SoftBank World 2017に登場したロボットの動きがすごい……(映像あり)
2017年もSoftBank World 2017に行ってきた。2015年からリアルタイムで参加していて思うのはいくら変化の早い時代とはいえ、1年や2年で抜本的に変わるようなことをやっているわけではないので、今年もポイントは一昨年と昨年とあわり変わらず一貫性を持ってやっているということ。今年もIoTと人工知能、スマートロボットに注力していくようだ。
参加して個人的に最も印象的だったのはBoston Dynamicsという2017年の6月にSoftBankが買収した会社が開発したロボットのデモ。すごいの一言。会場でどよめきが起こったほどで、個人的には「ここまで来てるんだ……」と思ってしまった。滑らかで動物みたいな動きをするロボットで間近で見られたのは良かった。
実際にどんなロポットかは動画があるので後述するとして、あれを目の前で見てロポットの進化を目の当たりにした感がある。ペッパーなんて今はただの喋る白い置物みたいな感じで「こんなものか」というものだけれど、今回、目の前で見たロポットにはびっくり。
ちなみにペッパーはスマートロボットの入り口の入り口にすぎないはずなので、今後、確実に進化していくものと思う。孫さんもそう言っていたので、あと数年もしたらかなり変わるはずだ。
講演の記録はログミーか何かで今年も公開されるんじゃないかと思うので、個人的に印象的だったことを。
主に
- 最先端のロボットの動きに驚愕
- 人工知能でなくなる仕事のリアル
- 孫さんが先を見越して投資したテクノロジー企業10社
の3つ。
目次
最先端のロボットの動きに驚愕
印象的だったのはSoftBankが出資したBoston Dynamicsというところのロポット。実際に見たのは4つ足の動物みたいな動きをするロボット。デモとしては登場しなかったが、会場で見た映像では階段ものぼるし、雪の積もった滑りやすいところも移動していた。さらには、ジャンプして障害物をよけるなんてことも。
物流でラストワンマイルなんてのがあるけれども、ドローンだけでなくこういうロボットがいれば解決しそうな気がしてくる。バッテリーがどこまで持つかは分からないけれども。
会場にて目の前で見たロボットの動きがスムーズで驚き
会場でデモを見たのはおそらくこの機種。リモコンで操縦しなくても自動走行することもできる。この動画ではバナナの皮で滑って転んでも起き上がるなんてのがあってなかなか面白い。階段もスムーズに登っている。
ちなみに似たようなのはこちらにもある。見た目の違いとして特徴的なのはアームの有無。こちらにはアームがない。これは2015年にアップされているので、つい最近できたなんてことはなくて2年前からこんなのがあったということ。
ジャンプして障害物をよけたり、台に乗れるロボット
他にも車輪がついたのはジャンプして障害物を乗り越えたり、台に乗ったり、荷物を運んだり、移したり、階段を滑り降りるように降りたりというのもあるようで、驚きだった。
こちらの機種は会場でのデモはなかったが、会場で映像が流れた。改めて映像を見る限り、おそらくこの映像のはず。ジャンプして障害物を飛び越えたり、ジャンプして台に乗って降りるなんてことをやっているのが分かる。この映像が流れたときに、会場ではどよめきが起こった。ちなみに箱を持ち上げているときに100lbsと表示が出るのだけれど、これは45kgくらいの重さ。
少し前のアシモとかペッパーのイメージが頭にあるせいか、ロボットの動きなんてまだまだだよね、みたいな印象があったのだが、これは動きがスムーズで「今のロボットはここまでできているんだ……!」と思えた映像だった。毛皮つけてそれらしくしたら動物に見えそうだ。
ただ、人の形をしたような2足歩行だとまだぎこちなさがあるようで、まだまだ自然な人の動きには遠い感がある。それでも、ドアを開けて外に出たり、荷物を持ち上げて棚に置いたり、なんてことはできるようだ。転んでも立ち上がれるし、押されてもバランスを保とうとする。
人工知能でなくなる仕事のリアル
人工知能が職業を“奪う”なんていうことでこちらの記事を前に書いたときには「まだ先」とか「まあ、いずれはそうだよね」といった感覚があった。なくなるということに関しては同意できても、どこか無関係というか遠い感じがしていた。
だが、先ほどのBoston Dynamicsのロボットを見たり、後述するBrain Corpという会社の人工知能を搭載した掃除の機械を見ると、一気に現実味が出てきた。現実に、そして具体的にそうした事業をやっている会社があるのを見ると、もう間近というかすでに人工知能による人間がやらなくていいことの排除は始まっている。
