こうしてマーケティングは言葉1つで大きく変わる

旧ソ連で行なわれた子供への実験と言葉の力

1950年代、ソ連にて子供に対してある実験が行なわれた。

その20年後に“単なる石ころ”を売ってわずか半年で67億円も売った人物がやったことにも通じる実験である。同じく普通の石ころ1つを10ドルで1000個売った人もいるようだが、これもまた似たようなものだ。

一体、どんな実験をしたのか?旧ソ連が子供に実験をしたと聞くと、ちょっと怪しく思うかもしれない。が、そんな怪しいものではなく、子供たちをじっと立たせるために2つの言葉を投げかけたのである。

その結果、大きな差、具体的には5.5倍もの差が生じた。子供に投げかけた言葉の違いで2分間しかジッと立っていられなかった子供たちが、11分間もジッと立っていられたそうだ。

どんな言葉を投げかけてこんなにも子供に差が出たのか?
(2015年11月1日初稿、2016年5月21日更新)

旧ソ連で子供に対して行なわれた実験

旧ソ連で子供に対して行なわれた実験

子供に投げかけた言葉は次のとおり。

A:「どのくらい長くジッと立っていられるかな?」

B:「持ち場で気をつけの姿勢で見張りをしている兵隊さんごっこをしよう」

AとBのどちらが子供はより長くジッと立っていたのか?

想像はつくと思うが、この実験の結果、Bのほうがはるかに長い間、子供はジッと立つことができた。Aの言葉を投げかけられた子供は2分間持ちこたえたが、対してBの言葉を投げかけられた子供は11分間持ちこたえたそうだ。

なぜ、そんなにも違いが生じたのか?

それは何のためにやるのか、どういう意味なのか、といったことを認識しているかどうかの違いである。もちろん、何のために、の理由が自分にとってどうでもいいことならこうはいかないので、自分がいいと思っているかどうかも必要だろう。

あるスーパーにて賞味期限ギリギリの商品を言葉ひとつで全部販売

賞味期限ギリギリの商品を言葉ひとつで全部販売

2009年11月25日の日経MJ新聞の3面にこんな内容のコラムが掲載されていた。

あるスーパーでは、賞味期限切れで破棄していた商品がたくさんあった。どこのスーパーでもやっているように、賞味期限切れ間近の商品に「半額」という表示をしていたが、それでも売れ残ることは多かった。売れ残った分は破棄せざるを得ず、何とかしたいと考えた末にこんなことをやってみた。

POPに「あと少しの命です。お助け下さい」と書いたのだ。

半額とあって喜んで買う人がいる一方で、半額になったのを買うのは、なんだか気恥ずかしい……というお客さんも少なからずいたのだが、そのPOPのおかげで、そんなお客さんの意識が

「半額を買うのはなんとなく気恥ずかしい」から「助けてあげる」

に変わり、ためらいなく購入する人が増えたそうだ。結果、売上は向上、廃棄処分がほぼなくなった。

もちろん、いつもやっていたら飽きられるので、そのうち効果はなくなっていくとは思うが、言葉ひとつでうまい意味づけをしたなと思える。

その辺の石ころを売って億万長者

今度は、うまい意味づけによって億万長者が生まれた事例。

1975年のアメリカ。その辺にある単なる石ころを売り物にしてなんと半年で5616万6419ドルも売った人物がいる。何か特別な石だったかというとそうでもなくて、本当にただの石ころを売り物にしたのである。

もちろん、一工夫して売ったわけだが、どうやったかというと

「ペットロック」

と称して販売したそうだ。

ペットを飼うような感覚で石を飼う、そんなアイデアで石ころを販売して大ヒットなった。

詳細はこちらから。
ペットロック、ただの石ころを使って67億円以上の売上げを作った話| IDEASITY

その辺の石ころを10ドルで1000個以上売った男

感謝石

ペットロックと同じくただの石ころを1つ1000円で1000個以上売った人もいる。これは、The Secretという2006年か2007年くらいに大ヒットした映画の中でのエピソードだ。

誰でも、「ああ、うまくいかない」とか「困ったことになった」とか「家庭内でゴタゴタが起きてしまった」というときがあるでしょう。

私はそんな時、石を見つけました。今もここにこの石を持っていますけどね。
あなたも私がこの石を持ち歩いているのを見られたことがあるかもしれませんが。

この石を見つけて、ポケットに入れて、そして決めたんです。

「そうだ。この石を触るたびに、感謝しいてることについて考えよう」って。それで、毎朝起きるとタンスの上からとって、そしてポケットに入れながら、私は感謝していることをすべてについて考えます。

夜になって、ポケットを空にしようとすると、またその石が出てきます。そしてまた同じことをします。

この石でいろいろな体験をしました。素晴らしいこともありました。以前、南アフリカから来た友人が、私がその石を落としたのを見て、「それは何?」と聞きました。説明すると、彼は、感謝石と名づけました。「感謝石」

2週間後、南アフリカにいた彼からメールで「息子が奇病、ある種の肺炎にになって、死にそうなんだ。感謝石を3個送ってくれないかな。」という依頼を受けました。

道で拾ったただの石だったので、「もちろん。」と返事しました。

特別な石じゃないといけないと思って、川に探しに行って、ふさわしい石を選んで送りました。

4〜5ヶ月後、彼らかメールが届きました。

「息子は病気が治って、とても元気になったよ。石を感謝石と名づけて、1個10ドルで1000個以上売って、チャリティーに寄付したことを知らせておくよ。本当にありがとう!」という内容でした。

映画The Secretより

石をペットにしたわけではなく、感謝石(gratitude rock)という見せ方で販売したというわけだ。

大量の誤発注を売りさばいた事例

2016年5月17日。近畿大学の生協で発注ミスがあったそうで大量のミルクティーが店頭に並んだ。通常の10倍の量を発注してしまったそうだ。しかしながら、生協の買ってください案内がTwitterでだいぶ話題になったせいもあってか、2日間で完売したとのこと。

同じような境遇にいる人の話だとWebの発注の場合、単位が違っていることに気付かずにやってしまい、ミスが発生がちなんだそうだ。

こうした事例は、ここ数年でいくつか見ているので、最初に知ったときのような驚きはなくなってきたが、話題になる度に毎回成功しているように思えるのは驚き。

最初にやったのが誰かは知らないが、よくやったものだなと思える。お客さんにお願いするなんてアイデアは思い浮かばず、諦めて破棄してしまった人もいるだろう。

まとめ

このように、言葉ひとつで子供が変わったり、言葉ひとつで無駄が減って売上が上がったり、言葉ひとつで億万長者になったり、チャリティーに100万円以上を寄付できたりと、言葉の影響力は非常に大きい。

もっと正確に言うなら言葉によって人が受け取る意味が変わったから変化があったと言える。

意味の捉え方によって結果が変わってくるのであれば、どんな意味づけをしたらより良い結果になるのか考えてみるのはとても大切。

どう意味づけしてどうしたいかは人それぞれだが、どうせなら誰もが良い方向に進むように活用したいもの。あなたが今やっていることやビジネスに意味を与えるとしたら?

一見、つまらなそうに見えることも、意味づけ次第で大きな成長につながったり、結果につながったりと何かしら良い方向につながることはある。ただ、無理矢理考えを改めても違和感が残ると私は思っているので、自分の心がどう思うか?は常に気にしていたいところだ。

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