップを現すステージ
このパートのポイントは後述するように次の神田さんの展開が見えることかなと思える。
もちろん、書いてある内容は神田さんのメルマガ、365日語録(仕事のヒント)みたいな感もあったり、売上が約3倍になったダイレクトメールのポイントや成約率が3.5倍になった具体的な広告といった事例も載っていたりで、すぐに使える点も良いところではあるが。
本の内容よりも神田さんが本を通して何をしたいかが重要
学びになるのは本の内容はもちろんだが、神田さんが何をしているか?ということ。
神田さんが本を書いたのは印税を稼ぐためではないのは明らかだろう。どう考えても自身のビジネスに役立てるため。
本は広告のようなものだ。ネイティブアドみたいなものかなと思える。役立つ情報を提供しつつ、次の商品の宣伝にもなっている。当然、それがけしからんなんてことはなくて、その意味でとても参考になるということ。
具体的には、本には載せられなかった未公開コンテンツとしてマーケティング・ピラミッドというのがあるということで、次を示唆している。ダウンロードするにはメールアドレスの登録が必須になる。本がダイレクトレスポンス広告の一種になっているわけだ。
ハガキを一枚挿入して促すのではなく、本の中でしっかりと触れている点がさすがだなと思える。何より、本全体の文脈に合わせて提供していている点が秀逸。
予めきっちりと設計して本を出版していることがよく分かる。本では全体像の中の一部しか公開していないことが分かり、気になる人は他が気になる(個人的には気にならなかったが……)。
細かい点にも着目すると、メールアドレス獲得のためのコンテンツは未公開とということで興味性が喚起され、今後の著書テーマとすると書いているので、後になったら無料でダウンロードできなくなってもおかしくはないという今だけ感も喚起される。納得しやすい限定の理由になっている。
まとめ
ということで、神田昌典さんの本、「稼ぐ言葉の法則」は大きく3つのパートに分かれていて、1つめのパートはリサーチに相当して自分(たち)の商品を売るための武器を揃える、2つめのパートは1に基づいてどう武器を使っていくか?ということを実践していく、3つめはそれらを活かすための言葉の使い方(マインドセット)という構成。
具体的な例とともに解説してくれているので、とても分かりやすく実践的。今、何かしら小さなビジネスをやっているのなら、あるいは、これからビジネスを始めようという人も具体的に何をするかきまっているのなら、とても役立つ本に思える。
実際、今、取り組んでいることに当てはめて質問に答えようとしたら、足りない要素が出てきてもっと考える必要があるなと思わされた。質問の力は偉大だし、こうした機会がないと考えないことも多い。
また、無料プレゼントを通して次のビジネスにつなげるための仕組みをうまく取り込んでいる本でもあるので、その意味でも参考になる。
お勧めできる本の一つと言える。
感想
何かがきっかけで神田さんのところからメールが来るようになっている。送られてきているメールを見ていると、勝手な印象だが抽象的なちょっとフワッとした感じのテーマでビジネスを展開しているな? と思っていた。
そこにこうした「稼ぐ」というキーワードを使った具体的で実践的な本を投入してきたというのはどういう意味を持つのか?
個人的には、ここのところのオファーにはあまり魅力は感じなかった。フワッとしていて「で、どうするの?」「本当にそれで実質的な価値があるの?」みたいな感じだったので。一方、今回の本は具体的で実践的ということで地に足がついた感があり、関心を持てた。
なので、反応が取りにくいためにアプローチの仕方を具体から抽象へ向かうようにした? あるいはより一層、多くの人を取り込むために、具体的で反応がとれそうなところからのアプローチを始めたのか?
また、稼ぐというキーワードを使いつつも、単に儲かる、利益が出るということをメインにしているのではなく、それが自己実現につながるといった書き方がされていて、時代の流れに則した形で書いていることも分かる。
いろいろと本の内容はもちろん、構成や意図など推測できる点からも学びのある本でとても良い本だなと思える。神田さん自身が、自身のノウハウやマインドセットを使った具体例となっているのだから、よくできている。