掃除する人はゼロにならないまでも、確実にいなくなっていくというのは想像はつくけれども、もう普通にそういうのが始まっているということ。ゼロにならないまでも、激減することは確か。こちらでも書いたとおり、すでにチャットボットが人件費削減に貢献しているわけだし。
ついに人工知能が人の仕事を“奪い”始めた
孫さんが先を見越して投資したテクノロジー企業10社
そして、投資家としても優れている孫さんが何に投資しているのか? ということが分かるのがこちら。もちろん、これで全部ということはないので、一部だけれども今後も投資や業務提携などがどんどん進んでいきそうだ。
最後のARMは昨年のSoftBank World 2016の直前に発表がされたものなので、前回から登場していたが、他は個人的には初めて聞いたものばかり。
- Boston Dynamics
- OneWeb
- Guardant Health
- OSI Soft
- Nauto
- Plenty
- Brain corp
- Cloud Minds
- Improbable
- ARM
Boston Dynamics
Boston Dynamicsは、先ほどのロボットのところで書いたとおり。
これに人工知能が載ると……。まだ人間型は動きが微妙だけれど、スマートロボットが生まれるような感はある。といってもドラえもんやアトムのような感情のあるロボットかは分からないが(Yahoo!の安宅さんによる別の講演では、今の人工知能を見る限りそれはないという話だ)。
物流におけるラストワンマイルなんてのは、ドローンだけでなくこのロボットでも解決できそうだ。階段も登れるし、少し雪の積もった坂も移動できる。
OneWeb
OneWebは、全ての人にインターネット環境を提供しようというビジョンを持っている企業。ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンがボードメンバーにいる。
そのために衛星を利用してネット環境を提供しようとしている。TechCrunchの記事によると、ソフトバンクからは10億ドルもの出資を受けたそうだ。
IoTの活用に向けて確実にプラスになりそうな会社だ。
Guardant health
Guardant Healthは人工知能を使ってがんの早期発見を実現している。皮膚がんの発見は熟練の医者を超えたそうだ。ディープラーニングで今後もどんどん発展していくと思うので、医師の役割が1つ減りそうだ。
これは仕事が奪われるとかではなくて、医師の補助がより強力になるという話。
なお、Business Insiderのがん早期発見のスタートアップ、ソフトバンクなどから約410億円調達という記事によると、2017年にSoftBankグループをメイトンして410億円ほどの資金調達に成功したそうだ。
OSI Soft
OSIsoftは産業用IoTの会社だそうだ。
同時通訳の機械が外れてしまってうまく聞けなかったので、詳しくは不明。
Nauto
Nautoは、車の運転を支援してくれるサービスを手がける会社。デバイスを車に設置すると情報を収集してくれるようだ。
完全自動運転になってしまったらこのサービス自体がどうなるのか分からないが、それはもう少し先の話。また、今の段階で得られたデータをもとに人工知能が学習すれば、自動運転の実現のためのデータが取れるわけなので将来も期待できそうな予感。
Responseのソフトバンク、自動運転関連のベンチャー企業Nautoに178億円を出資という記事によると、1億5900万ドルの出資をソフトバンクから得たそうだ。
また、BMW、GM、トヨタの関連会社は前から出資していたそうだが、そこに保険会社のアリアンツがいるのは興味深い。
プレゼンでは、
- 燃料のムダを減らすためのテクノロジー
- 車の利用率を上げるテクノロジー
- 運転補助のテクノロジー
の3つに関して話をしてくれた。
Plenty
Plentyは農業の会社。といっても従来の農業とは違っていて、今までの100分の1の土地と水で野菜がつくれるというテクノロジーを持っている。
Plentyのページを見ると、Plenty Attracts Largest-Ever Agriculture Technology Investment Led by the SoftBank Vision Fund to Solve Global Fresh Produce Shortagesという記事にSoftBankから2億ドルの資金調達をしたとある。
Brain Corp
Brain Corpは機械に組み込める人工知能の頭脳を開発している会社。
Tech ChrunchのSelf-driving robot AI company Brain Corp raises $114Mという記事によると、SoftBank Vision Fundから1億1400万ドルの資金調達をしたようだ。
こんな感じのお掃除ロボットがある。掃除の機械そのものは開発しておらず、これに搭載する頭脳に相当する人工知能を開発しているようなことを代表者が話していた(聞き間違いでなければ)。
掃除する人が明らかに消えそうなのが分かる具体的なテクノロジー。
Cloud Minds
Cloud MindsはクラウドAIというものをプレゼンしていた。人工知能をクラウドで利用するというもので、具体的にどんな問題を解決しようとしているかは忘れてしまったが……。
Improbable
Improbableは、SpatialOSというゲーム製作のプラットフォームを提供している会社。
孫さんの説明では、SpatialOSによってゲーム会社はキャラのデザインや役割、ストーリーなどのゲームの核となる部分に集中できるようになるとのこと。
実際にはどうか分からないが、人工知能がキャラの動きなどを勝手に作ってくれるような印象を持った。となると、そうしたキャラクターの動きなどは人間がプログラミングしなくてもよくなるわけで、エンジニアの負担が減る可能性がある。
Improbableは他にも大都市における交通シミュレーションなどの分野でも協力しているとのこと。
ARM
ARMは前回のSoftBank Worldで話があったとおり、スマホのCPUコアのシェアが9割を超えている。IoTの時代において鍵となる会社のため、SoftBankが買収したというのをSoftBank World 2016で説明しくれた。
まとめと感想
ということで、今回も孫さんの考えていることで公にできることを説明してくれた。世の中がどう変わっていくかは分からないけれども、孫さんの考えている方向性はうかがい知ることができた(本当に理解できているかは別として)。
18世紀から19世紀にかけての産業革命を支えた“Gentry”という人たちの現代版
今回、孫さんはGentryという話を最初にした。Gentlemanの語源になったと言われるGentry。彼らは王から土地を与えられ、その資産をもとに新しい技術などに投資をして産業革命を後押ししたというような話をしていた(メモをあまり取っていないのであいまいだが)。
要はお金を持っている人たちが、お金を必要としているこれからの時代を変えていく有望な人たちに資本を提供したということ。そうして産業革命が生まれ、世の中がガラッと変わっていったという話。SoftBankとしてもそのためにSoftBank Vision Fundで10兆円を用意したり(アラブの王族にも協力してもらったニュースは記憶に新しい)、積極的に投資をしている。ちなみに全世界でVCから資金調達した金額の合計がが7兆円だそうだ(聞き間違い、記憶違いがなければ……)。スケールの大きさがすごい。
孫さんは1兆個をつなげるとか人工知能の活用なんてのを口にしているだけでなく、衛星を上げてネットをつなげようとしている会社を買収したり、ロボットの会社を買収したり、IoTの時代を見据えてARMを買収したりと、具体的にどんどん進めているのが分かる。SoftBankがこれからの時代を作る側になることは間違いなさそうだ。どうなるかは誰も分からないけれども。
会場の様子
内容と関係ないが、最後に会場の状況を。受付開始時間の朝8時半に行っても長蛇の列だった。そこから並んで30分くらいして着席。ちょうどいいところにいたようで、一番前の席に座れた。孫さんと10メートルも離れてなさそうな位置だった。
講演が終わった後も大混雑。基調講演が始まったのが10時(総合受付開始は8時半)。それが終わっても混雑ぶりはすごくて15時くらいでも、会場は人人人という感じだった。とにかく混雑していて、多くの人が関心を持っていたことが分かる。
関心があろうとなかろうと時代は勝手に変わっていくもの。どうなるかは分からないが、孫さんの見ている未来が垣間見られたのは良かった。
ちなみに、2016年、2015年のSoftBank Worldの様子はこちら。